パートナー方式の教授法は難しくない!取り入れ方マニュアル

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パートナー方式の教授法

パートナー方式の教え方を導入した際に、困ったこと、わかったこと、具体的な実践方法についてまとめました。

パートナー方式の教え方とは?

あなたの授業で寝ている生徒はいませんか?

 

ここだけの話、ぼくの授業ではたくさんの生徒が寝ていました

 

ああ、恥ずかしい・・・。

 

ぼくは女子校の教師です。彼女たちがもっとも苦手な物理を教えています。

授業では理解することをあきらめて、寝ている生徒も多く悩まされました。

 

そんな中、様々な試みをしたのですが、

話し合いや教えあいの時間を意識的に作るなど、

グループワークに一定の効果があることに気が付きました。

 

いろいろ試していく中で、寝る生徒が激減し、生徒が授業について

 

「楽しい!」

 

と言ってくれるようになりました。

 

でもこのときのぼくは、前よりもエネルギーをつかった授業はしていません。

まえよりも授業後につかれていません。魔法のようで、ぼくも授業がとても楽しくなりました。

 

そんな手応えをつかみつつあるなか、「パートナー方式の教え方」

という教授法に出会いました。

 

そうしたらそれがまさに自分のやっている(た)活動が

その一種なのだということがわかりました。

 

パートナー方式の教え方とは、Marc Prensky先生が

提唱されてる教え方です。

 

教師から生徒への知識の教え込み教育ではなく、

生徒が主体的に学ぶ学習活動を指します。

そして本書によれば、パートナー方式の場合、

 

P20

授業の責任は完全に生徒個人、または生徒の責任にある

デジタルネイティブのための未来教室

にあります。

 

有名予備校の先生の戦国無双な教授法ではなく、

ちょっと従来の授業とは違うのがわかってきたのではないでしょうか。

 

 そもそも知識体系を作り上げるのは生徒自信であり、教えこむものではありません。

生徒の中に眠っているもので(物理では身の回りにあるもので)、

それらを系統的に組み立てあげることができるように「サポートする」のが教師の役割です。

 

パートナー方式という名前の「パートナー」とは

教師の立ち位置にあります。

 

「でも、横文字だし、技術的に難しいんじゃ・・・。」

 

そんなことはありません。

 

教師は落語家ではないので話し上手でなくても大丈夫。

そしてどんな教師も、ちょっと授業のやり方を変える勇気を持つだけで、

次の授業から取り入れることができます。

 

しかも、しらずしらずのうちに実はもう取り入れている先生も多くいます(私もそうでした)。

そんな先生方も少しやり方を変えるとより高い効果が得られるでしょう。

 

パートナー方式の教授法は、明日からすぐに取り入れられ、

すぐに大きな効果がえられる教育手法です。

 

ぼくは物理をいっしょに教えている先生と同時に取り入れましたが、

非常にうまくいくようにないました。

 

問題の解説も全部教師がする必要がなくなり、

生徒の個々人の様子がよくわかるようになるという良いことずくめです。

 

私達も初心者からはじめましたので、

そのさいの導入方法について、この1枚のページで説明します。

 

理論などは後回し。実際におこなった体験をもとに書いています。

 

騙されたと思ってぜひ実行してほしい技術の1つです。

 

すぐにできるパートナー方式の授業の始め方

次の2つをまずははじめてみてください。

 

ポイント1 机の並べ方

普段の授業の形は例えばこのようにな形なのではないでしょうか。

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 この形を崩して、3〜4人のグループを作ります。 一例として私がちょうどいま組んでいるグループの形を示します。

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 この形の「まま」授業をおこないます。これだけで随分雰囲気が変わるでしょう。

 

グループの人数は5人だと話し合いがうまくいかない場合があります。

2人だと気が合わないことがあります。4人か3人にします。

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 ここで一番のポイントは、意外かもしれませんが、

机をぴったりとつけること!

 

これがパートナー方式の教え方の要となります。

ぜったいに机はぴったりとくっつけるように指導をしてください。

 

また3人のグループを作るときには、この形を逆にしないようにしてください。

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 この形にすると生徒が教師に対して背中を向ける格好になります。

 

「この形のまま授業をしても、グループの顔が気になって授業に集中できないんじゃ・・・。」

 

そう思うかもしれませんが、大丈夫です。パートナー方式の教え方では、

教師が一方的に教える一斉授業を極端に減らすように準備をするためです。

 

また『デジタルネイティブのための近未来教室』の中では、次のようなパターンの

座席も紹介されてました。

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教師が中心に机をもっていくパターン。生徒は教師を囲む。

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生徒が和になるパターン。通常の授業というより討論などを行う場合に適している。

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パソコン教室の配置。パソコンの画面が内側を向いているため、

教師が別のことをしているかすぐにわかる。

また生徒同士で相談しながら進めることもできる。

 

