デジタルネイティブのためのパートナー方式の教え方
パートナー方式の教え方を取り入れてみた結果…?!
ぼくは以前女子校で物理を教えていたのですが、物理ってどうしても苦手な生徒が多いんです。理解するのをあきらめちゃう子もいて、正直、悩んでいました。そこで、いろいろ試してみたんですが、その中で グループワーク が思った以上に効果的だと気づいたんです。
であったのが パートナー方式の教え方 です。これ、ぼくが自然に取り入れていた方法とすごく似ていて、しかもちゃんと理論として確立されているんです!
パートナー方式ってなに?
この教授法は、Marc Prensky先生が提唱しているもので、教師が生徒に一方的に知識を教え込むのではなく、 生徒が主体的に学ぶ ことを目的としたものです。ここでの「パートナー」というのは、 教師と生徒が学びのパートナー になる、という意味なんですね。生徒が自ら知識体系を組み立て、教師はそれを サポートする役割 を担います。
「なんだか難しそう…」って思いましたか?
実はそんなことないんです!教師が全てを説明する必要がなくなるので、授業の負担も減るし、生徒たちの個性や進度がより見えるようになるんです。
導入方法は超シンプル!
「でも、やり方が難しそう…」って思うかもしれませんが、全然そんなことはありません。実際、ぼくも授業のスタイルをちょっと変えただけですぐに効果を感じました。 パートナー方式の教え方は、明日からでもすぐに始められる 教育法です。難しい理論は後回しでいいんです。ぼくが実際に試してみて感じたことや、その結果をこのページで紹介します。ぜひ、授業に取り入れてみて、生徒たちと一緒に楽しい学びの時間を作ってください!きっと「これだ!」って思える瞬間がやってくるはずです。
ポイント1 机の並べ方
普段の授業の形は例えばこのようにな形なのではないでしょうか。
この形を崩して、3〜4人のグループを作ります。 一例として私がちょうどいま組んでいるグループの形を示します。理科室は自然とこのような形になっていますね。
この形の「まま」授業をおこないます。これだけで随分雰囲気が変わるでしょう。
グループの人数は5人だと話し合いがうまくいかない場合があります。
2人だと気が合わないことがあります。4人か3人にします。
ここで一番のポイントは、意外かもしれませんが、
机をぴったりとつけること!
これがパートナー方式の教え方の要となります。
ぜったいに机はぴったりとくっつけるように指導をしてください。
また3人のグループを作るときには、この形を逆にしないようにしてください。
この形にすると生徒が教師に対して背中を向ける格好になります。「この形のまま授業をしても、グループの顔が気になって授業に集中できないんじゃ・・・。」そう思うかもしれませんが、大丈夫です。パートナー方式の教え方では、教師が一方的に教える一斉授業を極端に減らすように準備をするためです。
また『デジタルネイティブのための近未来教室』の中では、次のようなパターンの座席も紹介されてました。
教師が中心に机をもっていくパターン。生徒は教師を囲む。
生徒が和になるパターン。通常の授業というより討論などを行う場合に適している。
パソコン教室の配置。パソコンの画面が内側を向いているため、教師が別のことをしているかすぐにわかる。
また生徒同士で相談しながら進めることもできる。
ポイント2 授業展開
パートナー方式の教え方は次のような授業展開で進んでいきます。
1 教師の一斉授業+生徒に刺さる質問
2 生徒が主役となり、グループで考える時間
3 全体への発表や小テストなどのフィードバック
「3」までいったら、「1」に戻ります。これが50分授業では2回くらい繰り返されます。それぞれの展開についてコツを説明します。
1 教師の一斉授業+生徒に刺さる質問
一番のコツは長く話さないことです。 ここは短ければ短いほどいいのがポイントです。基本的には長くても10分以内の範囲におさめて、生徒に問題を渡したり、発問をしたりして考えさせる活動にうつります。できるだけ「2」の活動に時間をかけましょう。
2 生徒が主役となりグループで考える時間
この時間のコツは、
「例えば20分時間をあげるので、考えてみて下さい。」
などと指示をして、生徒から手を離してしまいます。 これではザワザワして授業にならないのでは、、、と怖い所ですが、思い切って生徒にまかせてみましょう。ぼくもはじめはこれがとてもこわかったです。教師はこの間、机間巡視をしますが、グループに近寄っていって、
「進んでる?」
「終わったらわからない子に教えてあげて?」
などと声掛けをおこなっていきます。グループ全体が悩んでいたら教えてあげても構いません。グループの中に出来ている生徒がいるのに、他の生徒がわかっていない場合は、
「あっているよ!教えてあげて」
と声かけを行います。こうすることで生徒が「教師」になっていきます。
ここでやってはいけないことは、求められてもいないのに、一人ひとりに解説をしたり、答えを教えることです。
あくまで生徒の中で、生徒同士で考えさせることがポイントです。ほっておけば、生徒どうしで話しあったり、教え合ったりして、答えに近づこうとして、活発に学習をはじめます(ビックリ!)。
結局は生徒はテストでは生徒自身が答えにたどりつかなければいけないですし、または仲間同士で協力して答えを出す作業が社会では大切だからです。こういった力を身につけさせることがパートナー方式の教授法では可能です。
3 全体への発表や小テストなどのフィードバック
フィードバックではグループを通して生徒に問題について聞いたり、教師が一例として解法を紹介するなどの活動(フィードバック)、または小テストなどを行います。またちょっとしたコツですが、「3」でフィードバックすることを「2」の話し合いの前に言っておくと、話し合いの目的が明確になり活発になります。この繰り返しがパートナー方式の教え方です。簡単でしょう!
