【物理が楽しくなる】数式が「うなり」に変わる!スマホで簡単グラフ化アプリ「Quick Graph」
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
数式から「物理現象」を“見える化”したい!
「y=sin(x)+sin(1.1x)」…
突然ですが、この数式を見て、どんな形をイメージしますか?
「うーん、ただの暗号にしか見えない…」そう思う人も多いかもしれません。物理の教科書に出てくる数式は、ときに私たちと現実世界との間に壁を作ってしまうことがあります。
例えば、理科で習う「うなり」。ギターのチューニングをするときなど、2つの音が少しだけズレていると「ワーン、ワーン…」と音が大きくなったり小さくなったりする、あの現象です。この「うなり」も、先ほどのような数式でバッチリ表すことができます。
もちろん、先生の説明を聞けば「なるほど、音が強弱しているな」と頭ではわかります。でも、「その数式が、本当にあの『ワーン』という現象を表しているの?」と実感するのは難しいですよね。
もし、その難解な数式をスマホに入力するだけで、魔法のようにグラフに変わり、現象を「見える化」できるとしたら…? 理解も面白さも、ぐっと深まるはずです。
そこで今回は、数式を入力するだけで、複雑な物理現象も簡単にグラフにしてくれる、強力な助っ人アプリをご紹介します。
スマホで手軽にグラフを描こう
ぼく(理科教師)の一番のおすすめは、Macにもともと入っている「Grapher」というソフトです。非常に高機能で美しいグラフが描けるのですが、Mac専用なので、生徒みんなが使うのは難しいですよね。
そこでWindowsやスマホで何か良いソフトはないかと探していたところ…見つけました! iPhoneアプリの「Quick Graph」です。これなら、通学中や勉強の合間に、気になった数式がどんな形をしているのか、手軽にグラフを眺めることができます。
【実験】アプリで「うなり」の正体を描いてみよう!
それでは早速、「うなり」の様子をグラフにしてみましょう。「Quick Graph」を開いて、数式を打ち込んでみてください。
1. 基準になる音(例:ドの音)
まず、普通の音(サイン波)です。ここでは、うなりの様子を分かりやすく見るために、少し振動数を上げた(細かく振動させた)グラフにしてみましょう。
「y=sin(30*x)」と打ちます。きれいな波(正弦曲線)が現れましたね。
2. 少しだけズレた音(例:少し高いドの音)
次に、これとほんの少しだけ振動数を変えた音を用意します。「うなり」は、この「少しのズレ」がミソです。
「y=sin(31*x)」と打ちます。見た目は先ほどのグラフとそっくりですね。
3. 2つの音を重ねる(うなりの発生!)
いよいよ、この2つの音を「足しあわせ」ます。これが、あなたの耳に2つの音が同時に届いている状態です。
y=sin(30x)+sin(31x)
すると、グラフは次のようになります!
どうでしょうか? 波の「振幅(しんぷく=揺れの大きさ)」が、大きな部分と小さな部分に分かれているのが見えますね。
この振幅が大きな部分が「音が大きく聞こえるところ(ワーン!)」、小さな部分が「静かに聞こえるところ(…)」の正体です。見事に「うなり」の波形が再現できました!
数式は、世界を記述する「コトバ」だ
こんな複雑なグラフを、もし手で描こうとしたら…とても面倒ですし、正確に描くのは至難の業です。でも、アプリを使えば、数式を入力するだけで一瞬です。
指数関数(y=ex のような、急激に増加するグラフ)の変化の様子なども、一度描いて眺めてみると「こんな勢いで増えていくのか!」と、その性質を直感的に理解できます。
数式は暗号ではありません。この世界で起きている現象を説明するための「コトバ」です。このアプリは、そのコトバがどんな形をしているのかを教えてくれる、素晴らしい翻訳機のようなもの。勉強のお供に、いかがでしょうか。
ちなみに、3D表現もできるのもポイントです! z=x2+y2 のような、立体的なグラフも描画できるので、数学や物理の世界がさらに広がるかもしれませんよ!
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