雨上がりの朝、校庭の池で見つけた奇跡の瞬間 ギンヤンマの羽化を観察しました

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

中学1年の生物の授業で、校庭の植物や動物をスケッチして観察していたときのことです。池のそばで、生徒が思いがけない場面に出会いました。ギンヤンマの羽化です。教科書の中の出来事だと思っていた「トンボの誕生」が、目の前で静かに始まっていたのです。

ギンヤンマの羽化に出会いました

ギンヤンマ の羽化を見るのは、私もはじめてでした。見つけたのは朝の9時ころで、ちょうど羽をかわかしているところでした。ところが、10時ころにもう一度見に行くと、すでに飛び去ったあとでした。わずか1時間ほどで、ヤゴから空を飛ぶ成虫へと姿を変えていたことになります。

しかも、すぐ隣には同じように羽化している個体がもう1匹いました。前の晩には雨がふり、羽化を見たのはその日の早朝でした。「もしかして、羽化に向いた条件がそろっていたのかな?」と、思わず考えてしまいました。

なぜ夜から早朝に羽化するの?

トンボの羽化は、夜から明け方にかけて行われることが多いといわれています。羽化したばかりの体はやわらかく、羽もまだ縮んだ状態です。この間は、鳥などの天敵に狙われると逃げることができません。そこで、天敵の活動が少ない夜から朝のうちに羽化を終えるのだと考えられています。

また、羽化には湿度も関係していそうです。雨のあとは空気が湿っていて、体や羽が乾きすぎることがありません。羽化のときに体が乾燥しすぎると、うまく羽を伸ばせなくなるおそれがあります。雨上がりの朝は、トンボにとって安心して羽化できる、ちょうどよいタイミングだったのかもしれません。

さらに、隣の個体も同じ時間帯に羽化していたことから、同じ場所で育ったヤゴたちが、同じ気象条件に反応して一斉に水から上がってきた可能性も考えられます。ただし、これは今回の観察から立てた予想です。本当にそうなのかは、これからの観察で確かめていく必要があります。

ギンヤンマってどんなトンボ?

ここで、ギンヤンマについて調べてみました。

ギンヤンマ wikiの情報

頭から尾までは7cm、翅の長さは5cmほどの大型のトンボである。ヤンマとしては体長に比して翅が長い。頭部と胸部が黄緑色、腹部が黄褐色をしている。オスとメスは胸部と腹部の境界部分の色で区別でき、オスは水色だがメスは黄緑色である。翅は透明だがやや褐色を帯びていて、メスの方が翅色が濃い。昔はオスを「ギン」、メスを「チャン」と呼んでいた。

基亜種は日本を含む東アジア、インド、カザフスタンまで分布する。日本に分布するのは亜種A. p. juliusで、日本の他に島嶼部も含めた東アジア全般に生息する。

湖、池、田など、流れがないか、もしくはごく緩い淡水域に生息する。ヤンマ類の中では馴染み深い種類で、各地にいろいろな方言呼称がある。

成虫は4月-11月頃に発生し、昼間に水域の上空を飛び回る。飛翔能力は高く、高速で飛ぶうえにホバリングなどもこなす。

体長は約7cm、羽の長さは約5cmの大型のトンボで、羽は体のわりに長いのが特徴です。また、オスとメスは、胸と腹の境目の色で見分けられます。オスは水色、メスは黄緑色です。昔は、オスを「ギン」、メスを「チャン」と呼んでいたというのも、おもしろいところです。

そして、成虫は昼間に池などの水辺の上を高速で飛び回り、空中で止まるホバリングまでこなします。学校の池で羽化していたのは、ギンヤンマにとって池が命をつなぐ大切な場所だったからなのでしょう。

不完全変態ってどういうこと?

中学1年の理科では、昆虫の育ち方として「完全変態」と「不完全変態」を学びます。トンボは、さなぎの時期がない不完全変態の昆虫です。卵からかえったヤゴは、水の中で何度も脱皮をくり返して成長します。そして、十分に育つと水から上がり、植物の茎や岩などにつかまって、最後の脱皮をします。これが羽化です。

ヤゴは水の中でえらを使って呼吸し、小さな魚やミジンコなどをつかまえて食べる、水中のハンターです。それが、羽化をして空を飛ぶ成虫になると、今度は空中でカやハエなどを捕らえて食べるようになります。同じ一匹の生き物が、水中のハンターから空中のハンターへと、生活の場所も呼吸のしかたも変えてしまうのです。教科書で学んだ知識が、校庭の池のそばでそのまま見られた貴重な体験でした。

観察から次の疑問へ

今回の観察で、たくさんの「なぜ?」が生まれました。

・羽化は本当に雨のあとに起こりやすいのか
・隣り合って羽化していたのは、偶然なのか
・羽をかわかすのに、どのくらいの時間がかかるのか

これらは、教科書や本を読むだけではわからず、実際に自分の目で観察を続けることで見えてくる疑問です。みなさんも、雨上がりの朝に近くの池や水辺をのぞいてみてください。思いがけない出会いが、あなたを待っているかもしれません。

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