鏡に映る顔は「幻覚」じゃなかった!虚像に隠された光の物理学

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

鏡やレンズを覗きこんで見える「虚像」。

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あれは幻なのでしょうか、それとも脳の勘違いなのでしょうか。実は多くの人が誤解しがちなこの現象、科学的に正確に説明しようとすると、思いのほか奥が深いテーマだったりします。

「虚像」という言葉のワナ

虚像について説明をするときに、「本当はないものが見える」「思い込み」というような説明をしてしまうことが自分もあるのですが、ちょっとそれは違うなと思って、どういったら正確に伝わるのだろうと、くよくよと考えてしまいました。コトバンクで虚像を調べると次のように書かれています。

一般に物体が見えるのは、その物体から出た光線が目に入って網膜上に物体の像を生ずるからである。ところが実際には物体が存在しなくても、物体が存在しているときと同じ状態の光線が目に入ると、その存在しない物体が見える。しかしこれを幻覚または錯覚のように考えるのは正しくない。実際の物体から出た光線と、虚像から出た光線とを区別する方法は原理的には存在しないからである。日常われわれが鏡で見る自分の顔や、バックミラーに映る後続の自動車などは、虚像の例である。  [三宅和夫] コトバンク

この解説の核心は、「虚像は錯覚ではない」という一文にあります。

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「思い込み」や「錯覚」という言葉を使うと、まるで脳が勝手に幻を作り出しているかのような誤解を与えてしまいます。ですが実際には、目に入ってくる光そのものは本物なのです。ただ、その光が「どこから来たように見えるか」という点で、実際の物体の位置とはズレているだけなのですね。

そもそも物を見るということは、網膜に写った光から判断(電気信号になり、脳におくられて、脳で画像を作る)をするということです。これは実像でも虚像でも関係ありません。これはデジタルカメラでも同じですね。ですので思い込みではないわけですよね。

ここがとても面白いポイントです。私たちの目もデジタルカメラも、光を受け取ってそれを画像に変換する「光センサー」という点ではまったく同じ仕組みを持っています。カメラのセンサーが「思い込み」で写真を撮ることがないのと同じように、私たちの目も入ってきた光をそのまま素直に処理しているだけなのです。つまり虚像が見えるという現象は、脳の勘違いではなく、目という精密な光学装置が「与えられた情報を正しく処理した結果」だといえます。

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実像と虚像、決定的な違いはどこにあるのか

実像と虚像の違いでいえば、実像はその場所に光があつまって、そこにスクリーンをおけば、そこから光が乱反射をします。そのため見る向きをいろいろと変えても、そこに物が実際にあるように見えます。

映画館のスクリーンに映る映像は、まさに実像の代表例です。レンズを通った光が本当にその場所に集まっているため、スクリーンという「受け皿」を置けば誰でも同じ映像を見ることができ、見る角度を変えても像はそこにあり続けます。

一方、虚像の場合は光が実際にその場所に集まっているわけではありません。鏡の奥やレンズの向こう側には、光は物理的には存在していないのです。

図は見る。動かす。考える。の虚像シミュレーションより

URL:https://理科sim.jp/

の虚像シミュレーション、面白いですね。

 

そこにスクリーンを置いても、何も映し出すことはできません。目に見えているのは、あくまで「そこから光が発せられたように見える」という、光の進み方が作り出した位置情報にすぎないのです。この「実際に光が集まっているかどうか」こそが、実像と虚像を分ける決定的な違いだといえます。

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