金髪の物理学者と潜入!日本が誇る巨大科学基地「J-PARC」で宇宙のナゾに迫る
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「SF映画のような巨大装置」や「宇宙の謎を解く鍵」と聞いて、皆さんはどんな場所を想像しますか?
目には見えないほど小さな「素粒子」の世界を追い求め、宇宙の始まりに迫ろうとする研究者たち。そんな、まるで別世界から飛び出してきたような博士と一緒に、日本が世界に誇る「科学の聖地」を訪ねる――。今回は、私が企画した特別な課外講座の様子を、興奮そのままにご紹介します!
巨大な顕微鏡?加速器が拓く未知の世界
皆さんは「加速器(かそくき)」を見たことがありますか?こちらは国立科学博物館にある加速器のモデルです。金属製のボールにタイミングよく磁場を与えて押し出していくことで、ボールがどんどん加速されていく様子が再現されています。
これと同じ原理を究極まで突き詰め、とてつもなく巨大にしたものが、茨城県東海村にある「J-PARC(ジェイパーク)」。ここは、目に見えないほど小さな粒子を光速近くまで加速させ、物質の根源や宇宙のナゾに迫る、いわば「世界最大級の顕微鏡」のような場所なのです。

今回、私たちを未知の世界へといざなってくださったのは、「金髪の素粒子物理学者」多田将(ただ しょう)先生です。先生のお話は抜群に面白く、鋭い科学観と独自の人生観を持っており、一度聞くと誰もがその魅力に引き込まれてしまいます。
一本の「坂道」から始まった、教科を越える学び
この講座は、教科書の中だけでは完結しない本物の「知」に触れてほしいという想いで、2007年から有志の教員で行っている「特別教養講座」の一環です。
面白いことに、すべての始まりは「坂道」でした。地理の先生が「東京の坂を巡る」というマニアックな講座を開講した際、「浮世絵の景色と今の景色を見比べよう(国語科)」「江戸の大火が広がった原因は風と地形の関係では?(理科)」といったアイデアが次々と合流。
地理、歴史、国語、そして理科。一つの「坂」から始まった学びが、教科の壁を越えてダイナミックにつながったのです。このワクワクする体験が、今回のJ-PARC見学へとつながりました。
「物理学者は『桁』しか気にしない」—驚きの事前講義
見学に先立つ事前講義。参加した中高生24名の中には「素粒子って何?」という生徒も多くいました。多田先生は原子の構造から、今回の主役「ニュートリノ」についてまで、丁寧に解き明かしてくださいました。
特に印象的だったのが、先生がさらりとおっしゃった「人間を1mとすると……」というたとえ。生徒たちが「人間が1m?!」と驚くと、先生はニヤリと笑ってこう続けました。
「物理学者は『桁(けた)』しか問題にしないんです」
ミクロの世界や宇宙を扱う物理学者にとっては、数センチの差よりも、「10倍なのか100万倍なのか」というゼロの数(オーダー)こそが本質なのだ、というお話。この大胆なスケール感に、生徒たちの視野は一気に宇宙規模へと広がったようでした。
ちなみに、ニュートリノ(neutrino)は、イタリア語で「ニュート(中性)+リノ(小さな)」という意味。語源を知るだけで、ぐっと身近に感じられますね。
いざ、巨大科学の心臓部へ!
8月20日。いよいよ現地、茨城県東海村のJ-PARCへ向かいました。普段は絶対に入れない施設の内部に、生徒たちの興奮も最高潮です。
まず訪れたのはBNCT。ここは中性子を使ってがん細胞だけをピンポイントで攻撃する、最新治療の研究施設です。科学が「いのち」を救う最前線に、皆真剣な表情で見入っていました。
その後、日本最初の原子炉JRR-1を見学し、いよいよメインの「ニュートリノ1次ビームライントンネル」へ。地下深くに広がる巨大なトンネルの、圧倒的な大きさと静けさ。ここで作られたニュートリノのビームが、295km離れた岐阜県の「スーパーカミオカンデ」へと打ち込まれているのです。その壮大な実験スケールに、ただただ圧倒されるばかりでした。
BNCTの加速器の様子
J-PARCの中性子を使った実験棟の様子
ニュートリノモニター棟の様子
「教える」から「つなぐ」へ—新しい学びのカタチ
今回の講座で私たち教員が徹したのは、講師と生徒の間をスムーズに結ぶ「プロデューサー」としての役割でした。
本物の専門家が持つ圧倒的な「熱量」や「思考法」に触れることで、生徒たちの目はキラキラと輝き、質問が止まらなくなりました。私たち自身も、生徒と一緒に新しい世界を垣間見ることができ、新鮮な感動を味わいました。
これからも、専門家を招いた講座を企画し、生徒たちに「本物の科学の鼓動」を届けていきたい。新しい学びの形を求めて、私たちの挑戦は続きます!
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