静電気のヒミツ!発泡スチロールと紙くずで実験しよう(静電気実験・誘電分極)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験!
触れてもいないのに、軽いものをフワッと引き寄せる…。まるでSF映画の超能力のようですが、実はこれ、皆さんもよく知っている「静電気」が持つ不思議なパワーなんです。冬にセーターを脱ぐときの「パチッ!」という音や、風船で髪の毛が逆立つあの現象。今回は、そんな身近な静電気が、なぜモノを引きつける「魔法の力」になるのか、その謎を一緒に解き明かしていきましょう!
ミクロの世界の大移動!静電気の正体とは?
そもそも「静電気」は、モノ同士がこすれ合うことで発生します。私たちの身の回りにあるすべての物質は、「原子」という小さな粒からできており、その中にはプラスの電気とマイナスの電気(電子)が含まれています。こすれ合うことで、一方の物質からもう一方へ電子が「お引越し」します。このとき、物質によって電子を「放出しやすい」性質と「受け取りやすい」性質があり、その序列を示したものが「帯電列(たいでんれつ)」です。
参考:帯電列

拙著『科学検定公式問題集5・6級』(講談社)
例えば、ゴム風船をティッシュや布でこすると、帯電列の順番から、布から風船へと電子が移動します。その結果、電子をたくさん受け取った風船はマイナスに、電子を失った布はプラスに帯電するのです。

実験開始!静電気で発泡スチロールをあやつろう
では、マイナスに帯電した風船を、電気的に中性な(プラスでもマイナスでもない)発泡スチロールに近づけてみましょう。

ご覧の通り、ピタッと吸い付きました!
ここで一つ、面白い謎があります。風船から電子を奪ってプラスに帯電したはずの布を近づけても…ほら、こちらも発泡スチロールがくっついてきます。

不思議ですよね!なぜ、マイナスの風船でも、プラスの布でも、同じように引きつけるのでしょうか?
謎を解くカギは「誘電分極」!
この現象の秘密は「誘電分極(ゆうでんぶんきょく)」という現象にあります。電気的に中性な発泡スチロールも、原子の中にはプラスとマイナスの電気がいます。普段はそれらがバラバラの方向を向いてバランスを保っています。

ここに、マイナスに帯電した風船を近づけるとどうなるでしょう?マイナスの電気(電子)は、風船のマイナスと反発し、原子の中で風船から遠い方へ押しやられます。その結果、風船に近い側は相対的にプラスの電気が顔を出すことになるのです。

風船の「マイナス」と、発泡スチロール表面の「プラス」が引き合うため、くっつくんですね。逆にプラスの布を近づければ、今度は電子が引き寄せられて布に近い側がマイナスになり、やはり引き合います。つまり、相手がプラスでもマイナスでも、電気が流れない物質の中身を整列させて、必ず引き合うようにしてしまうのが「誘電分極」のすごいところなのです!
ゴミが踊りだす!?紙くずでアートを作ろう
この力を使えば、もっと面白いことができます。学校のシュレッダーのクズや、細かく切った折り紙など、ゴミだと思っているものも、素敵な実験道具に早変わり!

帯電させた風船を近づけてみましょう。その様子を動画でご覧ください。
いかがでしたか?紙くずたちがザワザワと立ち上がり、まるで生きているかのように風船に吸い寄せられていきます。くっついた後、紙くずが放射状にピンと立っているのがわかりますか?これは、目には見えない電気の力の流れ「電気力線」に沿って整列している証拠。静電気が作り出すアート作品のようです。

ちなみに、同じ場所に磁石を近づけても、紙くずは全く反応しません。これで、電気の力と磁石の力は違うものだということも、一目でわかりますね。

わかっていても、何度見ても面白いこの現象。ぜひご家庭でも試してみてください!
【上級編】静電気マシーンで、さらにすごい実験を!
この実験の他にも、バンデグラフという静電気発生マシーンを使えば、髪の毛が全部逆立ったり、空中をフワフワ浮遊したりと、さらにダイナミックな実験ができます。これらの実験の一部は、広瀬すずさんや鈴木亮平さん、チョコレートプラネッツさんたちとテレビ番組で行ったものです。詳しくは、こちらの特集ページをご覧ください!
【特集】やめられなくなる!静電気実験
なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験は、大変危険を伴います。必ず専門家の立ち合いのもとで行ってください。静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)はこちらからお願いします。
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