面白すぎる!宇宙での作用反作用・慣性の法則・運動量保存の法則(授業活用)【若田さんの映像まとめ】

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

中学理科1や物理の授業で、生徒に「力の法則」や「運動量の保存」といった抽象的な概念をどうすれば面白く、そして直感的に理解してもらえるか、頭を悩ませることはありませんか?実験室で再現できる現象には限りがありますし、言葉だけで説明しても、生徒の想像力には限界があります。

そんな時に役立つのが、宇宙空間で行われた若田宇宙飛行士の本物の実験映像です。摩擦や空気抵抗といった「地上での当たり前」が取り払われた無重力空間は、まさに物理法則をシンプルに、そして鮮やかに見せてくれる最高の舞台です。今回は、宇宙飛行士の若田光一さんが国際宇宙ステーション(ISS)で行った実験映像の中から、中学から高校の物理で使える「珠玉のシーン」を厳選してご紹介します。各シーンがどの単元の授業で活用できるか、解説を加えましたので、ぜひ皆さんの授業に取り入れてみてください。

授業で使える!若田宇宙飛行士の物理実験映像集

運動量の保存【ラジオ体操】(50秒)

解説:
「物体が外部から力を受けない限り、その重心は常に一定の速度で運動する」という運動量保存の法則を説明するのに最適なシーンです。映像では、若田さんがラジオ体操で腕や足を動かしても、体の重心(中心)がほとんど動いていないことがわかります。これは、腕や足といった体の一部の動きによって発生する運動量が、体全体の動きで相殺されるためです。生徒に、内力(自分の体の動き)だけでは重心の位置は変わらないということを視覚的に示すことができます。

慣性の法則【ボールの動き】(5分)

解説:
慣性の法則(運動の第一法則)の完璧なデモンストレーションです。地上では、ボールを投げればすぐに空気抵抗や摩擦で止まってしまいますが、宇宙空間では一度与えられた速度で延々と動き続けます。生徒に「なぜ止まらないのか?」と問いかけ、地上との違いを考えさせることで、摩擦や空気抵抗といった見えない力が普段いかに物体に影響を与えているかを認識させることができます。

慣性の法則【水の動き】(26分21秒)

解説:
水滴がプカプカと漂い、揺れる様子は生徒の興味を惹きつけます。この映像も慣性の法則を解説するのに使えますが、加えて表面張力について触れるのも良いでしょう。無重力下では重力による変形がないため、水の表面張力が最も安定する球形を保ちます。物理の複数の単元を横断して教える良いきっかけになります。

作用・反作用の法則【手合わせゲームと綱引き】(32分22秒、33分57秒)

繋引き

手合わせゲーム・押し相撲

解説:
ニュートンの**作用・反作用の法則(運動の第三法則)**を面白く解説できる二つのシーンです。手合わせゲームでは、若田さんが相手を押す力と、相手が若田さんを押す力が互いに作用し合い、結果として両者が動いていることが分かります。綱引きのシーンとセットで見せることで、地上で「体重差(質量差)」があると感じられる力も、無重力空間では同じ大きさで互いに働き合っていることを生徒に示せます。

力のモーメント【センスの動き】(36分7秒)

解説:
うちわを仰ぐと、空気を押す力(作用)と、空気から受ける力(反作用)が発生します。地上ではこの力がわずかなので動きませんが、無重力空間ではこの反作用の力が若田さんの体の重心から離れた場所で作用し、回転させる**力のモーメント(トルク)を生み出しているのがよく分かります。これは、剛体にはたらく力と回転運動の関係を説明するのに非常に役立ちます。

これらの映像は、生徒の物理への関心を高めるだけでなく、日々の授業の導入やまとめ、さらには生徒への課題提示にも活用できます。ぜひ、全編と合わせて、生徒と一緒に宇宙の物理を体験してみてください。

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