微生物はデンプンがお好き?カビても学べる!寒天培地実験

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「目に見えない小さな生き物」である微生物の働きは、子どもたちの知的好奇心を大いにかき立てるテーマですよね。しかし、「微生物を扱う実験は準備が大変そう」「時間がない中でどうやって?」と、二の足を踏んでいる先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、そんな先生方にぜひご紹介したい、ナリカの寒天培地を使った微生物のはたらきを調べる実験と、その準備方法です。この寒天培地、実は長期保存が可能で、必要な時にサッと取り出せる優れものです。一から培地を作る手間が省けるので、日々の忙しい授業準備の強い味方になってくれます。

「でも、ちゃんと結果が出るの?」「準備が簡単でも、失敗したら意味がないし…」そう思われた先生もご安心ください。今回は、実際に試してみて「失敗」から学んだこと、そしてそこから見えてきた面白い微生物の世界についてもお話しします。この実験を通して、子どもたちはもちろん、先生方ご自身も微生物の奥深さにきっと夢中になるはずです。さあ、一緒に微生物のミクロな世界を覗いてみましょう!

実験準備:微生物の「食事」を観察しよう!

この実験の準備はとてもシンプルです。市販の寒天培地を使えば、すぐに取り掛かることができます。

必要なもの

事前準備のポイント

  1. 培地の準備: 培地を4つ用意しましょう。実験する対象物の数に合わせて調整してください。
  2. 対象物の選択: 今回は左から「水道水」「池の水」「土」、そして比較対象として「何も載せないもの」の4種類を用意しました。身近な場所から採取できるものを選ぶと、子どもたちの興味も深まります。

実験の手順

  1. 用意した4つの培地のうち、3つにはそれぞれ「水道水」「池の水」「土」を少量ずつ載せます。スポイトや清潔なヘラなどを使って、培地全体に広げるように優しく乗せてください。最後の1つは「何も載せない」状態にしておきます。これは、空気中の微生物や培地の成分の変化を見るための対照実験として非常に重要です。
  2. 微生物が活発に活動しやすいよう、これらを暗い場所で3日間保管します。カビの繁殖を抑えるためにも、できるだけ湿度が低い場所を選びましょう。培地のフタを完全に閉めず、少しだけ隙間を開けて空気の出入りを確保すると良い場合もあります(ただし、今回はこれがカビの原因の一つだったかもしれません…)。
  3. 3日後、保管していた培地を取り出し、それぞれの状態を観察します。肉眼でどのような変化が起きているか、色や質感、 colony (コロニー) の形成などを注意深く見てみましょう。
  4. いよいよ、ヨウ素液の登場です。それぞれの培地にヨウ素液を少量垂らし、デンプン反応があるかどうかをチェックします。デンプンが残っていれば青紫色に変化し、微生物がデンプンを分解していれば変化が小さいか、見られないはずです。

実験結果と考察:失敗から学ぶ微生物の奥深さ!

さて、私たちの今回の実験結果はというと…残念ながら、すべての培地がカビだらけになってしまいました!特に、何も載せていない培地は、本来なら変化が少ない状態が理想でしたが、湿気が原因だったのか、全体がカビに侵食されるという予想外の結果に。

しかし、ここで諦めてはいけません!この「失敗」こそが、科学の醍醐味です。カビだらけの培地でも、ヨウ素液をかけてみると、驚くべき結果が出たのです。

  • 「水道水」と「何も載せていないもの」の培地では、ヨウ素液を垂らした際に大きなデンプン反応が見られました。これは、これらの培地ではデンプンが微生物によってあまり分解されなかったことを示唆しています。特に、何も載せていない培地は、空気中の微生物が主で、デンプンを分解する能力の高い微生物が少なかったのかもしれません。
  • 一方、**「池の水」「土」**の培地では、デンプン反応が小さい、あるいはほとんど見られませんでした。これは、池の水や土の中に含まれる多様な微生物たちが、培地中のデンプンを活発に分解した結果と考えられます。土壌には、枯葉や動物の死骸などを分解する微生物が豊富に存在するため、デンプン分解能力が高い菌が多く含まれていたのでしょう。

この結果から、「カビ」という目に見える変化だけでなく、目に見えない微生物たちが培地の中で「食事」をし、デンプンという栄養源を消費しているという、非常に興味深い現象を観察することができました。たとえカビが生えてしまっても、その中にもデンプンを分解する微生物がいた可能性も考えられます。

次なる挑戦へ:微生物観察の探求は続く!

今回の実験は、非常に簡単でありながら、微生物の働きを身近に感じられる面白いものでした。残念ながらカビの発生という問題はありましたが、それもまた、微生物の多様性と環境条件が結果に与える影響を学ぶ貴重な機会となりました。次回は、カビの繁殖を抑えるために、以下の点を工夫してみたいと思います。

  • 培地の保管環境の改善: より乾燥した場所、または温度管理ができる環境での保管。
  • 培地の密閉度: 空気中のカビの胞子が入らないよう、培地のフタをしっかり閉める、またはパラフィルムなどで密閉する。ただし、一部の微生物には酸素が必要なため、サンプルによっては注意が必要です。
  • サンプルの滅菌: サンプルを乗せる前に、熱処理などで特定の微生物を減らす(ただし、これは観察したい微生物の種類を限定してしまう可能性もあります)。

この実験は、準備も比較的簡単で、子どもたちの身近な場所から採取したサンプルを使うことで、より主体的な学びにつながるはずです。ぜひ先生方も、微生物の奥深い世界を子どもたちと一緒に探求してみてください。

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