なぜ空は青く、夕焼けは赤い? 答えは泡石鹸とペットボトルで解き明かせる!
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「空はなぜ青く見えるの?」 「じゃあ、夕焼けはなぜ赤いの?」
理科の教員なら、(そして、おそらくお父さんお母さんも)一度は子どもに聞かれたことがある質問ではないでしょうか。そんなとき、言葉や図を使って「光の散乱(さんらん)」について説明をするのもよいのですが、やはり実際に見せてしまうのが手っ取り早いですよね。何より、生徒(子ども)たちにとっては、理屈よりも「わぁっ!」と感動する体験こそが、強い記憶となって残ると思うのです。
これまで、傘袋(かさぶくろ)を使った散乱の実験を科学のネタ帳でも紹介してきました。
しかし、この方法だと「夕日の赤い空」は見えやすいのですが、「昼の青空」を同時に見せるのは、少しむずかしいところがありました。どうしても「赤」に目がいってしまって、「青」がよくわからないんですね。「どうにかして、あの感動的な青と赤のコントラストを、同時に見せられないか…」そう思って、ああでもない、こうでもない、と いろいろ理科室で実験をしていたところ、
一気にどちらもうまく見せる方法について、たまたま発見をしました! ペットボトルと「あるもの」を使うだけで、驚くほど美しい「空」が作れます。みなさんにご紹介したいと思います!
科学のレシピ
用意するもの:
ペットボトル(1.5L)、泡ハンドソープ(キレイキレイ)、大きめのLED懐中電灯(ペットボトルのおしりが載るようなサイズ)

アマゾン:懐中電灯
ワックスや石鹸などいろいろ試したのですが、泡ハンドソープが作る微細な粒子のサイズが、どうやら光の散乱にベストマッチのようで、個人的には一番だと思っています。
手順
①ペットボトルに水を入れて、キレイキレイ(原液)を1~2プッシュほどいれてよく振ります。うっすら全体が白っぽくなるくらいがベスト。入れ過ぎに注意!
②LED懐中電灯の上にペットボトルを置きます。
③部屋を暗くして、LEDをつけます。
④ペットボトルの向きを横においてみる。
結果
まず、ペットボトルを「立てて」置いてみます。光源に近い下のほうは、水溶液がぼんやりと青白く光って見えます。

そして、光源から遠い「上」にいくほど、

黄色から赤っぽく見えます。

真上から見るとわかりやすい。これが「夕焼け」の色ですね。

このように青から赤まで見えるのですが、肝心の「青空」がまだぼんやりしていて、いまいち差がわかりにくいですよね。そこで、ペットボトルを横にしてみました。すると…!こんなに綺麗に見えるんです。

近寄ってみると・・・。

驚きました!側面から見た「青」が、くっきりと空の色に見えますよね! そして光源の向こう側は、見事に「赤」に染まっています。
なぜペットボトルで「空」を再現できるのか?
この実験は、壮大な地球の空で起こっていることを、小さなペットボトルの中で再現しています。主役は、LEDの「光」と、石鹸の「微粒子」です。
- キレイキレイの役割
水に溶けた石鹸の微粒子は、地球の「大気(空気の層)」にあるチリや分子の代わりをします。 - 「青空」の正体(散乱光)
太陽光(LEDの光)が地球の大気にぶつかると、光は四方八方に散らばされます。これを「散乱」といいます。このとき、波長の短い「青い光」は、波長の長い「赤い光」よりも激しく散乱される性質(レイリー散乱)があります。ペットボトルの「側面」から青く見えたのは、散乱した青い光が私たちの目に届いたから。これこそが、昼の空が青い理由です。 - 「夕焼け」の正体(透過光)
では、なぜ夕焼けは赤いのでしょう?夕方、太陽は地平線に沈みかけます。すると、太陽光は昼間よりもずっと「長い距離」の大気(空気の層)を通ってこなければなりません。長い旅の途中で、散乱しやすい「青い光」はあちこちに散らばってしまい、私たちの目に届きにくくなります。その結果、散乱しにくく、まっすぐ進む力の強い「赤い光」だけが、大気を突き抜けて私たちの目に届くのです。実験で、光源(LED)の真上や、ペットボトルを横にしたときの向こう側が赤く見えたのは、水溶液という「大気」を長く通過してきた「赤い透過光」を見ていた、というわけです。
ペットボトルを「立てる」と、下(昼)から上(夕方)への色の変化が、「横にする」と、「昼の青空(側面)」と「夕焼けの赤(透過光)」の対比が、劇的にわかりやすくなります。まさか、ペットボトルという硬い素材で見せたことが、こんなにも美しいコントラストを生み出すとは、うれしい副産物でした。これなら生徒の班に1つずつ用意をしても、 LED懐中電灯だけなので、数千円で済みそうです。
ご家庭でも簡単に試せる「手のひらサイズの地球」です。ぜひやってみてくださいね!!
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