研究現場を疑似体験!ナリカのブラックボックスが面白い!

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ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。このサイトで科学を一緒に楽しみましょう。 

ナリカのSEPUPという教材に『ブラックボックス』というものがあります。このブラックボックスを使った実験(体験?)を、高校2年生の授業で毎年冬休み明けに行っています。ブラックボックスとは黒い箱という意味ではなく、中の構造がわからない箱という意味で、箱根の寄木細工の職人が作った1辺が20センチの正方形の茶色い木箱。この木箱を少し振ってみるとカラコロと音がします。

ブラックボックの様子

この箱の中の構造を調べて発表することが生徒の課題です。実験室にあるものはどんなものでも使って良いのですが、木箱を壊したり、傷つけてはいけません。はたしてどのようにして中の構造を調べれればよいのでしょうか。

あらかじめ確かめるための道具として、磁石、聴診器、定規を事前に用意しました。生徒にわたすと初めは音や色などをまず確認してから、磁石を近づけていきます。すると磁石が中に入っているものにはりつくことで、なんとなく鉄の玉のようなもののが入っているという手応えを感じます。

磁石を使って、球のようなものをはりつけて動かしていくと、球が中にある構造物にぶつかり、磁石から外れます。その手応えを元に、箱の中の構造を手探りで考えていきます。

生徒の様子を見ていると、磁石を箱の上下につける生徒もいたり、音を聞いて考えるものもいたり、いろいろな工夫をして推測する生徒がいました。

構造をなんとなく調べた後は、実際に定規などをあてて、構造の厚やや長さなどを定規ではかって調べていきます。

いろいろな構造の種類があるのですが(左上に書いてある英文字でその種類がわかります)、4人班で2つ同じ箱を渡して、2人で1つの箱を20分の時間内で調べます。その後4人班になり、構造を比べて話し合いをして、もう一度確かめます。4人で意見を一致させて、答えを見つけ出していきます(合意形成)。一生懸命、中の様子を推測したり、楽しそうに調べている様子が見られました。

その後、推測したと考える根拠などを箇条書きでまとめていきます。

そして構造物がどのような形をしているのか、またそう考えた根拠を各班で発表しました。これは研究で言えば、論文を書いたり、学会等での発表と同じ意味合いを持ちます

そして最後に種あかし!正解を教員から発表!と思いきや、この箱の中はあけることが教員もできないので、答えがないということを伝えます。

生徒からは、がっかりしたような、そんな空気が流れます。

しかしこの活動の大切なところは、正解を見つけることではありません。生徒とするれば正解を知りたいという気持ちが強く、教師が提示を最後にしてくれるだろうと期待をしているのですが、答えは見つけられなくても、中の構造を推測し、推測するための方法を考えて、仮説を立てて、他者と意見を交わして、合意形成を取っていくという、研究の流れを疑似体験できるという活動です。

研究のサイクル

目的 仮説 実験方法 実験(観察) 結果・分析 考察・結論 → 新たな仮設

そして今、班で考えて合意形成をとったものが、その班での現時点での真実であるということを伝えます。教科書にある知識もそのようなものなのだということを伝えます。だから教科書にかかれていることは変わることもあると。

もし観測技術などが発見れば一歩前進することもあり、構造がよりはっきりするかもしれません。そうなると、新たな真実ということで教科書が書き換わります。

生徒の感想としては次のようなものが見られました。

ジグソーパズルには明確な答えがあります。

スクリーンショット 2016-08-18 7.05.34

ジグソーパズルは、

1人でできるもの(合意形成が必要ない)
答えがあるもの

という特徴があります。他の人を納得させる必要性もありません。ですが、実際の研究現場ではどうでしょうか。

どうしても中高の実験は、何かある正解があってそれ以外は不正解と思いがちですが、実際の研究現場ではわからないことに挑んでいくわけで、正解が1つだということや、唯一の答えが見つかるということはありません。新しい事実がみつかれば、今あるものは書き換わり、また新たな疑問に出会います。

この体験は教員にとってもショッキングなものでもあります。私がはじめにこの教材に出会ったときに衝撃を受けました。毎日の授業や学校で行う実験が、このジグソーパズルのようなものにはなっていないでしょうか。私達教員も考えさせられることがあると思います。

このような体験を通して、生徒は考えることの面白さや奥深さを感じてくれたのではないかと期待しています。感想の中に、「楽しい」という意見があって、このような実験を楽しめるという生徒に嬉しく思っています。

参考 ナリカ「ブラックボックス」のサイトはこちら。

またこちらのブラックボックスも合わせて御覧ください。

お弁当箱の中身はなんだろな!?お弁当ブラックボックス

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