物理の「名脇役」!糸と面の力が決まる「束縛力」の秘密

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

突然ですが、ジェットコースターがレールから外れずに走れるのはなぜでしょう?あるいは、ブランコが一定の距離を保って揺れ動くのはなぜでしょうか?そこには、物理学における「名脇役」とも言える重要な力が隠れています。今回は、物理の運動方程式をマスターする上で欠かせない、「束縛力(拘束力)」という少し不思議で面白い力の正体についてお話しします。

物理の世界の「名脇役」?変幻自在な束縛力

私たちが物理の問題を解くとき、重力やばねの力は、計算する前から「重力ならmg」「ばねならkx」といった具合に、あらかじめ大きさが決まっています。これを「近接作用力」や「遠隔力」と呼びますが、いわば「自分勝手な力」です。

それに対して、糸が引く力(張力)や面が押し返す力(垂直抗力)などは、「束縛力(拘束力)」と呼ばれます。この力の面白いところは、「計算するまでその大きさがわからない」という点です。束縛力は、物体が「糸の長さを保つ」「面の形に沿って動く」といったルールを守るために、その場その場で自分自身の大きさを変える、非常に空気を読むのが得意な力なのです。

ルールが力を決める!「束縛条件」の不思議

この束縛力の大きさを決めるルールを、物理学では「束縛条件(拘束条件)」と呼びます。「糸が伸び縮みしない」「物体が面から離れない」といった物理的な状況そのものが、数式を決定する鍵になるのです。例えば、下の図のような滑車を使った問題を考えてみましょう。

おもり1(質量m1)とおもり2(質量m2)が糸で結ばれています。m1の方が重い場合、それぞれの運動方程式は次のようになります。

m1a = m1g - T(下向きを正とした)

m2a = T - m2g(上向きを正とした)

ここで当たり前のように、2つの式で加速度「a」を共通にしていますよね?実はこれこそが「糸が伸び縮みしない」という束縛条件を、無意識のうちに数式に組み込んでいる証拠なのです。

一歩踏み込んだ丁寧な考え方

より厳密に考えるなら、おもり1の加速度をα、おもり2の加速度をβとおいて、それぞれの運動方程式を立てるのが丁寧な作法です。

m1α = m1g - T

m2β = T - m2g

そして、ここで「糸が伸びないのだから、1が下がった分だけ2が上がるはずだ」という「α=β」という束縛条件(拘束条件)を後から付け加えるわけです。こうすることで、未知数だった張力Tや加速度の具体的な値が、パズルのピースがはまるように決まっていきます。

滑車も動く?!さらなる挑戦へ

基本がわかると、応用問題も面白くなってきます。例えば、下の図のように「滑車そのものが上に加速している」という、一見パニックになりそうな状況ではどうでしょうか。

この場合、「糸が伸び縮みしない」という条件に加えて、「滑車が動くことで糸の端点の位置がどう変わるか」という新しいルールを追加して考える必要があります。

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