また一斉授業ではパワーポイントや演示実験、

視覚教材などで興味付けをおこなうのみだからです。

この点については後述します。

 

ポイント2 授業展開

パートナー方式の教え方は次のような授業展開で進んでいきます。

 

1 教師の一斉授業+生徒に刺さる質問

2 生徒が主役となり、グループで考える時間

3 全体への発表や小テストなどのフィードバック

 

「3」までいったら、「1」に戻ります。これが50分授業では2回くらい繰り返されます。それぞれの展開についてコツを説明します。

 

1 教師の一斉授業+生徒に刺さる質問

一番のコツは長く話さないことです。 ここは短ければ短いほどいいのがポイントです。

基本的には長くても10分以内の範囲におさめて、生徒に問題を渡したり、発問をしたりして考えさせる活動にうつります。

できるだけ「2」の活動に時間をかけましょう。

 

アクティブラーニングなどを取り入れて、ICT(情報通信技術)などを活用すると効果的です。

 

ICT機器に関しては高価な電子黒板やタブレットなどを使う必要はありません。

プロジェクターとパソコンでスライドや写真を見せて簡単に説明するだけでも良いんです。

理科の授業なら演示実験も効果的です。とにかく教師からの一方的な教えの時間を減らすことが目的です。

 

そういった意味ではICTさえも必要ではなく、効率的な板書による教えこみでも十分です。

そして海外の大学ではこの時間をかぎりなくゼロに近づけるために、

家庭学習の時間をつかった反転授業(最後の参考サイトをごらんください)なども活発に行われているようです。

 

そして最後に効果的な質問をして生徒にバトンを渡します。

 

2 生徒が主役となりグループで考える時間

 

この時間のコツは、

「例えば20分時間をあげるので、考えてみて下さい。」

 などと指示をして、生徒から手を離してしまいます。

 これではザワザワして授業にならないのでは、、、と怖い所ですが、思い切って生徒にまかせてみましょう。

 

ぼくもはじめはこれがとてもこわかったです。

 

教師はこの間、机間巡視をしますが、グループに近寄っていって、

 

「進んでる?」

「終わったらわからない子に教えてあげて?」

 

などと声掛けをおこなっていきます。

グループ全体が悩んでいたら教えてあげても構いません。

グループの中に出来ている生徒がいるのに、

他の生徒がわかっていない場合は、

「あっているよ!教えてあげて」

と声かけを行います。

こうすることで生徒が「教師」になっていきます。

 

ここでやってはいけないことは、求められてもいないのに、

一人ひとりに解説をしたり、答えを教えることです。

 

あくまで生徒の中で、生徒同士で考えさせることがポイントです。

ほっておけば、生徒どうしで話しあったり、

教え合ったりして、答えに近づこうとして、活発に学習をはじめます(ビックリ!)。

 

結局は生徒はテストでは生徒自身が答えにたどりつかなければいけないですし、

または仲間同士で協力して答えを出す作業が社会では大切だからです。

こういった力を身につけさせることが

パートナー方式の教授法では可能です。

 

3 全体への発表や小テストなどのフィードバック

 

フィードバックではグループを通して生徒に問題について聞いたり、

教師が一例として解法を紹介するなどの活動(フィードバック)、または小テストなどを行います。

 

またちょっとしたコツですが、「3」でフィードバックすることを「2」の話し合いの前に言っておくと、

話し合いの目的が明確になり活発になります。

 

この繰り返しがパートナー方式の教え方です。簡単でしょう!

 

パートナー方式の教え方の実践例

例として私の今日の授業の「導入・展開・まとめ」について紹介すると、

 

導入時

 

演示実験「円錐振り子運動」を見せる。興味付け。

 

展開時

 

一斉講義

・慣性力について10分間、講義・動画教材などをつかって説明

・慣性力についての問題を配布

 

グループワーク

・問題を解いている間に机間巡視

(生徒はワイワイ、ガヤガヤ)

・ちょっかいを出す。

「良い答えだね〜」

「これは運動方程式?さっきと何が違うと思う?」

などなど

 

まとめ

解説にいこうとしたが時間になったので次回に持越し。

 

という流れでした。

 

あれこれってアクティブラーニングとか探究活動とか??

そうなんです。今回紹介したのはパートナーシップの教え方の初級編です。

 

パートナーシップの教え方の上級編にあたるものが、

本書によれば、

・プロセス思考型探求学習

・チャレンジ学習

・アクティブラーニング

・クエスト型学習

なのです。

 

難しいところもあります!

