見えない「音」の形が見えてくる!タブレットと水を使った共鳴実験の不思議(気柱共鳴実験)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「音」は目に見えません。でも、もしその見えない音の波を、計算と実験でピタリと捉えることができたら、少し感動しませんか?今回は、最新のタブレット端末と、昔ながらの水とパイプを使った実験を組み合わせることで、音の速さや波の形を解き明かす「気柱共鳴(きちゅうきょうめい)」の授業をご紹介します。見えない「空気の振動」を頭の中でイメージしながら読んでみてください。

タブレット×アナログ実験で「音」を可視化する
ナリカサイエンスアカデミーでは、理科実験の中でタブレットを活用した実験を積極的に紹介しています。昨日は、アクリルパイプとタブレットをつかった「気柱共鳴」の実験を行いました。この実験の仕組みはシンプルですが、奥が深いものです。 アクリルパイプの中に、タブレットの発振アプリを使って正確な周波数の音を出し続けます。そして、パイプの下につながった水容器を上下させることで、パイプ内の水面(閉管の長さ)を変化させていきます。
すると、ある特定の深さになった瞬間だけ、「ワーン!」と急に音が大きくなる場所が見つかります。これが共鳴(きょうめい)です。

音の「節」と「腹」を探し出せ!
音をよく聞いていると、音が大きくなる場所がいくつか見つかります。いろいろ長さを変えて、そのときの閉管の長さを測っていきます。
この時、パイプの中では定常波(ていじょうは)という、波が止まって見えるような現象が起きています。音が大きくなる場所を見つけるということは、空気の振動が激しい場所(腹)を探し当てていることと同じなんですね。この実験では、共鳴が起こる2つの閉管の長さの差から、音速を求めることができます。
【クイズ】空気は少し飛び出している?「開口端補正」の謎
さて、ここで少し物理のパズルを解いてみましょう。この実験を行うと、「計算上の波の長さ」と「実際のパイプの長さ」が微妙に合わないという現象にぶつかります。
ある班で共鳴実験を行った所、管口から0.415mのところで、共鳴が起こりました。 また2つの共鳴する場所の間(半波長)を測定し、そこから計算した所、波長が0.34mであることがわかりました。
このことから管の中にどのような定常波がおこっているのかを推測し、開口端補正(かいこうたんほせい)を求めていきます。
<ヒント> 波長が0.34mということは、基本振動(1/4波長)の長さは、0.34 ÷ 4 = 0.085m です。 今回の共鳴点 0.415m は、0.085m のおよそ5倍(0.425m)に近い数字ですね。つまり、5倍振動(3つ目の共鳴点)が起きていると考えられます。
しかし、計算上の 0.425m に対して、実際は 0.415m しかありません。 この差こそが、音がパイプの出口から少しだけ外側にはみ出して振動している分(開口端補正)なのです。
0.425m - 0.415m = ???
さて、答えは何cmになるでしょうか?(答えは1cmですね!) このように、実験値と理論値を組み合わせることで、目に見えない空気の「はみ出し」まで測れてしまうのが、物理実験の醍醐味です。
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