おもちゃで物理が好きになる!けん玉とミニ四駆に隠された「力学」の秘密(NSA第2回力学編)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「力学」と聞くと、なんだか難しい公式やグラフを思い浮かべて、ちょっと身構えてしまいませんか? でも、もし物理が「おもちゃ」や「公園のブランコ」、さらには「救急車のサイレン」の音の中に隠れているとしたら…? 物理は、私たちの身の回りで「なぜ?」を解き明かす、とてもエキサイティングな冒険なんです。

昨日は、まさにそんな物理の「なぜ?」を全身で体感する実験講座、ナリカサイエンスアカデミー(略称NSA)の第二回目が開催されました!今回のテーマは「力学編」。波動編の積み残しもありつつ(笑)、たくさんの実験をご紹介させていただきました。

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中には、このブログを見て遠く新潟から駆けつけてくださった方もいて…!本当に胸が熱くなりました。第1回目から引き続き参加してくださった方も多く、皆さんが目を輝かせて楽しんでおられる姿がとても印象的でした。

実験は「なぜ?」の宝庫

当日ご紹介した実験はたくさんありますが、特に反響が大きかったもの、そして日常と科学がつながる瞬間のいくつかをご紹介します。

けん玉で「無重力」体験?(相対速度)

講座では、なんと日本の伝統的なおもちゃ「けん玉」も使いました。ただ遊ぶのではありません。

玉をまっすぐ引き上げて剣先に刺す「とめけん」をするとき、玉が一瞬フワッと浮いて見えませんか? あれこそが物理です!

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(これが結構難しい…!練習あるのみです)

手(けん)と玉が同じ速度で上昇している間、手から見れば玉は「止まって」見えます(=相対速度ゼロ)。重力を感じない、まるで宇宙ステーションのような状態が、ほんの一瞬、手元で生まれているんです。この「鉛直投げ上げ運動」と「相対速度」の感覚を、皆さん夢中になって体感していました。

ハイジのブランコとエネルギー(力学的エネルギー保存)

アニメ『アルプスの少女ハイジ』のオープニングで、ハイジが漕ぐあの巨大なブランコ。あれも力学の格好のテーマです。

一番高いところ(位置エネルギー最大)から、一番低いところ(運動エネルギー最大)へ。エネルギーが形を変えながら移り変わる様子(力学的エネルギーの保存)を、スマートフォンのアプリ「モーションショット」で連続写真のように撮影し、その軌跡を解析しました。

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「なぜ一番下で一番速くなるのか?」が、エネルギーという目に見えないものの流れとして理解できると、公園のブランコの見え方も変わってきますよね。

摩擦ゼロの世界?(慣性の法則)

「物体は、力を加えられない限り、同じ運動を続けようとする」。これが慣性の法則(ニュートンの運動の第1法則)です。

でも、地球上では「摩擦」が邪魔をして、動いているものもいつか止まってしまいます。そこでホバークラフトやドライアイスの登場です。

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空気や昇華した気体(二酸化炭素)で机からわずかに浮くことで、摩擦を極限まで減らせます。そうすると…? 押された物体は、まるでカーリングの石や、宇宙空間の探査機のようにスーッと滑り続けます。この「不思議な」光景に、皆さんから驚きの声が上がりました。

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「おもちゃ」と「アプリ」が最強の教材に

物理実験は、高価な機材がなくてもできます。むしろ、身近なものが最高の教材になります。

ワイルドミニ四駆とエアゼロ

タミヤの「ワイルドミニ四駆」や「エアゼロ」。これらのおもちゃは、実は運動の観察に最適です。とくにワイルドミニ四駆は動きがゆっくりなので、力がどう伝わって動くのかをじっくり観察できます。

何より素晴らしいのはその耐久性! 生徒が多少乱暴に扱っても(笑)、落としても壊れないタフさが魅力です。 (僕が紹介した青いBULL HEADについてはこちらでも解説しています)

スマホアプリ「トーンジェネレーター」

波動編で積み残していた「ドップラー効果」の実験。救急車が近づくときと遠ざかるときで音が変わる、あの現象です。これを体感するために使ったのが「トーンジェネレーター」というアプリ。スマホから一定の音を出しながら動かすだけで、音の変化がわかります。アンドロイドにも同様のアプリがありますよ。

また、おすすめのDVD「日常にひそむ数理曲線」もご紹介しました。日常の風景に隠された数学や物理の法則を美しく見せてくれます。

実験準備の裏側(受講者の方への補足)

(ここからは受講生の方向けのメッセージも含みます)

昨日は足元の悪い中、本当にありがとうございました!またもや、用意したものを全て消化することができませんでした…(人参など、まだまだ紹介したいものが!)。これらは来年度の講座など、別の機会にご紹介できればと思います。

当日お話しきれなかった補足情報です。「どうやって準備してるの?」というご質問もいただきました。

ドライアイスは、神田の「旭氷業」さん(https://www.iceshop.co.jp/)で購入しました。HPもお店も素朴で、とても良い雰囲気です(笑)。皆さんも、お近くの氷屋さんを一つチェックしておくと便利ですよ。だいたい1kg 500円くらいで、物理だけでなく化学実験でも大活躍します。

けん玉は、なんとダイソーで100円でした。プラスチック製でも十分使えます。

高価な実験器具も大切ですが、僕は100円ショップの材料や、ときには自腹で買ったおもちゃ(笑)も多用します。大切なのは、「あ、これ面白いかも」と思ったらすぐに試せるフットワークですよね。

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