硝酸カリウムと塩化ナトリウムを使った「再結晶の実験」の準備と手順(中学1年化学分野)

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

 生活の中で“結晶”を意識することはありますか? 実は、身近なところにも結晶は存在しています。例えば、冬の朝に窓ガラスにできる霜、雪の結晶、そして食卓にある砂糖や塩の粒も小さな結晶です。でも、これらがどうやってできるのか、じっくり考えたことがある人は少ないかもしれません。

今回紹介する「再結晶」の実験は、中学1年生の化学分野で扱われる内容で、身の回りではあまり意識しない結晶を自分の手で作り出すというワクワクするものです。特に、硝酸カリウムや塩化ナトリウムを使って結晶を取り出す方法を学びます。この実験を通じて、溶解度や温度の影響を体感しながら、物質の性質についての理解を深めることができます。さっそくその方法について見ていきましょう!

実験手順

⓪ 事前準備

 試験管に3gの食塩(赤)と硝酸カリウム(青)3gを薬包紙に入れておきます。まず、食塩と硝酸カリウムを事前に薬包紙などに入れて測っておくと早く終わります。こちらは理科助手さんにお願いをして、事前に作っておいてもらいました。30分ほどかかっていました。

① 試験管の中で溶かす

 それを、それぞれ3gを別々の試験管に入れて5mLの水を加えて、これをお湯を入れたビーカーに沈めながら、軽く振ってよく混ぜます(青ラベルに硝酸カリウムを、赤ラベルに塩化ナトリウムを入れるように揃えて指示を出しました)。なおピペットで5mLをうまく生徒が取れない生徒がいます。ここでピペットの持ち方や使い方について、事前に指導をしておく必要があります。

硝酸カリウムは全て溶けていきます。

 手際が悪い生徒は、お湯が冷めてしまってうまく全部が解けない班がありました。もう一度熱湯を入れてあげましたが、この実験は50分丸々使うので、注意が必要です。しばらく経っても全部が溶けないときは、上澄み液(溶けている部分)を約2mL別の試験管に移します(緑の表示をつけた試験管)。

② 水溶液を冷やして様子を観察する。

青の方が全て解けたら、赤の方に溶け残りがあったとしても、水を入れたビーカーの中に、試験管ごと入れえて、冷やします。すると…硝酸カリウムの方は溶質(固体の成分)が結晶となって現れてきます!結晶が出てきたら、試験管立てに立てて、その様子を観察しましょう。綺麗な針状の結晶が見られます。

硝酸カリウムの結晶の様子

塩化ナトリウムは出てきません。

③ ろ過して、顕微鏡等で観察する。

 硝酸カリウムの方はろ紙でろ過を行い、固体を取り出します。すぐに観察をしてもいいのですが、食塩の方も結晶を見たいので、このままにして、水溶液を2つに分けて、1つは自然乾燥をして蒸発させる方法、もう1つは沸騰させて水を飛ばす方法を取ります。まずは水を飛ばす方法についてです。

こちらは沸騰させて水を飛ばす方法です。

この際に熱していくと塩が飛び散ることがあるので注意が必要です。保護メガネをしっかりさせましょう。最終的にはこのようになります。

 薬さじで採取し、ルーペや顕微鏡で覗いてみましょう。顕微鏡で見ると、食塩は結晶がほとんど見えません。

顕微鏡で観察する

硝酸カリウムの方も濾紙から結晶を薬さじで取り出して、顕微鏡で見てみましょう。肉眼でも驚くほど繊細な結晶の様子を観察することができます。美しい!につきます。針状の結晶が見えますね。

拡大

スライドガラスに乗せて顕微鏡で見てみると(硝酸カリウム)

このように見えます。また自然乾燥の方は、回収をして、それらをスライドガラスに垂らしておきました。

こちらは次の時間に観察します。

④ 後日、塩化ナトリウムの結晶を観察する

 結晶の形や模様をしっかり観察してみてください。観察したら、ぜひスケッチをして、その美しい姿を記録してみましょう。塩化ナトリウムの結晶(正方形のような構造が見られる)

正方形の構造が肉眼でも観察できます。顕微鏡でも見てみました。

拡大してみると…

同様に、硝酸カリウムも天日干しをしました。それがこちらです。

 再結晶の実験は、目に見えない溶質が再び固体として現れる瞬間を体験できる、とってもワクワクする実験です。生徒が自分の手で結晶を作ることで、科学の不思議さを身近に感じられるはず。もし結晶をもっと大きく育てたい!と思ったら、次のステップとして、結晶を育てて大きくする方法にもチャレンジさせてみるのも面白いですね。

カルキ抜き(ハイポ)を使った深成岩と火山岩モデル実験について

なお、こちらは以前の勤務校の科学部の生徒が作った結晶です。

また塩化アンモニウムの結晶の様子もおすすめです。こちらからご覧ください。

アナ雪もびっくり!キラキラ結晶を作ろう!塩化アンモニウムの再結晶実験

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