落下運動のシミュレーションをScratchで作らせる授業を行ってみました

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ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。このサイトで科学を一緒に楽しみましょう。

50分の授業で、物体の運動(水平投射)について観察して、ストロボ写真(残像動画アプリ)を分析、その結果から、運動の特徴を見出して、Scratchでプログラムに組むという、PBL(Project Based Learning)型(課題解決学習形式)の授業を行いました。

ストロボ写真で放物運動を解析!(モーションショット、残像動画)

こちらが水平投射の様子です。

一つ前の時間で等速直線運動のプログラムと等速直線運動のプログラムについては、Scratchで作り方について学習をしてあります。水平投射がこれ等の組み合わせで表現できるということに気が付けるかどうか、それをプログラムで組めるかどうかが鍵となります。

Scratchにはじめて触るという生徒もいれば、もうゲームなどを作ったことがあるという生徒まで様々な生徒がいましたが、それぞれが自分のレベルに合わせて楽しめるように、課題を複数用意(射法投射や鉛直投げ上げなど)してみたりと工夫をしてみました。

生徒の様子

導入で行った運動の分析については、班活動で、ストロボ写真の紙を一枚配布をして行いました。以下のようなものが出てきました。

またプログラミングについては、各個人で行わせたのですが、生徒からはこのような作品が提出されました。プログラムの答えは1つではないので、いろいろなプログラムがありえます。

物語までつけてくれる作品も提出されて、みていて面白かったです。

授業の振り返りでは、生徒からは次のような感想・意見が出されました。

作業しながら考える、ということをすると今のシュミレーションはどこが悪かったのか、そこをどう改善したら良いのかを常に考えながらつくることができるのでとても良かったです。また、プログラミングをつくり、実際に自分で動かしたことで式をより理解することができました。

前回つくった等加速度運動のプログラミングを参考に、水平投射を作ることができた。設定を野球にして、面白く見れるようにした。

等速直線運動(横方向の運動)に等加速度運動(縦方向)が重なったために斜め方向の運動ができたと思った。ただ、ボールが野球のように上に上がって行く運動は、落下運動の正負を反対にしたのみでは反り返った弧になってしまった。等速直線運動が等加速度運動よりも速かったためだと思った。実際にシュミレーションして確かめるとともにストロボ写真の解析もして明らかにしようと思った。

自分はまずストロボ写真をみて、「重力の等加速度運動」と横の運動が関わって、ボールがあのような通り道になっているのだと考えた。だが、横の運動はどのような運動かが分からず、悩んでいたら他の班の人がx軸は等しい距離で進んでいるということを言っているのを聞き、等速直線運動だという事が分かった。このように、結果をしっかりと観察してから、それを考察して、データに移すことが大切だと思った。一見どうやれば分からない動き方も、しっかりと観察、考察することで、プログラミングができて楽しかった。

“実際の水平投射を見て規則性を考え、今までに学んだ運動の計算式を用いてプログラムしていくのが新鮮で、楽しかった。最初は操作に戸惑うことも多かったが、徐々になれていくうちに微調整をしながら適切なプログラムが作れたと思う。

水平投射の運動は、x軸方向には等速運動、y軸方向には等加速度運動というようになっており、その合わせ技と考えて2軸での座標をそれぞれで作っていった。このような感じで、1次元でない運動に関しても次元ごとに分けて考えることで理解できるのではないかと思った。”

最後に

キーボード付きのPCを生徒が持っていること、Wifiが整備されていること、などさまざまな幸運に恵まれました。

・提出したプログラムを1つ1つ確認していったところ、水平投射プログラムがくめており、初期座標を動かしている生徒(A+)が26名、Aと評価をした水平投射ができていた生徒が2名おり、Aで合計で80%の生徒が達成できていました。うまくできていなかったけどプログラムを提出した生徒が2名(B評価)、わからないまたは未提出が5名いました。ふりかえりシートの自己評価の割合とほとんど一致しています。

・振返シートから、難しいけど楽しかったという感想が多くありました。また生徒に求めた提出物には単に水平投射をシミュレーションするだけではなく、流れ星で表現する生徒、野球のピッチャーバッターで表現する生徒、その先のバウンドまで表現した生徒などバリエーション豊かでした(なおこれらは今回は評価には含めていませんが、授業で生徒に作品共有をしました)。

・プログラミングが苦手な生徒はもちろん、得意な生徒も多くいるのではないかと予想をしていたが、実際に行ってみると追加課題(斜方投射)に手を出す生徒はいなかった。後日のヒアリングでは、他のプログラムを楽しんだり、それを自分なりに改造などをする経験は多くても、イチから何かを作ることはしたことがないといっていた生徒もいた。

・一度水平投射の特徴を教員が黒板にまとめて、全体に共有をしてからプログラミングをスタートしたほうが、最終的な提出物の到達度も高くったかもしれないなと感じている。

・黒板に目的をしっかりと書くことをしたほうが、目標が明確化されたと感じる。

・議論はすべてをJambordにした方がよかったのか、それとも紙のハイブリッドがよかったのか、答えはでていない。

・終わりで次の力につなげるために、x軸は等速直線運動、y軸は等加速度直線運動ということについて、全体で共有したわけでもないのに、私が話をしていたが、それが少し唐突、強引になってしまっていた。

 

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