オーブン不要!電気を直接流して作る「電気パン」が美味すぎた
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
パンを焼くといえば、オーブンやトースターを使うのが当たり前。でも、もしパン生地そのものに電気を直接流して、中からふっくら焼き上げる「錬金術」のような方法があるとしたら…?
これは、そんなちょっぴり危険で、最高にエキサイティングな科学実験「電気パン」に、科学部の生徒たちと挑戦した記録です。
【⚠️警告】この記事で紹介する実験は、家庭用の100V電源を直接使用するため、感電や火災の危険が伴う非常に危険なものです。知識のある専門家の指導のもと、適切な安全対策を講じて行っています。絶対に安易に真似をしないでください。
最初の壁:たった0.9mmのステンレス板問題
実験の心臓部となる電極には、ステンレス板を使います。参考にさせて頂いたサイトには「厚さ1mm」とあり、早速購入。
しかし、これがとんでもない強敵でした。厚さ1mmのステンレス板は、金バサミや糸ノコでは歯が立たないほど硬いのです。「どうしたものか…」と途方に暮れていた時、参考サイトをよく見ると「ハサミで切れる厚さ」との記述を発見。
「これは…もしかして0.1mmの間違いでは?」
このひらめきが正解でした。科学の実験は、マニュアル通りにいかない試行錯誤の連続。この小さな失敗と発見こそが、実験の醍醐味なのです。
いざ、調理開始!科学のスパイスを添えて
気を取り直して、実験スタートです。牛乳パックを型にし、ハサミで切れるようになった薄いステンレス板を電極として差し込みます。そこに、主役となるホットケーキミックスの生地を流し込みます。
そして、いよいよコンセントに接続!本当にこれでパンが焼けるのでしょうか…?
【科学のなぜ?】電気がパンを焼く魔法の仕組み
スイッチを入れると、生地から湯気が立ち上り、甘い香りが理科室に広がります。オーブンのような熱源がないのに、なぜパンは焼けるのでしょう?
その秘密はジュール熱にあります。
電気の通り道を作る「イオン」: ホットケーキミックスに含まれる食塩(塩化ナトリウム)が生地の水分に溶けると、電気を帯びた粒「イオン」になります。このイオンが、電気の運び屋として大活躍!
電子とイオンの摩擦熱: 電気が流れるとは、電気の粒(電子)が移動すること。この電子が生地の中を駆け巡る時、イオンと激しく衝突します。この無数の衝突によって生まれる**摩擦熱(ジュール熱)**が、生地を内側から均一に加熱していくのです。
完成の合図は「沈黙」: パンが焼けてくると、生地の中の水分はどんどん蒸発していきます。すると、電気の運び屋だったイオンは身動きが取れなくなり、電流は流れにくくなります。湯気が収まり、電流が流れなくなったら、それはパンからの「美味しく焼きあがりましたよ!」というサインなのです。
私たちは、電流が流れなくなったことを電球を使って確認。約20分後、ついにその時が来ました。
感動の瞬間!これが電気の力だ!
完成した電気パンがこちら!
外見は素朴ですが、中までしっかり火が通っているのでしょうか?
見事に、中までふっくらと焼きあがっていました!
部員みんなで、恐る恐る一口。「うまい!」「ちゃんとパンの味がする!」と歓声が上がります。自分たちの手で、科学の力を使って作り上げたパンの味は、格別でした。
電気という目に見えないエネルギーが、熱に変わり、美味しい食べ物を生み出す。この感動的な変化を五感で味わえるのが、科学実験の最大の魅力ですね。
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