驚きの発見!レモンが電池に大変身!レモン電池で電子オルゴールが鳴る秘密

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

身の回りのものが科学の不思議とどう繋がっているか、生徒たちに実感してもらうことに悩んだことはありませんか?教科書に出てくる理論だけでは、なかなか生徒の心に響かないこともありますよね。そんな時におすすめなのが、家庭にありふれた「レモン」を使った電池の実験です。

「レモンで電気が作れるの!?」――きっと生徒たちは目を輝かせ、その意外性に驚くことでしょう。今回は、レモン電池の実験を通して、その準備方法から授業での展開のヒント、そして生徒たちの「なぜ?」に応える理科の知識まで、詳しく解説していきます。

1. レモン電池の基本実験:準備と手順

まずは、生徒が「できた!」と実感できる基本的なレモン電池の作製方法をご紹介します。

準備するもの:

  • レモン2個程度(これで10班まかないます): 新鮮なものがおすすめです。数を増やすことで電圧を上げられます。
  • 銅板(または10円玉): 電極として使用します。
  • 亜鉛板(または亜鉛メッキ釘、アルミホイル): 電極として使用します。
  • キッチンペーパー: (必要であれば)電極とレモンの接触面を広げるために使います。
  • リード線とワニ口クリップ: 回路を接続するために必要です。
  • 電子オルゴール: わずかな電流でも動作するため、おすすめです。
  • (あれば)プロペラ付きモーター: より大きな電力が必要ですが、成功すれば感動もひとしおです。
  • (あれば)テスター(電圧計・電流計): 数値で電池の性能を確認できます。

手順:

  1. レモンを準備する: レモン薄くスライスします。

電極挟み込む: レモンの果肉に、銅板と亜鉛板(または代替品)を、互いに触れないように間隔をあけて挟みます。

  1. 回路をつなぐ: 差し込んだ銅板と亜鉛板にそれぞれリード線をワニ口クリップで接続し、電子オルゴール(またはプロペラ付きモーター)につなぎます。
  2. 動作確認!: 電子オルゴールからメロディーが聞こえれば成功です!プロペラが回ればさらに大成功!

差し込む方法でもうまくいきますが、レモンがもったいないですね。

レモンに刺すだけ!レモン電池の作り方(SEPUP研究会)

2. なぜレモンで電気が生まれる? 理科の知識を深める

実験で「電子オルゴールが鳴った!」という感動の瞬間を迎えた後、生徒の心には必ず「なぜ?」が芽生えます。ここでこそ、理科教師の腕の見せ所です。

レモン電池の仕組み:

レモン電池は、典型的な「ボルタ電池」の一種です。ボルタ電池は、異なる2種類の金属(この場合は亜鉛と銅)と、その間に挟まれた電解質(この場合はレモンの酸性の果汁)によって構成されます。

  • 亜鉛が負極、銅が正極: 実験で電子オルゴールが鳴った時、電流は亜鉛から銅へと流れています。これは、イオン化傾向という金属の性質が関係しています。亜鉛は銅よりもイオンになりやすいため、亜鉛原子は電子を放出して亜鉛イオン(Zn²⁺)となって果汁の中に溶け出します。この放出された電子が、亜鉛板からリード線を通って銅板へと移動します。これが電流の正体です。
  • レモンの酸の役割: ボルタ電池で塩酸が使われたように、レモンに含まれるクエン酸などが電解質の役割を果たします。この酸性の水溶液中で、亜鉛から放出された電子が銅板に集まり、水溶液中の水素イオン(H⁺)がこの電子を受け取って水素ガス(H₂)を発生させます。この一連の化学反応によって、電子の流れ(電流)が持続するのです。なおボルタ電池は実際には複雑な現象が起こっており、あまり詳しくは生徒には説明できないという難点もありますね。

授業での発展:

  • 「ボルタ電池」の原理と関連付け、イオン化傾向について深掘りする。
  • レモンの代わりに、他の果物や野菜(例:じゃがいも、リンゴ)でも電池ができるか試してみる。
  • 直列つなぎ、並列つなぎにして、電圧や電流の変化をテスターで測定する。
  • なぜプロペラは回らず、電子オルゴールは鳴ったのか?必要な電力の大きさについて考える。

今回の実験では、電子オルゴールは鳴ったものの、プロペラは回りませんでした。これは、プロペラを回すためには、電子オルゴールよりも大きな電力(電圧と電流)が必要だからです。

プロペラを回すには、レモンの数を増やして直列つなぎにすることで電圧を高める方法が有効です。レモンを複数個用意し、一方のレモンの銅板と、もう一方のレモンの亜鉛板をリード線でつなぐことを繰り返します。こうすることで、レモン一つでは足りなかった電圧を確保し、プロペラを回すことができるようになります。

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