これは面白い!混乱期を3万年から千年まで縮めるために。
今回紹介をするのは『ファウンデーション』(ハヤカワ文庫、アイザック・アシモフ)という本です。有名な本なので、ファンの方には申し訳ないのですが、素人ながら面白かったのでご紹介させていただきます。
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銀河帝国の衰退
舞台は1万2千年続いた銀河帝国。セルダンという名の数学者が心理歴史学という学問を使って、この銀河帝国の崩壊を予想します。なお心理歴史学とは、人間一人一人の未来を予想することは不可能でも、何兆人もの人間全体のすすむ方向を予想することは、過去の歴史を分析することによって、可能であるという驚くべき学問です(実際にはないもので、作者が考えたものです)。
セルダンが心理歴史学をもちいて、コンピューターを走らせて計算を行ったところ、銀河帝国が徐々に滅び、原子力などの技術の伝承が途絶え、3万年にも及ぶ混乱期を迎えるということがわかりました。セルダンは今後起こるこの混乱期を、30000年から1000年にまで縮めるために、心理歴史学を使って、帝国の中心惑星から離れた、銀河の最果てのある惑星に科学者を移住させるという案を思いつき、実行します。ここで現在の科学技術を伝承する百科事典を作るための街を作ります。
セルダンの死後、予想通りに銀河帝国が衰退していきます。すると原子力などの技術が衰退し、帝国の目が行き届かなくなってきて、この移住させた惑星が、近くの独立した惑星から侵略されそうになるなど、いくつもの試練にたたされるのです。
その荒波をそれぞれの時代に登場する、政治家や宗教家、資本家が活躍し、混乱期を短くするためのバトンを渡していく、という壮大な物語となっています(なんと第二部では、衰退していく帝国と戦うという、熱い展開になっていきます)。
100年後を予測することは可能
SFとしてもミステリーとしても楽しめるこの作品ですが、ぼくがもっとも面白いなと思ったのが、小さな事象の予想ができなくても、大きな事象の平均的な振る舞いは予想可能であるという「心理歴史学」という作者が考えた学問です。
天気予報では1週間先までの天気までしか、いまだに予想することができません。考えてみると私が生まれたおよそ30年前も1週間先までしか予想できていませんでした。どんなにコンピューターが発達しても、観測点が増えたとしても、1週間先までしか今後も予想できないはずです。これは予想をするときに用いる、物理式が、徐々に暴走するためです。うちわのような小さな風が、積分をすることで現実には表れないような、台風になってしまったり…ということがしばしば計算上起こります。このためなかなか小さな規模の予想は1週間程度でしか予測できません。
ただし、地球規模の平均的な振る舞いがどうなるか?については、100年先の予想をある程度することができるという考えから実際にモデル計算が行われています。モデルの中に歴史上にわかっている二酸化炭素の濃度の増え方等(古気候といいます)を入れ込みながら、このモデルを動かして積分を行い、10年先、50年先、100年先の地球の状態を予想します。
私たち人間も自然の一部ですから、この本でかかれている「心理歴史学」のように、コンピューターが進化したら、全体としての人類の行動の長期予想は可能になるのかもしれません。
非常に刺激的な本でした。高校生から好きな人はどんどん読めると思います。ぜひ手にとって見てください(^^)
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