ハイポで実験!冷やし方で変わる結晶の世界を教室で再現(地学・岩石)

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中学理科で「火成岩の分類」を扱うとき、「火山岩」と「深成岩」の違いは教科書で学べるけれど、「実際に岩石がどうやってできるのか?」を実感させるのはなかなか難しいですよね。そこで、“冷え方の違い”が結晶の成長に与える影響を観察できる実験を紹介します。テーマは、チオ硫酸ナトリウム(通称ハイポ、またはカルキぬき)を使った結晶の成長実験

この実験では、「早く冷ます」とどうなるか?「ゆっくり冷ます」とどうなるか?を比べることで、**火山岩と深成岩の違い(斑状組織 vs 等粒状組織)**が視覚的に理解できます。

火山岩の一つ(安山岩)

深成岩の一つ(閃緑岩)

実際、私も最初は試行錯誤の連続でした。実習生と何度も繰り返し実験しながらコツをつかみ、授業でもうまく再現できるようになってきました。この記事では、その経験を踏まえて、準備物や手順、ポイントを詳しくご紹介します。

◆準備物

※すべて理科室や家庭でも比較的そろえやすいものです。

• チオ硫酸ナトリウム(ハイポ):カルキ抜きなので、金魚などのグッツ売り場で買えます。例えばダイソーなどでも売っています。ネットでも入手可能。長方形の固まりで販売されています。

• シャーレ×2

• 電気鍋(ハイポを加熱・溶解するため)

• 割り箸(かき混ぜ用)

• 軍手(火傷防止)

• 氷水(急冷用)

• 発泡スチロールの箱(保温=緩冷用)

楽天だとこちら。
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◆実験の概要と目的

目的:

「結晶の成長には冷却速度が影響する」ことを、実体験を通して理解させる。

→ 火山岩(急冷)では結晶が細かく、深成岩(緩冷)では結晶が大きくなるという実感的理解を目指します。

基本原理:

ハイポを加熱して溶かし、冷却速度を変えて再結晶化させます。

・氷水で急冷 → 微細な結晶(火山岩的)

・発泡スチロール内で緩冷 → 大きな結晶(深成岩的)

ハイポをシャーレが一面隠れくるらいまで入れて、電気鍋に少し水を入れて湯煎で温めます。チオ硫酸ナトリウムの融点は48.3℃なので、少し入れておくと、固体から液体になっていきます。割り箸をつかってかき混ぜていきます。

どちらも液体になったら、ずっと温めているわけではなく、すぐに冷水と発泡スチロールの上に取り出します。軍手をしていたほうがいいでしょう。

そして、砕いておいたハイポを、パラパラと両方少し振りかけます。これが結晶核になります。この作業をしておかないと、20分待っても、結晶ができません。これがコツでした。

あとは、15分程度でどちらも結晶ができあがるので、待ちます。左がゆっくり冷やした方で、右が急激にひやしたほうです。ゆっくり冷やしたほうが、大きな結晶ができているのがわかりますね。こちらの動画をご覧ください。20分を1分に縮めました。

急激にひやしたとき、大きな結晶がみられません。

ゆっくり冷やした時は大きな結晶が見られます。何度も実験をしてみて、結晶のでき方にはいろいろな形があったので、ここに掲載をしておきます。

◆授業での使い方ポイント

• 実験前に「冷え方が違うと、どんな石ができると思う?」と問いかけると、観察に目的意識が生まれます。

• 授業時間内(40〜50分)でも観察が可能。ハイポの速やかな再結晶がポイント!

この実験、ちょっとした準備と手順のコツを押さえれば、火成岩の成り立ちを感覚的に理解させることができ、生徒たちの反応も非常に良いです。また、「理科の実験=難しい道具が必要」というイメージを払拭できる点でもおすすめです。生徒の「なるほど!」を引き出す、理科の楽しい授業づくりに、ぜひ取り入れてみてください!

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