鉄とアルミはどう違う?100℃の金属が教えてくれる物質の「個性」(比熱の測定実験)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「鉄のフライパンはすぐに熱くなるのに、お鍋のお湯はなかなか沸かない……」そんな風に感じたことはありませんか?実はこれ、物質が持つ「温まりやすさの個性」が関係しているのです。今回は、中学生の理科でも登場する「比熱」というテーマを、驚くほど効率的で安全に学べる実験レポートとしてお届けします。
おでん鍋が理科室に!?画期的な加熱方法
金属の種類による比熱の実験を行いました。実験の内容は、100度に熱した100gの三種類の金属を、それぞれ決まった量の水に入れ、その水の温度上昇から金属の比熱を計算するというものです。まず、さまざまな金属(紐をつけてあります)を電気鍋で温めます。実は、この電気鍋が今回の実験の大きなポイントです。

学校現場では、このような電気炊飯器や電気鍋が実は大活躍します。水を入れて一定の温度で保温することができ、倒してこぼす心配も少なく、安全に試験管や金属を温めることができるからです。これまでは主に化学の実験で使っていましたが、物理の比熱の実験に導入してみたところ、驚くほど安全かつスムーズに実験が進むようになりました。

ガスバーナーよりも「電気鍋」がおすすめな理由
通常の実験ではガスバーナーとビーカーを使って金属を温めますが、ビーカーは倒れる危険性があったり、お湯が沸騰するまでに時間がかかったりという課題がありました。
その点、電気鍋なら授業の前にスイッチを入れておくだけで、一度にすべての金属を均一に温めておけるので非常に便利です。お湯の中で金属がゆらゆら揺れる様子は、まるでおでんの具のよう。生徒が自分のタイミングで金属を取りに来るスタイルにできるので、教員側の負担もぐっと減りました。
いざ測定!金属の「熱のバトンタッチ」を観察
金属がしっかり100度まで温まったら、それぞれの金属をサーモカップ(断熱容器)に入れた水の中に入れ、水の温度がどれくらい上がるかを測定します。


ここで重要なのが「熱量の保存」という考え方です。熱い金属が失った熱エネルギーが、そのまま冷たい水に受け継がれるという、熱のバトンタッチが行われるのです。実際の結果はこちらです。水に入れる前の温度と入れた後の温度の差(温度上昇)をグラフや表にまとめ、計算式に当てはめて金属の比熱を導き出します。

比熱は「物質の身分証明書」
三種類の金属は見た目でもなんとなく材質の予想がつきますが、計算で出た「比熱」の数値を使えば、より科学的に正体を突き止める(同定する)ことができます。

たとえば、アルミニウムの比熱は約0.90J/(g・K)ですが、鉄は約0.45J/(g・K)です。なんと、アルミニウムは鉄に比べて、温まるのにおよそ2倍のエネルギーが必要だということになります。このように、比熱を知ることは、その物質が持つ固有の性格を知ることなのです。
授業を成功させるための「先生へのアドバイス」
もし先生方がこの実験を行うなら、いくつかコツがあります。まず、準備は授業の20分前には始めましょう。電気鍋に水を入れる際、あらかじめ給湯器などの熱湯を入れておくと、沸騰までの時間を大幅に短縮できます。
実験自体は30分ほどで終わるため、1時間の授業内でデータ整理まで完結させることが可能です。そして、最も大切なのが後片付けです!実験が終わったら、すべての金属をすぐに取り出し、キッチンペーパーや雑巾で丁寧に水分を拭き取ってください。

後片付けのようす
特に「鉄」は非常に錆びやすいため、濡れたまま放置すると次回の実験で使えなくなってしまいます。最後まで道具を大切に扱うことも、立派な科学の学びですね。今回の実験を通じて、目には見えない「熱」の動きを数値で捉える楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。
電気鍋を使ったこちらの実験もお試しください。
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