主体的・協働的な学びを促す「交通安全の力学」の紹介

ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。このサイトで科学を一緒に楽しみましょう。 

概要

主体的・協働的な学びを促す実験を開発しています。今回紹介するのはSEPUP JAPAN用に開発したプログラム「交通安全の力学」についてです。このプログラムは、今までの理科実験にストーリーを追加することによって、実験によって得た科学的なデータをもとに、異なる立場・意見を持つ者同士による合意形成を促すワークです。具体的には、

① ストーリーを読む

② 実験をしてデータを集める

③ 実験結果を元に、意見をぶつけあって新しい交通ルールを作る

というものです。①のストーリーを読むでは、ある小さな島のある町で起こった小学校の前でのトラックの交通事故をきっかけとして、島独自の交通ルールを作るために、町民が会議室に集まり力学の実験をした上で、それぞれの立場で交通ルールを視聴に提案する嘆願書を作るというミッションを得ます。

その後、②では力学台車を車に見立てて、木箱に衝突させるという実験から、データを得ていきます。そして③では自分で考えた交通ルールをもとに、他者の意見と調整をとっていくという話し合いのワークが入っています。

交通安全の力学

① ストーリーを読む

まずはじめに生徒にストーリーを読んでもらいます。

② 実験をしてデータを集める

実験方法

力学台車を車にみたてて、木箱に衝突させて木箱の動いた距離から力学台車の持つエネルギーを推定する。その際に、力学台車のスピードや重さをいろいろと変えてみる。

(1) ビースピを台車と木箱の中間に設置する(ビースピの単位がm/sになっているかを確認する)。

(2) 力学台車に割り箸をビニールテープで取り付ける。割り箸をとりつける位置は、ビースピのセンサーの部分を通過するような位置にする。

(3) いろいろな速度で台車を動かして、台車に木箱を押させて、木箱を何cm押すことが出来たのかを測定する。

(4) (1)~(3)の操作を繰り返し、木箱が滑った距離が4cm~60cmくらいにバラつくように4回データを測定する。

表からグラフにして関係性を確かめる

(1) vを横軸、箱が滑った距離を縦軸にしたときの3つのデータを色分けしたグラフ①と、を横軸、箱が滑った距離を縦軸にしたときの3つのデータを色分けしたグラフ②をかきなさい。

グラフ① グラフ②

処理(2) グラフ②から=0.40[m2/s2](同じ速度)のときの3つのグラフについて、箱が滑った距離を算出し表にまとめなさい。またその表を使って、横軸を質量、縦軸を箱が滑った距離としてグラフ③を作りなさい。

グラフ②からの読み取り

グラフ③

③ 交通ルールを作ってみよう!

生徒の反応

2018年7月の夏季理科実験講座を受講している中学生2、3年生、およそ35名に対して実施しました。どの生徒もまだエネルギーについての学習をしていない段階での実施となりました。資料を読む段階では、時間を3分間取り、資料を読み取らせてから、課題について共有するために紙芝居(スライド)を用いて、情報を共有しました。

続いて行った実験の結果は次のようになりました。こちらがある生徒の実験結果です。

この表を元に作ったグラフ②の様子について紹介します。

縦軸が箱が動いた距離、横軸が速度の二乗

最後にグラフ③について紹介します。

縦軸が箱が動いた距離、横軸が質量

※ この生徒は横軸のメモリの取り方が少し違っていました。

 どの生徒も仕事とエネルギーの関係については学んでいないという状況で、どのように生徒が課題に向き合い、実験結果を元に独自の交通ルールを作っていくんか?ということについて興味をもって観察していました。実際に行ってみると、エネルギーの予備知識がなくても、交通安全の力学は教育効果を上げることができているようでした。

こちらは生徒が発表しているときの様子です。

発表資料を紹介すると、

 このように科学的な知見をもとにしながらも、コスト面や、重量制限の仕組みなどについても考えて発表をしていることが見て取れます。課題としては、力学台車の質量とv2との寄与の違いについて考えられた生徒が少なかったことです。速度の2乗に比例して木箱の動きが増えるので、速度の寄与がより大きいということに気がつく生徒が多くなるとより良い実験に改善できると思います。

2時間のプログラム時間をとりましたがぴったり発表まで終わりました。つまりプログラム時間としては2時間はかかってしまうということです。SEPUPは異なる立場での合意形成を大切にしているので、実験から得た科学的な知見をベースに、市民の立場や、運転者の立場、行政の立場など、色々な人の立場になって検討することができたのは、素晴らしい能力が生徒にあることがわかり、実施した立場としても驚かされました。

生徒の感想を最後に紹介します。

・普段の生活と直接関わっていることを実験としてやるのも面白いと思いました。

・日常生活と理科のつながりがわかりました。理解外のことも学べたのでよかったです。

普段の授業では今回程に深く考えることがなかったので、生活につなげて考えてみてとても楽しかったです。

今後の実生活に役立てていきたい。→日頃から意識する〜!普段はできないことだから興味を持って出来ました!良い経験にもなりました!ありがとうございました。

皆で意見を出し合えたことが楽しい意見も聞けて楽しかった。

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桑子 研(くわこけん)
 1981年群馬県生まれ。サイエンストレーナーとして全国で実験教室やICT活用講演会を開いている。著書は『大人のための高校物理復習帳』(講談社)、『きめる!物理基礎』(学研)など10冊。