桜の木は「蜜」でガードマンを雇っていた?葉っぱのギザギザと赤い丸に秘められた生存戦略(植物図鑑)

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サクラの意外な素顔

サクラという植物の基本的なプロフィールをおさらいしておきましょう。サクラはバラ科に属する落葉広葉樹です。実は、私たちが大好きなサクランボ(チェリー)を実らせる樹木もこの仲間。世界中で愛される果実をつける、とても身近な存在なのです。

サクラは雌雄同株(しゆうどうしゅ)といって、一つの株に雄花と雌花、あるいは両方の機能を備えた花をつけます。樹高は種類によって様々で、見上げるような大きな木から、庭木に適した低木まで幅広く存在します。

樹皮に見られる「呼吸の跡」

サクラの幹をじっくり見たことはありますか?若い樹皮には光沢があり、水平方向に走る線のような模様が見られます。これはカバノキなどにも見られる特徴で、皮目(ひもく)と呼ばれています。実はこの皮目、ただの模様ではありません。細胞の間に隙間があり、樹木が呼吸をするための呼吸孔としての役割を果たしているのです。木も私たちと同じように、外の空気を取り込んで生きている証拠ですね。

サクラの根は地表近くに浅く、水平に広がる性質があります。そのため、根から新しい茎が伸びてくるひこばえや、本来の根以外の場所から生える不定根もよく見られます。秋になると鮮やかに紅葉し、私たちの目を楽しませてくれた後、冬に向けて葉を落とします。

「一重」から「八重」まで、変化に富んだ花びら

サクラの花びらの数は、種類によって実に多様です。

一般的に、花弁が5枚までのものを一重、5枚から10枚のものを半八重、そして10枚以上のものを八重と呼びます。サクラの場合は特にヤエザクラとして親しまれていますね。多いものでは、なんと百数十枚もの花びらを持つ種類もあるんですよ!

葉っぱに描かれた「網目」のサイン

桜の本当の凄さは、花が散った後に始まる「葉っぱの季節」に隠されていることをご存知でしょうか?桜の花が満開のときには影を潜めていた葉たちが、花吹雪とともに一気に芽吹く様子には、生命の力強さを感じずにはいられません。葉の表面をよく見ると、細い筋が網の目のように張り巡らされています。これは網状脈と呼ばれる葉脈の入り方で、サクラのような双子葉植物(広葉樹など)に多く見られる特徴です。

一方で、チューリップなどの単子葉植物は、葉脈がまっすぐ並ぶ平行脈を持っています。「この植物は網目かな?平行かな?」と見比べるだけでも、散歩がぐっと楽しくなります。次の写真はチューリップの葉っぱです。

また、サクラの葉のふちにはギザギザがありますよね。これを鋸歯(きょし)と呼びます。サクラの場合、大きなギザギザの間にさらに小さなギザギザが挟まっているのが特徴です。この複雑な形には、光合成の効率を高めたり、環境に適応したりするための、数百万年にわたる進化の歴史が刻まれているのかもしれません。

葉の根元にある「赤い点」の正体は?

最後に、一番面白い「秘密」をお話しします。サクラの葉の付け根をよく見てください。小さな赤い丸い点が2つ並んでいるのに気づきませんか?

これは蜜腺(みつせん)と呼ばれる器官です。花でもないのに蜜を出すなんて不思議ですよね。実はここから甘い汁が分泌されているのです。私も興味本位で舐めてみたことがありますが、残念ながら私の舌では甘さを感じ取れませんでした(笑)。(みなさんも試すときは、衛生面に気をつけて自己責任でお願いしますね!)

では、なぜ花ではない場所に蜜腺があるのでしょうか?そこには、サクラが編み出した「用心棒」を雇うための戦略が隠されています。植物にとって、葉をガの幼虫などに食べられるのは大問題です。そこでサクラは、葉の付け根から蜜を出して、アリをおびき寄せるのです!

蜜を目当てに集まってきたアリたちは、葉の上をパトロールします。その途中でガの卵や幼虫を見つけると、それらを追い払ったり、エサとして巣に持ち帰ったりしてくれます。つまり、サクラは蜜という「報酬」を支払って、アリという「用心棒」に身を守ってもらっているのです。

たまたま写真撮影をしていたら、実際にアリが蜜腺に寄ってきている貴重なシーンを撮影することに成功しました。

この小さな赤い点ひとつに、樹木と昆虫の密接な共生関係が凝縮されているなんて、驚きですよね。花が散った後の桜の木を見かけたら、ぜひ足を止めて葉っぱを観察してみてください。そこには、静かだけれどダイナミックな「生き残りのドラマ」が広がっています。おまけに、サクラの美しさをいつでも感じられるスマホ待受画面を作ってみました。もしよろしければ、ぜひダウンロードして使ってみてくださいね。

授業で活用する場合はこちらをご覧ください。

【桜の葉のスケッチ】ただの葉っぱじゃない!サクラの葉に隠された「赤い粒」の秘密と、アリとの共生ドラマ

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