ベクトルの成分表示を使いこなす!斜方投射と微積分その3
高校物理と微分積分について
高校物理の検定教科書では微積を使わないで説明がなされています。数学の進度の関係もあるため、そのようになっていますが物理では微積をつかって考えたほうがスッキリとわかりやすく説明できることも多くあります。
今回は平面上の運動について、微積を使って考えてみたいと思います。
斜方投射と微積分
地表面付近にある物体には、一定の重力mgが鉛直下向きに「のみ」働きます。水平方向には働きません。運動方程式によれば、力の働いた方向にのみ、速度変化が起こります。第1回の等速度運動と微積、第2回の等加速度運動と微積の回をあわせてみます。
まず、角度θ、初速度v0で、原点から投げ出された物体について考えてみます。この速度ベクトルは、x軸方向にv0cosθ、y軸方向にv0sinθの速度成分を持っています。またこの物体にはたらく力は、x軸方向は0、y軸方向にのみ−mgです(鉛直上向きを正としました)。
初期位置(0, 0)
物体の初速度(v0cosθ,v0sinθ)
物体に働く力(0, −mg)
このことから運動方程式をそれぞれの成分ごとに作ってみましょう。
それぞれの成分ごとに、1回積分をします。まずはx成分からみていきましょう。参考になるのは、第1回めの記事ですので、そちらも合わせて御覧ください。
x成分
については、と微分表記をすることができます。それでは積分をしてみましょう。
※ C,C’は積分定定数
時刻0のときの速さをv0 cosθなので、C’= v0 cosθとなります。よって
vx=v0 cosθ
となります。
同様にして、今度はx方向の速度vx=v0をもう一度積分をして、変位xを導きます。
※C’’は積分定数
となります。時刻0のときの位置を初期位置を原点スタート0とすると、0=C’’となります。このことから、
x=v0cosθt
となります。
y成分
y成分についても、x成分と同様に計算をしてみてください。もし困ったら、第2回目をご覧ください。1回積分をすると、
速度が出ます。もう1回積分すると、
と変位が求められます。このようにして放物運動の式を求めることができます。
放物線と数式
xとyの式から、時間tを消去してみてください。x=v0cosθtをtについて解くと、
これをyの式に代入すると、
となり、定数a,bとすると、
となり、この概形をグラフに描くと
となります。
このように、速度や加速度などのベクトル量は成分で分けて表示をすることができます。ですから、3次元の運動であっても、成分別に計算をすることができます。このため、1次元の計算さえできてしまえば、組み合わせでどうにかなるところが面白いところです(^^)。
次回に続きます。
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