鉛筆一本で本格サイエンス!黒鉛の線で解き明かす「電気抵抗」の不思議
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
目に見えない「電気の通り道」を、自分の手で作ってみたことはありますか?今回紹介する実験の主役は、鉛筆の芯の主成分である黒鉛(グラファイト)です。黒鉛は金属ではありませんが、電気を通す性質を持っています。線が長くなったり太くなったりすると電気の通りやすさはどう変わるのか?それを自分の手で確かめてみましょう。

用意するもの
はさみ、工作用方眼画用紙、鉛筆(10Bなどの濃いものがベスト)、汚れ防止の下敷き、テスター、ミノムシクリップ(2本)、電池パック(単3用)、単三電池(2本)
なぜ10Bがいいの?:鉛筆の芯は黒鉛と粘土を混ぜて作られます。10Bのように濃い鉛筆は黒鉛の割合が非常に高く、粘土が少ないため、電気がよりスムーズに流れる「高性能な抵抗器」になってくれるのです。
実験の方法
① 導電ラインを作る 20cm×2cmの画用紙を2枚用意します。その中央に20cm×1cmの幅で、10Bの鉛筆を使って真っ黒に塗り込みます。このとき、ムラがないように丁寧に塗りつぶすのが正確なデータを取るコツです。

② 抵抗値を測定する準備 テスターを使い、この黒い帯の「抵抗」を測ります。ミノムシクリップの先が、画用紙の帯に軽く触れるようにつかんで固定します。

拡大すると…

③ 数値を記録する テスターに出た数値を読み取り、表に書き込みます。このとき、単位(MΩ、kΩ、Ωなど)を間違えないように注意しましょう。
記入する表の例: 
④ 長さを変えて測る はさみで帯を2cmずつ切り、長さを20cm、18cm、16cm……と短くしていき、それぞれの抵抗値を測定していきます。

記入例:

⑤ グラフ化する(長さと抵抗) 横軸に「長さ」、縦軸に「抵抗値」をとってグラフを描いてみましょう。

⑥ 電流の測定 もう一枚の同じように作った帯を使い、今度は回路に電池をつないで「流れる電流」を測定します。電圧は電池2本分の3V(ボルト)で行います。


⑦ グラフ化する(長さと電流) 横軸に「長さ」、縦軸に「電流値」をとってグラフにします。

⑧ オームの法則を確認する ⑤と⑦のデータから、各長さにおける「抵抗(R) × 電流(I)」を計算してグラフにします。

結果からわかる科学のストーリー
この実験から、いくつかの重要な物理現象が見えてきます。まず⑤のグラフからは、帯の長さと抵抗値が「比例」の関係にあることがわかります。通り道が長いほど、電気は通りにくくなるのですね。次に⑦のグラフからは、長さと電流が「反比例」の関係にあることがわかります。そして最も注目すべきは⑧のグラフ。計算した「R×I」の値が、長さに関わらずほぼ一定になっているはずです。これこそが、中学校で習うもっとも有名な公式のひとつ、オームの法則(V=IR)です。一定の電圧(3V)をかけているので、抵抗が変われば電流が変わり、積(掛け算)は常に電圧と等しくなるのです。
さらに独自の自由研究にするヒント
この実験の良いところは、「塗る人」によって世界に一つだけのデータが出ることです。
・線の幅を2倍にしてみたらどうなる? ・鉛筆をHBに変えたらどうなる? ・塗る濃さを変えたら数値はどう動く?
このように条件を変えて比べることで、さらに深い考察ができるようになります。このステップをきっかけに、自分だけの科学の物語を組み立ててみてください。
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!


