見えない電気の「タメ」を激写! センサーで暴く「自己誘導」の正体
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
スイッチを「オン!」にしたら、電気が「パッ!」と流れる。豆電球ならすぐに光りますよね。これが私たちの「当たり前」です。でも、もし回路の中に「あまのじゃく」な部品がいたらどうでしょう?
「今から電気を流すぞ!」とスイッチを入れても、「ちょっと待ってよ!」と、すぐには電流が流れてくれない…。そんな不思議な性質を持つ部品、それが「コイル」です。普通の抵抗器だけなら、スイッチを入れた瞬間に電流は最大値に達します。しかし、回路にコイルが入っていると、電流はすぐには流れず、じわじわ~っとなだらかに増えていくのです。
この「ちょっと待って!」と流れを妨げる現象は「自己誘導(じこゆうどう)」と呼ばれます。
コイルの「あまのじゃく」な性格とは?
では、なぜコイルはそんな振る舞いをするのでしょうか?それは、コイルが「変化を嫌う」性格だからです。スイッチを入れると、電流が流れ始め、コイルの周りに「磁界(じかい)」が発生します。コイルは、この「磁界が新しく発生する(=変化する)」ことを嫌がります。そこで、その変化を打ち消そうとして、なんと「逆向きの電圧(逆起電力)」を自分で発生させてしまうのです!この逆向きの電圧が「ダム」のような役割をして、流れ込もうとする電流を一時的にせき止めます。だから、スイッチを入れてもすぐには電流が最大にならず、ゆっくりと増えていくんですね。
目に見えない「タメ」を捕まえたい!
ただし、この自己誘導という現象、実はほんの一瞬で終わってしまいます。私たちが目で見てわかるような電流計をつないでその様子を確認しようとしても、針が「グッ」と動くだけで、この「じわじわ~」を観察することは、まずできません。
そこで今日の授業では、この目に見えない「タメ」の瞬間を捕まえるため、ナリカの「イージーセンス」という科学センサーを使って、電流の変化をグラフで可視化する実験を行いました。今日はその実験について紹介します。
科学のレシピ:コイルの「タメ」を激写しよう
準備するもの
- 抵抗(10Ω)
- 電池2本(3V)
- コイル(0.5H)
- トグルスイッチ
- イージーセンス(電流センサ)
イージーセンスは実験で簡単に使えるセンサー機器です。PCに接続をして使うものを使って実験をしました。プロジェクタにつなげば、生徒と確認をしながら実験をすることができます。電子黒板につなぐと、なおさらよいですよね。
手順
1 コイル、電池、抵抗、イージーセンス(電流センサ)をつないで回路を作る。
2 測定時間は2秒、測定間隔は500μs(マイクロ秒 ※1秒の2000分の1!)に設定。
3 トリガー(測定開始のきっかけ)は50mAに設定。プレトリガーは50%としました(これにより、トリガーが入る前の「スイッチOFF」の状態も記録できます)
実験結果:見えた!電流の「なだらかな坂」
実験を行ってみると、次のようなグラフになりました。
見てください!グラフの真ん中あたりでスイッチを入れていますが、電流がすぐに「パッ」と最大値になっていません。まるでなだらかな坂道を登るように、じわじわと電流値が増加しているのがわかりますね。これがまさに、コイルが「自己誘導」によって「ちょっと待って!」と抵抗している瞬間の姿です。やがて電流値が一定になると(グラフの右側)、磁界の変化がなくなるので、コイルも抵抗するのをやめ、単なる導線として振る舞います。
コイルを入れない場合(抵抗だけの回路)と比べると、その違いは一目瞭然です。もしコイルがなければ、グラフはスイッチを入れた瞬間に「カクン」と直角に立ち上がります。このように、目では追えないほど短い時間で起こる現象や、目に見えない力、電流の流れも、センサー機器を使うことで「可視化」できます。
教科書の中のグラフが、目の前でリアルタイムに描かれる様子を見ることで、生徒たちも「ああ、本当なんだ!」と、現象をより身近に感じることができ、理解度がぐっと上がるようでした。
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