煙が宙を舞う!フォグマシンで解き明かす「見える空気砲」の科学
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
煙が織りなす科学の魔法!フォグマシンで巨大な空気の渦を解き放て!
皆さんは「空気砲」と聞いて、どんなものを想像しますか?漫画やアニメに出てくるような、目に見えない空気の塊が、勢いよく飛び出していくアレです。もし、その空気の塊が、まるで意思を持ったかのように、くるくると渦を巻きながら、はるか遠くまで飛んでいく姿を、もしも「目に見える形」で観察できたら、どんなに面白いだろうと思いませんか?


今回、私たちはその「もしも」を現実にしました!理科の実験室ではおなじみの「空気砲」を、ただの空気ではなく、なんと フォグマシン(スモークマシン)を使って、煙の渦として「見える化」する実験に挑戦しました。ダンボールで自作した巨大な空気砲から、白い煙が勢いよく飛び出し、それが美しい渦輪(うずわ)となって、空間を漂う様子は、まさに科学の魔法が目の前で繰り広げられているようでした。この不思議で魅力的な現象の裏には、一体どんな科学の原理が隠されているのでしょうか?煙の正体から、渦の形成の秘密、そして身近な材料でフォグマシンを動かす裏技まで、一つずつひも解いていきましょう。
ダンボール製巨大空気砲、いざ発射!
今回の主役の一つ、空気砲は、身近なダンボールを使って作成しました。写真のような小型のものから、さらに大きく作った特製の空気砲に、フォグマシンで煙をたっぷりと充填します。そして、勢いよく側面を押し出すと……!
大きな渦輪が、まるで生き物のように空間を泳ぎ出します。この渦輪の美しさには、思わず見とれてしまいますよ。百聞は一見に如かず!まずは、この感動的な実験の様子を動画でご覧ください。
実験を彩るフォグマシンの秘密
この「目に見える空気砲」を実現するために不可欠なのが、フォグマシンです。私たちは「フォグマシン 500W」と「フォグマシン 400W」を使用しました。

実際にフォグマシンを動かしている様子はこちらの動画で確認できます。
フォグマシンは5,000円程度で購入できますが、さらに嬉しいことに、必要な「煙の薬剤」はご家庭でも簡単に作れてしまうんです!
用意するのは、グリセリン5mLと純水5mL。これを1対1の割合で混ぜ合わせるだけです。グリセリンは化粧品などにも使われているため、薬局で手軽に購入できます。
さて、このグリセリン、実は非常に興味深い性質を持っています。グリセリンは、無色透明で粘性のある3価のアルコールで、水に非常によく溶け、空気中の水分を吸い取る力が強いという吸湿性に優れた特性があります。食品添加物としても使われるほど安全性の高い物質で、少しとろみのある液体です。混ぜる水は、純水や精製水で大丈夫です。私たちは5mLずつ用意しましたが、用途によっては半量でも十分な煙が作れる感触でした。
煙が生まれる科学の原理
では、なぜグリセリンと純水の混合液が、あんなにも幻想的な煙となるのでしょうか?その原理は、フォグマシンの内部で起こる状態変化と核生成に深く関係しています。
液体の加熱と高圧化: まず、フォグマシン内のポンプが、グリセリンと純水の混合液を「ヒートエクスチェンジャー(熱交換器)」と呼ばれる部分へ、高圧で送り込みます。ここで液体は、瞬時に蒸発温度まで加熱されます。
蒸発と微粒子の形成: 加圧され、過熱された液体は、本体のノズルから一気に大気中へ放出されます。このとき、高圧から解放され、急激に減圧されることで、液体は大量の水蒸気へと姿を変えます。同時に、外気の冷たい空気と混ざり合うことで、この水蒸気は無数の細かい粒子、つまり「煙」として私たちに見えるようになるのです。
もう少し詳しく解説すると、液体を加熱・加圧することで、その空間が保持できる水蒸気の量、つまり飽和水蒸気量が飛躍的に大きくなります。そして、この大量に作られた水蒸気が急に大気中に放出され、減圧されることで、飽和水蒸気量を維持できなくなり、余分な水蒸気が液体に戻ろうとします。この時、空気中に漂う微細なチリや、今回の場合はグリセリンの粒子が凝結核となり、水蒸気がその核の周りに集まって非常に小さな水の粒、いわゆる「雲の粒」を形成するのです。そう、フォグマシンから出てくる煙は、実は人工の雲に他ならないのです!グリセリンがこの「雲の粒子の核」としての役割を効果的に果たしているというわけです。
長く煙を楽しむためのアフターケア
フォグマシンを使った後は、目詰まりを防ぐためのアフターケアが非常に重要です。使い終わったら、フォグマシンに残った溶液を捨て、酢酸5mLに水40mLを混ぜて作った液体を代わりにフォグマシンに入れ、何度か稼働させます。これにより、内部に残ったグリセリンをしっかりと排出し、機械の寿命を延ばすことができます。このメンテナンスを怠ると、せっかくのフォグマシンがすぐに使えなくなってしまうので注意しましょう。
実験中に放出された煙は、驚くほど長時間、空気中を漂い続けます。その光景はまるで火事が起きたかのように視界が悪くなるほどです。幸いにも火災報知器が作動することはありませんでしたが、もし大量に、長時間使用する場合は、作動する可能性もゼロではないので、換気を十分に行うなど、周囲の状況に配慮しながら安全に実験を進めるようにしましょう。
今回の実験を通じて、身近な材料と少しの工夫で、こんなにもダイナミックで美しい科学現象を体験できることがお分かりいただけたでしょうか?ぜひ皆さんも、安全に配慮しながら、自分だけの「煙の科学」を体験してみてください!
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