衝突・合体・分裂……どれも運動量は変わらない!最新台車Vernier Dynamics Cartで物理実験
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
ビリヤードのボールが別のボールにぶつかる瞬間、速度はどう変わるのでしょうか?交通事故の解析、ロケットの噴射、スポーツの衝突シーン……じつは「運動量の保存」は、物理の中でも特に”世界の仕組み”を支える重要な法則のひとつです。今回は、その運動量保存の法則を、最新のセンサ内蔵台車「Vernier Dynamics Cart」を使って実験してみました。
3つのセンサを内蔵した、スゴイ台車
今回使用したのは「Vernier Dynamics Cart」という台車です。この台車のすごいところは、3種類のセンサを本体に内蔵している点です。

裏面はこのような感じです。

1つ目のセンサは「位置センサ」です。移動距離を読み取るもので、本体の中心にある車輪に刻まれたスリットの通過数を読み取ることで位置を計測しています。
2つ目のセンサは「加速度センサ」です。位置センサから算出する加速度とは別に、わずかな静電容量の変化を読み取る「静電容量検出方式」で加速度そのものを直接計測しています。
3つ目のセンサは「力センサ」です。ひずみゲージを利用したセンサで、台車にかかる力を直接測ることができます。
位置(から算出する速度)・加速度・力、という3つの物理量がリアルタイムで取れるわけですから、運動量や力積の実験にぴったりです。今回はまず運動量保存の実験をやってみました。

4つのパターンで衝突・分裂実験をやってみた
今回は2つの台車を使って、重さや衝突面の様子を変えながら実験しました。それぞれの結果について、運動量の和・速度の和・運動エネルギーの和も比較してみています。
① 質量が同じ2台車の衝突(Aを動かし、Bを静止させた場合)


② Aにおもりを乗せてBと衝突させた場合
③ AとBをマジックテープで合体させた場合(完全非弾性衝突)


④ AとBを分裂させた場合


どのパターンでも、衝突の前後で運動量の和がほぼ一定に保たれていることが確認できました。これが「運動量保存の法則」です。外から力が加わらない限り、どんな衝突や分裂が起きても、系全体の運動量は変わらない——理論どおりの結果が目の前で出るのは、やはり感動しますね。ちなみに③のマジックテープで合体するケースは「完全非弾性衝突」と呼ばれ、運動量は保存されますが運動エネルギーは最も大きく失われます。エネルギーの一部が熱や変形に使われるためです。この違いを見比べるのも、実験の面白いポイントです。
実験の様子とリアルタイム計測
実験はこのような感じで行います。

BluetoothでPCやタブレットと接続し、結果がリアルタイムで送られてきます。アプリの動きも快適で、グラフがすぐに表示されます。グラフの例はこちらです(運動量保存の実験時のものではありません)。

これらの実験が20分程度でできてしまうのが素晴らしいところです。従来のビースピ(光電センサ)を使った実験と比べると、セットアップの手間が格段に少なく、精度も高い。うまくいけば、解析まで授業時間内に収まるかもしれません。
台車とおもりの質量データ
参考までに、今回使用した機材の質量を記録しておきます。台車の質量は290gでした。

専用おもりの質量は123gでした。

次は等加速度直線運動にも挑戦したい
今回は運動量保存の実験を紹介しましたが、この台車なら等加速度直線運動の演示実験もさっとできそうです。3つのセンサをフル活用すれば、力・加速度・速度の関係(まさにニュートンの第2法則!)をリアルタイムで可視化できるはずです。次回もお楽しみに。
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