箔検電器で何が起こっているのか?電荷の動きをアニメで再現!(静電気のふしぎを体感する「箔検電器」)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験!
冬の日にドアノブに触れて「バチッ!」、セーターを脱ぐと「パチパチ…」。誰もが経験する「静電気」は、とても身近な現象ですよね。でも、その正体は目に見えず、まるで気まぐれな魔法のようです。
もし、その見えない力を自在に操り、その姿をこの目で見ることができたら…?
今回は、そんな夢を叶える魔法の箱、「箔検電器(はくけんでんき)」を使った、知的好奇心がくすぐられる科学実験をご紹介します。準備するのは風船や下敷きだけ。さあ、科学の魔法の世界へようこそ!
次の動画をご覧ください!
動画のように、近づけるだけでパッと金属の箔が開くんです!まるで、風船が魔法の杖になったみたいだと思いませんか?
このシンプルな現象に隠された「なぜ?」こそが、科学の世界への最高の入り口になります。
さあ、今からこの魔法のタネ明かし、もとい、科学の秘密を一緒に解き明かしていきましょう!
そもそも「静電気」ってなんだろう?
箔が開く謎に迫る前に、少しだけ静電気の正体についてお話しします。
私たちの身の回りにあるすべてのモノは、「原子」という小さな粒からできています。そして原子の中には、プラスの電気を持つ「陽子」と、マイナスの電気を持つ「電子」がいます。普段はプラスとマイナスの量が釣り合っていて、電気的には中性です。
ところが、風船と布をこすり合わせるように、モノ同士が摩擦すると、一方からもう一方へ電子が移動してしまうことがあるのです。この電子の過不足によって発生するのが、静電気の正体です。古代ギリシャでは、琥珀(こはく)をこすると羽毛を引きつけることが知られていました。この琥珀を意味するギリシャ語「ēlektron」が、電気(electricity)の語源になったんですよ。
なぜ箔が開くの?~見えない電子の動きを追え!~
それでは、いよいよ箔検電器の謎解きです。
ケース1:プラスの電気を近づけると…
まず、風船をこすった後の「絹」の布。実はこれ、電子を風船に奪われて、プラスの電気を帯びています。
これを箔検電器の金属円盤に近づけると…金属の中を自由に動ける電子(マイナスの電気)たちが、「わーい、プラスだ!」と円盤の方へ引き寄せられます。この現象を「静電誘導」と呼びます。
すると、下の箔の部分は電子がいなくなってしまい、プラスの電気だけが取り残された状態になります。ご存知の通り、電気はプラス同士、マイナス同士で反発します。そのため、2枚の箔がお互いを「あっちいけ!」と押し合い、見事に開くというわけです。
ケース2:マイナスの電気を近づけると…
次に、絹とは逆に電子を受け取ってマイナスに帯電した「風船」を近づけてみましょう。
今度は、円盤に近づいてきたマイナスの電気に驚いて、金属中の電子たちが「うわー、マイナスが来た!」と箔の方へ一斉に逃げていきます。
その結果、箔はマイナスの電気で満たされます。マイナス同士も反発するので、やはり箔はパッと開きます。同じ「開く」という現象でも、中で起きている電子のドラマは全く違うんですね。
ここで豆知識:磁石を近づけてみると?
磁石には反応しない
ちなみに、磁石を近づけても箔は全く反応しません。このことから、静電気の力(電気力)と磁石の力(磁力)は、異なる性質を持つことがわかります。箔検電器は、その名の通り「静電気」だけを検出する優れた探偵なのです。
指先ひとつで箔をコントロール!アースの不思議
さて、ここからがこの実験の真骨頂です。マイナスに帯電した風船を近づけて箔を開かせた状態で、上の円盤を指でそっと触れてみてください。
指で触れると箔は閉じます。
なんと、あれだけ反発していた箔が、すっと閉じてしまいます。一体何が起きたのでしょうか?
実は、箔に逃げてきていた大量の電子たちが、私たちの体を通って地面へと逃げていったのです。私たちの体や地球は、電気にとって非常に巨大な逃げ場所(または供給源)になります。これを**「アース(接地)」**と呼びます。電子たちが体を通って去っていったため、箔は電気的に中性に戻り、閉じたのです。
そして、ここからがクライマックス。円盤に触れていた指を離し、その後に風船を遠ざけてみると…
風船を引くと…
今度は箔が開きっぱなしに!
なんと、今度は箔が開いたままの状態になります! これは一体どういうことでしょう?
モデル図で見てみましょう。
指で触れて電子が逃げた後、指を離した時点では、箔検電器全体が電子不足(プラスの状態)になっています。しかし、マイナスの風船が近くにいるため、残った電子たちが円盤に引きつけられています。
ここで、電子を引きつけていた風船を遠ざけると…
円盤に集まっていたプラスの電気が、箔検電器全体に均等に広がります。その結果、箔もプラスに帯電し、再び反発して開くのです。今度は、箔検電器自体をプラスの電気を帯びた状態にすることに成功した、ということですね。面白いですよね!
では、最初にプラスの電気を帯びた絹で同じ操作をしたら、箔検電器全体をマイナスに帯電させることができるでしょうか?ぜひ、この不思議な電子の動きを想像しながら、試してみてください。
より詳しい解説はこちらの動画でもまとめています。ぜひご覧ください。
静電気発生マシーン(バンデグラフ)を使うと、こんな面白い実験が!!
もっとパワフルな静電気を体験したい!という方には、静電気発生マシーン「バンデグラフ」を使った実験もおすすめです。実はこの装置、かつては原子核の研究に使われた粒子加速器の仲間でもある、すごい機械なんです。
この実験は、広瀬すずさん・鈴木亮平さん・やす子さん・チョコレートプラネッツの長田さん・松尾さん等とテレビ番組にて行った実験も含まれます。詳しくはこちらをどうぞ。
※ なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします。
【特集】やめられなくなる!静電気実験
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