静電気のヒミツ!発泡スチロールと紙くずで実験しよう(静電気実験・誘電分極)
みなさんは、冬場にセーターを脱ぐときに「パチッ」と静電気を感じたり、風船を髪の毛にこすりつけると髪が逆立ったりする経験をしたことはありませんか?これはすべて静電気の仕業です。身近な現象ですが、実はとても不思議な力が働いています。
今回の実験は、発泡スチロールや紙くずを使って静電気の力を確かめてみます。静電気は、物体同士をこすり合わせることで発生します。このとき、電子の取れやすい物質と受け取りやすい物質があり、電子の移動が起こることで帯電します。
物質が電子をどれくらい取られやすいのか、または受け取りやすいのかを示したものを「帯電列」といいます。例えば、ガラスや髪の毛は電子を放出しやすく、逆にゴムやプラスチックは電子を受け取りやすいという特徴があります。
参考:帯電列
拙著『科学検定公式問題集5・6級』(講談社)
性質が反対の2つの物質をこすり合わせると、効率よく静電気が発生します。
ゴム風船で静電気
例えばゴム風船を絹などでこすると、絹から風船に電子が移り、風船はマイナスに、絹はプラスに帯電します(仕事関数Wというものと関係があります)。
こすったゴム風船を発泡スチロールに近づけると、風船にはりつきます。
ちなみにこすった雑巾を近づけるとどうなるでしょうか。実はこちらも、発泡スチロールは張り付いてきます。
不思議ですよね!
なぜ張り付くのか?
これは誘電分極という現象と関係しています。誘電分極とは、電場によって微視的な電気双極子が整列することで引き起こされます。原子は通常は+の電気をもつ陽子の数と、電子の数が同じになっています。
電気としては全体として0になっており、これを電気的な中和といいます。例えば発泡スチロールなどの物体の表面は原子の中で電子の場所は揃っておらずバラバラです。
ここにたとえばマイナスに帯電させた棒を近づけていくと…
このように電子が反発して下側に移動します。
結果として、発泡スチロールの上の表面がプラスに帯電します。そのため、帯電棒と発泡スチロールの間でマイナスとプラスで引き合います。
プラスの帯電棒を近づけたときは、その逆のことが起こり、今度は電子が上に移動をし、物体の上がマイナス、下がプラスになり、やはり引き合います。つまり、電気が流れない物質(不動体)であっても、プラスでもマイナスでもどちらの帯電棒を近づけても、引き合います。
写真にもその様子を加えてみると、次のようになります(実体的な見方)。
発泡スチロールですが、このまましばらくすると、落ちてしまうこともよくあります。これは静電気が空気に逃げて落ちてしまうという場合もありますが、発泡スチロールに電子の一部が移動して、その結果、反発して落ちる場合もあります。
紙くずでもやってみよう!
ゴミだと思っているものでも、見る方向を変えると素敵な実験道具になることはよくあります。学校では大量に発生するシュレッダーのクズ。家庭では折り紙などを細かく切ってもいいでしょう。
風船を絹などでこすったあとにシュレッダーくずや折り紙のクズに近づけてみましょう。
いかがでしたか?風船を近づけていくとクズが反応をして、立ち上がるのがわかります。
中には風船に吸い付けられるものもでてきますね。くっついたあとに、電気力線の向きにクズが立ち上がるのがまた面白いところです。なぜこのようになるのでしょうか。
また磁石ももってきて、くずに近づけてみました。くずは全く反応しません。
ちょっとしたことなのですが、電気と磁気の違いがよくわかりますね。
なぜ風船に吸い付くの?
基本的には発泡スチロールと同じ仕組みです。風船を絹でこすると、風船はマイナスに帯電します。
マイナスに帯電した風船を近づけると、シュレッダーくずの中の電気に偏りが生じて、マイナスに帯電した風船に近い側が、プラスに帯電するためです(誘電分極)。
わかっていても、面白い。ぜひご家庭でも実験をしてみてくださいね。シュレダーくずがなくても、折り紙などを細く着れば、同じように実験ができます。
静電気発生マシーンを使うと、こんな面白い実験が!!
この実験の他にも、バンデグラフという静電気マシーンを使った面白い実験を多数公開しています。これらの実験は、広瀬すずさん・鈴木亮平さん・やす子さん・チョコレートプラネッツの長田さん・松尾さん等とテレビ番組にて行った実験も含まれます。詳しくはこちらをどうぞ。
なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします。
【特集】やめられなくなる!静電気実験
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