難しいところもあります!
パートナー方式の教え方は上記のように簡単に導入できます。そしてすぐに効果がでるでしょう。クラスに活気が戻ってきます。しかし実際にはじめてみると難しい所にもぶつかっていきます。こんなに良い所があるんだということは様々なサイトに書かれていますが、難しいところについてもあえて伝えたいと思います。
まず1つ目に、集団の中にはコミュニケーションをとらない生徒(苦手な生徒)が少なからずいるということです。そのような生徒が多くいるクラスでは、たとえグループをつくって、席をつけてもなかなか話し合いは進みません。
かといって軌道修正をしようと一斉授業を多くしようとしても、席自体は教師のほうを向いていませんから、一斉授業も難しくなってくるという面があります。
教室は静まり返り、なんとなく、静寂を崩すのが不自然で、生徒どうしで話しをするのもためらわれる空気になることもあります。よりいっそうグループワークの意味がなくなります。
対策としては、机をピッタリとつけて話し合いやすい空気を作ることはもちろんですが、グループワークをするさいに、教師がちょっかいを出してまわり、教師が教えている姿を見せたり、教師が声を出すことで、話しても良いんだという空気を生み出すことです。
席をたって他のグループの友達と交流してもいいなどと自由な空気を出すことも大切です。このようにしたところ、徐々に話し合いがはじまりました。また生徒に目的をしっかり意識させないまま、つまり生徒に投げかける「質問」がダメな状態で、はじめてしまうとうまくいかなくなります。
ダメな質問は、YES、NOで答えられるような単純な質問です。物理の例で申し訳ないのですが、そういった問いかけではなく、「なぜ鉛直バネ振り子の単振動の場合、位置エネルギーがエネルギー保存に入ってこないのか?」
「なぜ万有引力の位置エネルギーは負になるのか?」
など、ちょっと難しくやりがいのあるテーマに取り組ませます。また単に席をつけて問題を解くような活動をしても、何回かはうまくいっても、マンネリ化をしてきてきます。生徒同士で仲良くなったり、甘えも生まれて、関係のないおしゃべりが横行、授業が崩壊するかもしれません。
対策としては、グループワークをしたあとに、小テストをやると宣言してから、グループワークをはじめることや、グループワークのあとに発表させるなど、生徒にグループワークをしたあとのアウトプットの目標をしっかりと意識させることによって、議論が活性化します。
教師はつねに良い質問をストックしておく必要があります。この生徒への問いかけが一番の授業準備になります。
まとめ
上記のようにパートナー方式の教え方は難しいところもあります。それでも私はパートナー方式の教え方は突破口だとおもいます。
従来の授業では、予備校の衛星授業のように、膨大な知識とうまいお話で生徒を教科の世界に引き込む技術が大切でした。そんなすごい先生がたくさんいたとして、生徒がイスにすわって、それらの先生の授業を1日聞かせられ続けるのは、かわいそうな気がします。
繰り返しになりますがパートナー方式の教え方の特徴は生徒が主役だということ。そして答えは外から流し込まれるものではなく、生徒の中にそもそも埋まっている、と信じておこなう活動です。
この教え方をすれば、生徒自信が授業に責任を持ちます。生徒が考え始めます。生徒がコミュニケーションをとりはじめます。社会にでて必要な様々な能力が授業内で身につけさせることができます。何より教師が大きなやりがいを感じます!
またテレビやパソコンなどをつかって一人で勉強をすることができない、今という場を大切にした授業であるともいえます。
毎回おなじ範囲でも授業が変わっていきます。教師にとってもこれほど面白いことはありません。また今までの「導入・展開・まとめ」という指導案の作り方からすると、「まとめ」の部分にはあまり重きをおかないということも従来の授業とは違います。
今までの授業をしていて、授業力がある先生だと逆に取り入れるときに大変違和感を感じるかもしれませんが、しかし取り入れてみると生徒の表情が明るくなり、前向きになったり、本当にすごい良い影響がすぐに現れます。さらに今までの経験が一斉講義を短くポイントを伝えるというところに発揮されるはずです。初級編になれてきたら、ぜひ上級編にも取り組んで下さい。