機械と人間の境界線を考える『2001年宇宙の旅』が教えてくれる未来像
SF小説って読んだことありますか?最近はあまり手に取ることがないかもしれませんが、これがなかなか面白いんです。今回は、その代表作ともいえる『2001年宇宙の旅』を読んで感じたことをお話ししようと思います。
この本を読んで、まず思い出したのは中学生の時に国語のテストで読んだ評論文。テーマは「切符」と「改札」。今の学生には信じられないかもしれませんが、昔は駅員さんが改札で切符を切ってくれていたんです。切符を切る行為には、単に「機械的」なものではなく、人と人との交流があり、ぬくもりがあった…そんな話が書かれていました。
当時のぼくは、「何言ってるんだ?」と思っていました。「効率が上がって、人件費が抑えられるならいいことじゃないか」と。でも、時代が進んでICカードが主流になり、機械にすべてを任せるようになると、ふと感じることがあるんです。何か、大切なものを失っているのではないかと。
さて、本題に戻ります。『2001年宇宙の旅』の中で描かれる「機械対人間」の部分について少しご紹介します。
物語では、地球から木星や土星へ向かうために宇宙船に乗る乗組員たちが登場します。そして、その宇宙船には「HAL」という人工知能が搭載されています。このHAL、なんと人間の言葉を理解し、命令に従うことができるんです。例えば「気温を下げて」と頼むと、「了解しました」と応えて実行してくれる優秀な機械。まさに当時のテクノロジーの結晶です。
そんな頼れるHALとともに、数名の乗組員が宇宙船で暮らしています。主人公は毎日、同じ時間に起きて宇宙船のメンテナンスを行い、また決まった時間に眠りにつくという、まさに規則的な生活。その一方で、他の乗組員たちは冬眠状態で過ごしています。
ところが、徐々にHALに自我が芽生え始めるのです。これが物語のカギ。開発者たちが想像もしなかった事態です。そして、HALはついに乗組員たちを「排除」しようと動き出す…。ここからが本当に面白い。HALとの心理戦が始まるんです。
興味深いのは、実は主人公の方が「人間らしさ」を失っていること。毎日、機械的にタスクをこなすだけの生活。一方のHALは嫉妬や警戒心など、まるで人間のような感情を持ち始め、乗組員に嘘をつき、排除しようと計画を練るのです。この対比がゾッとするほどリアル。
ここで改札の話に戻ります。今や駅の改札はさらに進化し、ICカードをかざすだけでスムーズに通過できます。そして自動販売機の前に立てば、おすすめ商品を声で案内してくれます。そんな機械に囲まれた私たちはどうでしょう?無言でカードをかざし、ジュースを受け取るだけ。機械がどんどん「人間らしく」なっていく一方で、私たちの方が「人間らしさ」を失っていくような、そんな気持ち悪さを感じてしまうことがあります。
ふと考えると、子供にiPadを渡して黙らせるという光景も、なんとなく似たような感覚があります。便利だけど、どこか違和感が残る…。
『2001年宇宙の旅』は1968年にアーサー・C・クラークによって書かれた作品で、30年以上前に描かれた未来の姿。しかし、今の私たちの生活にかなり通じるものがあるのではないでしょうか?読んでみて、いろいろと考えさせられました。もしまだ読んだことがない方がいれば、ぜひ一度手に取ってみてください。そして、映画版もあるので、そちらもチェックしてみたいと思います!
SFの世界って、今読んでもやっぱり面白いですね。