化学の基本を実感!酸化銅の質量比から学ぶ「定比例の法則」(一定組成の法則)
一定組成の法則を体感する――銅の加熱実験で「定比例の法則」に迫る!
中学理科の化学分野で扱う「一定組成の法則(定比例の法則)」は、生徒にとって少し抽象的に感じられる単元の一つです。単なる知識の暗記にとどまらず、実験を通して“質量の比”を体感できる授業設計ができると、学習内容がぐっと生徒の中に根付きます。
そこで今回は、銅粉を加熱して酸化銅を生成し、その質量変化から酸素との一定の割合を読み取らせる実験を行いました。ポイントは、銅の質量を変えても、化合する酸素の割合が一定になることを実感させること。量的な比較をするため、複数の班で初めの銅粉の質量を変えて実験を進める工夫をしました。
実験は教室内で行いましたが、粉末が舞いやすいため、安全対策も重要です。準備と観察のポイント、実験の進め方のコツをご紹介します。
実験の概要と準備
使用する主な材料・器具
• 銅粉(350メッシュ)
• ステンレス皿
• 三脚・三角かさ
• ガスバーナー
• るつぼ鋏
• 電子天秤(2台以上あるとよい)
• 濡れ雑巾
• マスク(粉末対策)
実験方法
1最初に、電子天秤でステンレス皿の質量をはかっておきます。生徒が忘れがちなので注意が必要です。
2. 銅粉の質量を量る
→ 皿をのせた状態で電子天秤を「0」にし、銅粉を量ります。
→ 教卓に銅粉と電子天秤を設置し、2班ずつ測定することで効率アップ。
→ 安全のため、マスクを着用した生徒のみ計量に参加。
→ 10班の場合、0.2g、0.4g、0.6g、0.8g、1.0gの5段階で振り分けました。
3. 銅粉を20分程度加熱する
→ 色の変化を観察しながらじっくりと加熱。時間の確保がポイントです。
→ 途中でかき混ぜると測定誤差につながるため、手を加えないよう指示します。
4. 加熱後、冷却して質量を測定
→ るつぼ鋏で皿を濡れ雑巾の上に移動。手で持てる温度になるまで冷やします。
5. 生成した酸化銅の質量と、化合した酸素の質量を計算
→ 最初の銅の質量との差から、反応した酸素の質量を求めさせます。
観察のポイント
次の画像は熱する前の様子です。
こちらは熱した後の様子です。
途中の様子を動画に撮りました。加熱始めの時に、色が変化していく様子を観察することができます。
• 加熱前の銅粉は赤褐色ですが、酸化が進むにつれて黒っぽい酸化銅に変化します。
• 「銅の質量が2倍になっても、反応した酸素の質量は比例して増えるのか?」といった疑問を持たせておくと、考察が深まります。
• 変化の様子を動画撮影し、他の班の進行と比較するのも有効です。
授業展開のヒント
• 翌時間に、各班のデータを黒板またはスプレッドシートにまとめ、グラフ化して比較。
• 「酸化銅中の銅と酸素の質量比は一定」という一定組成の法則の意味を、実測値と照らして考察。
• 計算ミスや器具操作の誤差を「誤差要因」として振り返る時間も設けると理科的リテラシーが育ちます。
次回は、実際に集まったデータから「化合した酸素と銅の質量比」を分析していきます。生徒の考察がどう深まっていくのか、今から楽しみです!
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