まるで魔法?スピーカーとタコ糸で「定常波」を操る格安実験レシピ
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
見えない「音」の形、見てみたくありませんか? 理科室にある実験装置は高価なものが多いイメージがあるかもしれませんが、実は身近なアイテムで驚くほど本格的な実験ができるんです。今日は、まるで生き物のように弦が踊りだす「定常波(ていじょうは)」の実験装置をご紹介します。本校のI先生と協力し、100円ショップのアイテムを駆使して、格安かつ高性能な装置を開発しました。学校の先生はもちろん、ご家庭での自由研究にもぴったりです。

科学のレシピ:身近なもので実験装置を作ろう
「物理の実験」といっても、特別な器具は必要ありません。今回用意するのは、以下のアイテムです。総額でもランチ代くらいで収まってしまいます。
準備するもの: 安いスピーカー(後で分解します) 例えばダイソーで300円で売られていたスピーカーはパワフルでした。3Wの出力があるため、弦をより強く、ダイナミックに揺らすことができます。科学実験も、より良いパーツを見つけてアップデートしていくのが醍醐味ですね。

・タコ糸 ・おもり(釣り用のものでも、5円玉を束ねても代用可) ・まな板立て(100円ショップで購入)

・USB充電器コンセント(100円ショップで購入)

・音源となるスマートフォンやiPad (無料の「トーンジェネレーター」系アプリを入れておきましょう。特定の周波数の音を出せるアプリなら何でも構いません)
実験ステップ:スピーカーを「振動マシン」に大改造
1.スピーカーの加工 スピーカーの音を出す部分(コーン)を、カッターとはさみで切り落とします。音として空気へ逃げてしまうエネルギーを抑え、純粋に中心部の振動だけをタコ糸に伝えるためです。配線を傷つけないように注意しましょう!

2.タコ糸の接続 コーンを外した中心の振動部に、タコ糸をしっかり結びつけます。

3.装置の組み立て 糸のもう一方を、まな板スタンドに通しておもりをぶら下げます。これで「ピン」と張った状態になります。


最後に、スマホをスピーカーに接続すれば準備完了。タコ糸の長さは50cmくらいから始めると観察しやすいですよ。

これらの道具を組み合わせていきます。スピーカーの震える部分にタコ糸を結び、もう片方をまな板立てにかけ、おもりでピンと張ります。
さあ、スイッチオン!実際に揺らしてみると……
いかがでしょうか。肉眼でもくっきりと、美しい波の形が見えます。これまでの実験装置よりもはるかに見やすい定常波が現れました。これは感動しますよ!
実験のコツと「共振」の不思議
この実験の仕組みはシンプルですが、奥が深いです。 アプリを使ってスピーカーから特定の低い音(低い周波数)から高い音へと変化させていくと、ある特定の高さの音になった瞬間、突然糸が大きく暴れだし、美しい波の形を作ります。これが物理でいう「共振(きょうしん)」現象であり、その時できる動かない波の形が「定常波」です。

実験成功のポイント: いきなり「基本振動(波が1つの状態)」を探すのは難しいです。まずは周波数を調整して、3倍振動や4倍振動(波のコブが3つや4つある状態)を探してみてください。これらは比較的簡単に見つかります。 そこから予想を立てて、周波数を下げていき、2倍振動、そして基本振動へと挑戦するのがコツです。基本振動は、音を出して糸が揺れ始めてから、きれいな形になるまで少し時間がかかることがあるので、じっくり待ってみてくださいね。
実際に生徒たちが行った実験データがこちらです。

深まる疑問:なぜおもりを重くすると音が変わる?
次に、おもりの重さを変えてみましょう。実はこれ、ギターの弦を巻いて「チューニング」しているのと同じ原理なんです。
おもりを重くすると、糸を引っ張る力(張力)が大きくなります。すると、波が糸を伝わるスピードが速くなるため、同じ形(4倍振動など)を作るのに必要な振動数も大きくなっていきます。

生徒たちは実験を通して、「ピンと張るほど高い音(高い振動数)になる」という楽器の本質に気づくことができました。数式で覚えるだけでなく、実際に糸を揺らして、その手応えを感じること。それこそが、科学を学ぶ醍醐味ですね。
プロのひと工夫
先日ナリカにいって、弦定常波を観察する実験装置(弦定常波実験セット)を見させていただきました。さすがに手作りとは違って、パワーもありきれいな定常波を観察することができました。

振動装置を立てにすると、振動数が半分になるのも面白いです。おそらくメルデの実験?のようなものがよく観察できました。これをまねして、ぼくが自作をしているダイソーのものも、振動部を上に向けて、定規などをあてれば、もう少しきれいな波が出るのではないかとやってみると、きれいな定常波がでました。

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