月から地球に岩石攻撃!?SFで学ぶ重力と脱出速度のリアル『月は無慈悲な夜の女王』
SFで学ぶ重力と独立革命!月から地球を攻撃!?
宇宙に人間が住む未来――それは遠いようで、実は現代科学の延長線上にある話かもしれません。今回ご紹介するのは、そんな未来をリアルに描き出すSF小説の名作『月は無慈悲な夜の女王』(早川書房)です。
楽天:月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫SF) [ ロバート・A・ハインライン ]
この作品、実はアニメ『機動戦士ガンダム』に登場する“スペースコロニーを地球に落とす”という戦術の元ネタになったとも言われる伝説の一冊。物語の背景には、科学的知識に裏打ちされたリアルな宇宙描写がふんだんに盛り込まれており、理科好きならグッとくる要素が盛りだくさんです。
舞台は地球から犯罪者たちが流刑され、地下都市を築いて暮らす「月」。表面は放射線や極端な温度差にさらされているため、月の住人たちは地下に住居やインフラを整備して生活しています。地球の支配下にあるその暮らしに、ついに独立の機運が高まり、月の技術者である主人公は、ある日、月の中枢を担うマスターコンピューターから協力を求められるのです。
このコンピューター、なんと意思を持ちはじめ、主人公とともに月の独立計画に加担していきます。そして物語は、地球への独立戦争へ――。クライマックスでは、月の岩石を地球に向けて射出し、都市を攻撃するという衝撃の展開が待っています。この攻撃は単なるフィクションではなく、月が持つ「位置エネルギー」を最大限に活用した物理的戦術として描かれており、圧倒的な説得力があります。
たとえば、作中では「第2宇宙速度(秒速11km)を超えて発射される貨物」や「脱出速度がスカラー量であること」など、物理の授業で習う知識がストーリーと密接にリンクしています。教科書で読んだあの知識が、命をかけた戦略に活かされる様子は、まさに“物理が生きる”瞬間。こうしたリアリティのある描写は、著者ロバート・A・ハインラインの科学的リテラシーの高さゆえでしょう。
SF作品の面白さは、現実の科学とフィクションの絶妙な融合にあります。『月は無慈悲な夜の女王』は、高校レベルの理科知識があればより深く楽しめる一冊。物理が好きな中高生、科学に夢を見る大人、すべての理系読者におすすめです。
ちなみに僕がこの本を読んだのはキンドル。分厚いSF文庫も電子ペーパーで軽々と読めて、お風呂や通勤にもぴったり。最近は子ども向けの「キッズモデル」もあるので、読書習慣のきっかけづくりにも良さそうです。
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