 パートナー方式の教え方は上記のように簡単に導入できます。

そしてすぐに効果がでるでしょう。クラスに活気が戻ってきます。

しかし実際にはじめてみると難しい所にもぶつかっていきます。

 

こんなに良い所があるんだということは様々なサイトに書かれていますが、

難しいところについてもあえて伝えたいと思います。

 

 まず1つ目に、集団の中にはコミュニケーションをとらない生徒(苦手な生徒)が少なからずいるということです。

そのような生徒が多くいるクラスでは、たとえグループをつくって、

席をつけてもなかなか話し合いは進みません。

 

かといって軌道修正をしようと一斉授業を多くしようとしても、

席自体は教師のほうを向いていませんから、

一斉授業も難しくなってくるという面があります。

 

教室は静まり返り、なんとなく、静寂を崩すのが不自然で、

生徒どうしで話しをするのもためらわれる空気になることもあります。

よりいっそうグループワークの意味がなくなります。

 

対策としては、机をピッタリとつけて話し合いやすい空気を作ることはもちろんですが、

グループワークをするさいに、教師がちょっかいを出してまわり、

教師が教えている姿を見せたり、教師が声を出すことで、

話しても良いんだという空気を生み出すことです。

 

席をたって他のグループの友達と交流してもいいなどと自由な空気を出すことも大切です。

このようにしたところ、徐々に話し合いがはじまりました。

 

また生徒に目的をしっかり意識させないまま、

つまり生徒に投げかける「質問」がダメな状態で、

はじめてしまうとうまくいかなくなります。

 

ダメな質問は、YES、NOで答えられるような単純な質問です。

物理の例で申し訳ないのですが、そういった問いかけではなく、

「なぜ鉛直バネ振り子の単振動の場合、位置エネルギーがエネルギー保存に入ってこないのか?」

「なぜ万有引力の位置エネルギーは負になるのか?」

 

など、ちょっと難しくやりがいのあるテーマに取り組ませます。

 

また単に席をつけて問題を解くような活動をしても、

何回かはうまくいっても、マンネリ化をしてきてきます。

生徒同士で仲良くなったり、甘えも生まれて、

関係のないおしゃべりが横行、授業が崩壊するかもしれません。

 

対策としては、グループワークをしたあとに、

小テストをやると宣言してから、グループワークをはじめることや、

グループワークのあとに発表させるなど、

生徒にグループワークをしたあとのアウトプットの目標をしっかりと意識させることによって、

議論が活性化します。

 

教師はつねに良い質問をストックしておく必要があります。

この生徒への問いかけが一番の授業準備になります。

 

従来の授業との違い

上記のようにパートナー方式の教え方は難しいところもあります。

それでも私はパートナー方式の教え方は突破口だとおもいます。

 

従来の授業では、予備校の衛星授業のように、膨大な知識とうまいお話で生徒を教科の世界に引き込む技術が大切でした。

 

そんなすごい先生がたくさんいたとして、生徒がイスにすわって、それらの先生の授業を1日聞かせられ続けるのは、かわいそうな気がします。

 

繰り返しになりますがパートナー方式の教え方の特徴は

 

生徒が主役

 

だということ。

そして答えは外から流し込まれるものではなく、生徒の中にそもそも埋まっている、

と信じておこなう活動です。

 

この教え方をすれば、生徒自信が授業に責任を持ちます。

生徒が考え始めます。生徒がコミュニケーションをとりはじめます。

社会にでて必要な様々な能力が授業内で身につけさせることができます。

 

何より教師が大きなやりがいを感じます!

 

またテレビやパソコンなどをつかって一人で勉強をすることができない、

今という場を大切にした授業であるともいえます。

 

毎回おなじ範囲でも授業が変わっていきます。

教師にとってもこれほど面白いことはありません。

 

また今までの「導入・展開・まとめ」という指導案の作り方からすると、

「まとめ」の部分にはあまり重きをおかないということも従来の授業とは違います。

 

今までの授業をしていて、授業力がある先生だと逆に取り入れるときに

大変違和感を感じるかもしれませんが、

 

しかし取り入れてみると生徒の表情が明るくなり、前向きになったり、

本当にすごい良い影響がすぐに現れます。

さらに今までの経験が一斉講義を短くポイントを伝えるというところに発揮されるはずです。

 

初級編になれてきたら、ぜひ上級編にも取り組んで下さい。

この本がとても参考になるはずです。

 

すこし高いのが特徴ですが、買ってみてぼくは何度も読み返しています。

超オススメ!です。

 

もしこの記事をよんで取り入れた先生がいましたらご感想などこちらにいただけると幸いです

(このページに掲載させていただければと思います)。

 

kkuwako2000 あっとま〜く gmail.com

 

その他に参考になる本

・『楽しい「授業づくり」入門』

・『グループのちからを生かす』

・『男の子の脳、女の子の脳』

 

上級編のために役に立つサイト

ぼくのフェイスブックページでパートナー方式の教授法などについて情報を集めています。

黒板を電子黒板に変身させる方法

学習意欲を高め学力につなげる「授業改革」 (外部ウェブサイト)

アクティブラーニングについての知識が体系的に学べます。実践したら知識も!

反転授業の研究

反転授業をおこなっている田原先生のサイトです。実践例が参考になります。