猫はなぜ高い所から平気なの? スローモーションで解明!物理学が隠された「スーパー着地」の秘密
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
なぜ、猫はあんなに高いところから飛び降りても、しなやかに着地できるのでしょうか?まるで重力を感じていないかのようです。その秘密に、イギリスのBBCがスーパースローモーションカメラで迫りました。映し出されたのは、私たちが普段見ている「普通」のジャンプとは全く違う、驚くべき「物理学」でした。
ぜひ、こちらの動画をご覧ください。猫がいかにして着地の達人であるかが、一目瞭然です。



いかがでしたか? すごいですよね!この記事は、Lifehackerさんの「高い場所から落ちても、ネコが必ず足から着地できる理由」で知りました。
動画を見ると、猫が着地の「衝撃を吸収」するために、とても上手に体を使っていることがわかります。この「衝撃を吸収する」とは、一体どういうことなのでしょうか?
今日はこの猫のスーパーテクニックを、高校物理の「運動量」と「力積」という視点で、一緒に解き明かしてみましょう!
高校物理で解き明かす!猫の「スーパー着地」
物理学では、動いている物体の「勢い」を「運動量(うんどうりょう)」という言葉で表します。これは「重さ(質量)× 速さ」で決まります。高いところから落ちてくる猫は、地面に着く直前、大きな「運動量」を持っているわけです。
着地するということは、この「運動量」を一瞬にして「ゼロ」にする、ということです。
物体を止める(運動量を変える)には、「力積(りきせき)」というものが必要です。「力積」は、「力 × 時間」で計算されます。
猫が地面から受ける力を F、地面に足がついている時間を t とすると、以下の関係が成り立ちます。
mv − Ft = 0
(はじめの運動量)−(力積)=(あとの運動量。静止したので0)
これを変形すると、こうなります。
Ft = mv
(力積 = はじめの運動量)
ここが一番のポイントです。 猫が安全に着地するために変えなければならない「運動量(mv)」は、落ちた高さで決まってしまっているので、変えられません。もし、猫がカチン!と一瞬で(時間がtがとても小さく)着地してしまったらどうなるでしょう? 「Ft =(一定の運動量)」ですから、tが小さい分、足にかかる力Fがとんでもなく大きくなってしまいます。これが「衝撃」の正体であり、骨折などの大怪我につながるのです。
時間を稼ぐ、猫の超絶テクニック
そこで、猫はどうするのか? スローモーション映像をもう一度見てみましょう。猫は、足をピンと伸ばした状態で地面に近づいていきます。

はじめから足を曲げているわけではないのがミソです。そして、足が地面に着いた瞬間から、まるでアコーディオンのように、ゆっくりと関節を深く曲げていきます。



この「着地してから、ゆっくり体を沈み込ませる」動作こそが、物理学的に見て非常に賢い動きなのです。
これは、運動量がゼロになるまでの時間tを、できるだけ長く稼ぐためのテクニックです。 「Ft =(一定の運動量)」の式を思い出してください。猫は、体をしなやかに使うことで着地の時間tを大きくし、その結果、足が地面から受ける力F(専門用語で垂直抗力といいます)を小さくしていたのです。これこそが「衝撃を吸収する」ことの正体です。
身近な「力積」コントロール
このテクニック、実は私たちの身近なところにも使われています。
例えば、けん玉です。お皿で玉を受け取るとき、玉がお皿に当たる瞬間に、膝を使ってスッと体を下げますよね? あれも、玉が止まるまでの時間tを長くして、玉がお皿から受ける力Fを小さくし、バウンド(はね返り)を抑えるための動きです。もし膝を固定してカチンと受け止めたら、玉は跳ね返ってしまいます。
猫は、この「力積のコントロール」を、生まれながらの体と本能で完璧にやってのけているのです。何気なく見ていた猫のジャンプも、物理学の目で見ると、こんなにも精巧な技術に満ちているとは、驚きですね!
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