【電池解体新書】マンガン電池の内部に隠された「炭素棒」と「二酸化マンガン」
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
みなさんは、使い終わった「乾電池」をゴミ箱に捨てる際、その小さな筒の中に何が詰まっているのか、想像してみたことはありますか?実は電池の中には、私たちが普段の理科の実験で喉から手が出るほど欲しい「お宝」がたくさん隠されているんです。今回は、身近なパワーユニットであるマンガン電池を分解して、その内部構造を丸裸にしてみました!単なる「使い捨ての道具」が、実は「精巧な化学反応装置」であることを一緒に確かめていきましょう。
分解のために準備する「七つ道具」
マンガン電池の神秘を探るべく、今回用意した道具はこちらです。

• ペンチ(大小):電池の外装は頑丈な金属です。これでしっかりと外装を剥ぎ取ります。
• ドライバー:内部に固められた材料を効率よく掘り出すために使います。
• カッター:電池を保護しているビニールや絶縁材を切り裂くのに活躍します。
• 新聞紙:電池の中からは黒い粉が出てきます。作業台を汚さないための必須アイテムです!
• 紙コップ:取り出した貴重な「材料」を種類ごとに分けて保管します。
電池の「外科手術」!分解のコツと手順
それでは、いよいよ分解に入ります。マンガン電池は、プラス極の端子がある上部から攻めるのが基本です。
ご注意:こちらは授業での活用を想定した教師向けの解説です。電池の分解は破損や怪我の恐れがあるため、ご家庭で勝手に真似をすることは避けてください。また、分解できるのはマンガン電池のみです。アルカリ電池は絶対に分解しないでください。
はじめに、電池のプラス極の接合部分にペンチの刃をあてます。少しめくれたら、そこからはコーンビーフの缶を開けるような感覚で、ペンチをくるくると回して外装を剥がしていきます。ここが最もテクニックを要するポイントです!



より詳しい力加減などは、ぜひ動画で確認してみてくださいね。上部が外れたら、底からグッと押し出すようにすると、外側の金属カバーがスポンと抜けます。

カバーを外すと現れるのが、電池の本体です。カッターで慎重に周りのビニールを切り、中心に鎮座している炭素棒を傷つけないように取り出します。


見事にバラバラになりました!

現れたのは、亜鉛で作られた缶と、中心を貫いていた炭素棒。そして、その隙間を埋めていた真っ黒な粉(二酸化マンガン)です。

電池の中身は「実験材料の宝庫」だった!
ここからが理科教師としての本領発揮です。マンガン電池から取り出した素材は、他の科学実験で素晴らしい役割を果たしてくれます。

• 炭素棒:電気をよく通すため、電気分解の電極としてそのまま利用可能です。
• 亜鉛板(缶):ハサミで切って、金属のイオン化傾向を調べる実験や、塩酸に入れて水素を発生させる実験に使えます。
• 二酸化マンガン:これこそが主役!過酸化水素水(オキシドール)と反応させることで、酸素を発生させる触媒として再利用できます。
「電池は使い終わったらゴミ」ではなく、「次の実験のための資源」へと変わる瞬間です。中学生のみなさんにも、ぜひこの「資源の循環」という視点を持ってほしいなと思います。
絶対に守って!実験の安全ルール
好奇心旺盛なみなさんに、これだけは約束してほしいことがあります。
• アルカリ電池は絶対に分解しない!:アルカリ電池の電解液は強いアルカリ性で、皮膚につくと化学火傷を起こし、目に入ると失明の危険もあります。分解していいのは、構造がシンプルな「マンガン電池」だけです。
• 大人の監督が必須です!:鋭利な工具を使いますし、化学物質も扱います。必ず先生や保護者の方と一緒に作業してください。
• 保護メガネと手袋を着用する:安全は、すべての実験において最優先事項です。
本物の素材に触れることで、科学への理解はグッと深まります。「電池の中には、電気を運ぶための小さな工夫が詰まっているんだ」という実感を大切にしてください。
参考: 今回の分解で、紙コップいっぱいの二酸化マンガンが手に入りました。次は、バラバラにしたパーツをもう一度組み立て直す「電池の再構築」にも挑戦しましたので、ぜひチェックしてみてください!
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