LEDが光らない! 失敗回路に隠された「電気の道」のナゾ【中学理科・電子工作入門】

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「チカッ!」

小さな光の粒、LED。今や信号機からスマートフォンの画面、部屋の照明まで、私たちの生活はLEDなしでは成り立ちませんよね。この小さなLEDを、自分の手で、自由に光らせることができたら…? まるで魔法使いになった気分です。

今日は、科学部の中学生たちと「ブレッドボード」という便利な道具を使って、電子工作の第一歩に挑戦したお話です。

ブレッドボードを使えば、はんだ付けなしで、部品をプスプス差し込むだけで簡単に回路が組めるはず…なのですが、毎年必ず「先生、光りません!」という生徒が出てきます。

実は、この「光らない」という失敗こそが、目に見えない電気の秘密を解き明かす最大のヒントなんです。今日は、そんな「よくある失敗例」とその理由(わけ)を、一緒に探っていきましょう!

まずは相棒を知ろう!「ブレッドボード」とは?

実験の前に、まず主役の「ブレッドボード」について少し。日本語に直訳すると「パンの板」ですが、もちろんパンではありません(笑)。昔の技術者が、パンを切るための板(Breadboard)に釘を打ち、そこに部品を固定して実験していた名残だそうですよ。

この板のすごいところは、「部品を差し込むだけで、目に見えない内部の配線が自動的につながる」ことです。

ただし、どう繋がっているかを知らないと、必ず落とし穴にはまります。ブレッドボードの内部には金属のクリップが隠されていて、だいたい以下のようになっています。

  • 中央部分:タテ方向(5つの穴)がグループとして繋がっている。
  • 両端のライン:ヨコ方向(長いライン)が「電源ライン」として繋がっている。

まずはこの「隠された道」を知ることが、成功への第一歩です。

科学のレシピ:LED点灯回路

【用意するもの】

  • ブレッドボード
  • ジャンパーコード(配線用の線)
  • LED(発光ダイオード)
  • 抵抗(今回は68Ω(オーム)を使いました)
  • 電池(3ボルト)
  • 電池パック

【作り方】

  1. ブレッドボードの「隠された道」が、本当に説明通りか、テスター(導通チェッカー)を使って調べる。
  2. ブレッドボードに、LEDと抵抗を「直列接続」(数珠つなぎ)にして、電流が流れる回路を組んでみる。
  3. 電池をつなぐ。…チカッ!光りましたか?
  4. 光った生徒は、光らない生徒のものを点検して、班全員のボードが光るように助け合いましょう。

なぜ光らない? よくある失敗例クイズ

さて、ここからが本番です。下の回路を見てください。これは、生徒たちがやりがちな「光らない」回路の代表例です。

キャプチャ

これではLEDは光りません。さて、どこが間違っているのでしょうか?

(条件:緑のコードは電池のプラス極に、黄色のコードは電池のマイナス極に接続されています。LEDの足の向き(プラス・マイナス)も、抵抗の値も間違っていません。)

…分かりましたか?

【答えと解説】

正解は、「LEDと抵抗が、ブレッドボードの同じタテの列に刺さっている」ことです。

先ほど説明したように、ブレッドボードの中央部分は「タテ5つの穴」が内部で繋がっています。この回路では、LEDの足と抵抗の足が「同じ道(タテの列)」に並んでしまっています。

これでは、電気がLEDを通って抵抗に流れる「直列」になっていません。電気が部品を飛び越えてしまっている(ショートしている)か、あるいは単に次の部品へ道が繋がっていない状態です。目に見えない「道」を意識しないと、こうして「繋いだつもり」になってしまうんですね。

あぶない! 飛ばないでLED!

では、次の失敗例はどうでしょうか。簡単な回路なので、次の写真のように配置をしてしまう生徒も出てきます。

キャプチャ2

緑のコードは電池のプラス極に、黄色のコードはマイナス極につながっています。これは間違っているだけではなくて、実はちょっと危ない回路です。高校の授業で、電源装置(電圧を自由に変えられる機械)を使って実験をしていた時、電圧を高くした瞬間、同じような回路を組んだ班のLEDが…「パンッ!」と音を立てて弾け飛んだことがありました。冷や汗をかきました!

【なぜ危険だったのか?】

この回路、よく見ると電池(緑のコード)から出た電気が、「抵抗」を通らずに直接LEDに流れ、そのままマイナス極(黄色のコード)に戻っています。LEDは精密な電子部品。決められた量以上の電気が流れると、耐えきれずに壊れてしまいます。

「抵抗」は、いわば電気の流れを調整する「ダム」のような大切な役割をしています。LEDがちょうどよく光るように、3Vの電圧に対して「68Ω」という強さで流れを適切にせき止め、守ってくれていたのです。

この回路では、その「ダム」が機能していないため(ダムを迂回しているため)、3Vの電気がほぼ丸ごとLEDに襲いかかり、耐えきれずに壊れてしまった、というわけです。

失敗は「なぜ?」の宝庫

実験では、班に1人は「光らない!」という回路が生まれます。でも、それは失敗ではなく、絶好の学習チャンスです。その回路をみんなでチェックして、「どうすれば光るのか?」「なぜこれではダメなのか?」を考えることこそ、目に見えない電気の流れを理解する一番の近道になります。

今日は科学部の中学生たちと作ってみましたが、コツを掴んだ中学3年生が、うまくいっていない仲間に「ここの道が繋がってないよ」「あ、それだと抵抗が仕事してないよ」と、自分の言葉で教えて回っていました。自分で理解し、それを言葉にして他人に教える。これ以上ない「学びの連鎖」の光景に、とても嬉しくなりました!

次回は、この回路に「スイッチ」を入れて、電源をON・OFFできるような回路に発展させてみようと思います。みなさんはどんな実験をしていますか?ぜひ教えて下さいね。

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