科学は「答え」ではなく「手続き」?教科書の見方が変わる大人の科学論
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「理科の教科書に書いてあることは、すべて絶対的な真理である」 そんなふうに思っていませんか?実は、科学の世界に生きる研究者たちと、一般の方々の間には、「科学」という言葉に対するイメージに驚くほど大きなズレがあるのです。今回は、SNSで話題になった興味深い比較表をもとに、科学の本質とは一体何なのか、そしてそれを学ぶための最高の教材についてお話しします。
「何が正しいか」ではなく「どう確かめたか」
まずは、こちらの表をご覧ください。科学にまつわる「世間のイメージ」と「実際の姿」が実に見事にまとめられています。

引用:2018年4月30日 https://twitter.com/Perfect_Insider @Perfect_Insiderさんのツイートより
科学とは 【イメージ】正しいとされる一連の内容(知識の束) 【実際】正しさを明らかにするための一連の手続き
論文とは 【イメージ】「何が」正しいのかを示すもの 【実際】「なぜ」正しいのかを示して、検証してもらうもの
なぜ科学的事実は正しいのか 【イメージ】教科書や偉い科学者がそう言っているから 【実際】提示された証拠が、厳しい批判に耐え抜いたから
「科学とは?」という問いに対し、現役の生徒たちに話を聞いてみると、多くの生徒が「正しい知識そのもの」だと考えています。
例えば理科の教科書について、「書き換えられることのない、絶対的な真実が書かれた本」だと思っている生徒も少なくありません。しかし、歴史を振り返れば、かつての「常識」が新しい証拠によって覆されてきたのが科学の歴史です。
私自身も、教える立場になってようやく、実験における「結果」と「考察」の決定的な違いを深く理解できるようになりました。中高生の理科では、どうしても「実験をしたら一つの答え(正解)が出る」という流れになりがちです。そのため、自分で考えるはずの「考察」にまで正解を求めてしまう。これは非常にもったいないことです。
見えない中身を解き明かす「ブラックボックス」の授業
文系の道に進むと、高校卒業後は理科に触れる機会が減ってしまいます。だからこそ、若いうちに「科学的な思考法」を体験しておくことが大切だと考えています。そこで私が授業で取り入れているのが、「ブラックボックス」という教材です。
この教材、見た目はただの箱ですが、中身がどうなっているかを「開けずに」推測するというものです。
・箱を振ったり、傾けたりして音や感触を確かめる(観察)
・「中はこうなっているはずだ」というモデルを考える(仮説)
・別の方法で動かして、自分のモデルが正しいか試す(検証)
まさに、「目に見えない真理に、手続きを踏んで近づいていく」という科学の本質をそのまま体験できるのです。
「正解」を暗記するのではなく、「どうすれば正しさに近づけるのか」という手続きを学ぶこと。これは科学者を目指す人だけでなく、複雑な情報があふれる現代社会を生きるすべての人にとって、かけがえのない経験になるはずです。もし身の回りで「科学的な発見」を耳にしたら、「何が見つかったか」だけでなく、その裏側にある「どんな厳しい批判を乗り越えてきたのか」というストーリーに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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