磁力を10倍にする魔法!?パスカル電線とiPadで挑む最先端の磁場観察
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「もっとたくさん実験をさせてあげたい、でも時間が足りない……」。理科の授業に携わる方なら、一度はそんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。限られた50分という時間の中で、安全を確保しつつ、生徒たちが驚きや発見を得られる「濃い」時間をどう作るか。これは私たち理科教員にとって永遠のテーマかもしれません。
今回は、私が実践している「実験の二刀流(ローテーション方式)」をご紹介します。実はこの方法、JICAの事業でケニアから視関した教育関係者の方々にも「素晴らしい工夫だ!」と絶賛されたアイデアなんです。
効率と学びを両立させる「実験A・B同時進行作戦」
実験を効率化するコツは、実験の内容をその「難易度」と「危険度」で2つのグループに分けることです。
実験A(セルフ型):説明を聞けば生徒たちだけで安全に進められるもの。
実験B(アテンド型):教員がそばで見守り、高度な操作や注意が必要なもの。
クラスを半分に分け、このAとBを交互に行うことで、教員はBのグループにじっくりと腰を据えて指導ができ、生徒は待ち時間なく密度の高い実験を経験できます。
今日は、中学2年生の「電流と磁界」の授業で行った実践例を見ていきましょう。

実験A:砂鉄が描く「磁界の地図」をハイスピードで記録
まずは、生徒たちが自立して進める実験Aです。磁石の上に透明なシートを敷き、その上から砂鉄をふりかけて、目に見えない「磁界(じかい)」の模様を観察します。
コツは、砂鉄を高い位置からパラパラとふりかけること。まるでおしゃれな料理を作る時のように、高い打点から落とすことで、磁力線に沿った美しい模様が浮かび上がります。

砂鉄は「高い位置から」が鉄則です。

ふりかけたら、用紙をトントンと軽く叩くと模様がはっきりします。
ここで重要なのがiPadの活用です。模様ができたらすぐに撮影!スケッチは後回しにして、まずはたくさんの磁石の組み合わせを試させます。この「デジタルで記録、後でじっくりアナログ(スケッチ)で考察」という流れが、20分という短時間で深い学びを生むポイントです。

実験B:10倍の威力!「パスカル電線」で電流の正体を見る
もう半分のグループが行うのが、教員がつきっきりで指導する実験Bです。ここで登場するのが「パスカル電線」。これは、内部に10本の導線が仕込まれた特殊な電線です。
10本の線を直列につなぐことで、例えば2A(アンペア)の電流を流すだけで、実際には10倍の20A分の強力な磁界を発生させることができます。この強力なパワーこそが、目に見えない電気の力を「体感」させる鍵となります。

実験室の天井から不気味(?)に這わせたこの手作り装置。緑のテープを目印にして、生徒たちに方位磁針を近づけてもらいます。

「スイッチオン!」の合図で一斉に動く方位磁針。そして、磁石を近づけると、重い電線がフワッと引き寄せられたり退けられたりする様子に、生徒たちからは歓声が上がります。これが後に学習する「フレミングの左手の法則」の伏線になるのです。

科学の感動は世界共通!ケニアの先生との交流
この日はJICAを通じて、ケニアから6名の教育関係者の方々が視察に来られていました。彼らもこの効率的なシステムに興味津々。「どうすれば限られた予算でこの電線を作れるのか」「iPadを使った指導法は面白い」と、熱心にメモを取られていました。

言葉の壁を超えて、実験の成功を一緒に喜ぶ生徒とケニアの先生たちの姿を見て、理科教育は世界を繋ぐ共通言語なのだと改めて実感しました。
まとめ:工夫一つで実験の回数は増やせる
教員が実験Bに集中し、助手の方やiPadの力を借りて実験Aを回す。この「20分交代」のサイクルを回せば、準備から片付け、まとめまで50分ぴったりに収まります。
「忙しいから実験はできない」と諦めるのではなく、「どうすれば同時並行で進められるか」。そんなパズルのような工夫こそが、理科を教える楽しさの一つかもしれませんね。

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