1000分の1秒の世界を捕まえろ!イージーセンスで描く「音のうなり」の正体
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
私たちの身の回りには、目には見えないけれど確実に存在している「物理量」があふれています。空気の震えである音、流れる電気、物体に働く力。これらは普段、私たちの五感や想像力でしか捉えることができません。もし、それらを「目に見える形」に変換してくれる魔法の道具があったら、理科の時間はもっとワクワクするものになると思いませんか?今回は、科学の「見えない世界」を鮮やかに描き出してくれる強力な助っ人、「イージーセンス」の世界をご紹介します。
イージーセンスを使っていますか?
みなさんはイージーセンスを使っていますか?イージーセンスは、あらゆる現象をデジタルデータとして記録できるデータロガー(センサー機器)です。音センサ、超音波センサ、電流センサなど、目的に合わせて様々なセンサーを付け替えることで、目には見えない物理量を瞬時に測定することができます。
イージーセンスの3つのメリット
イージーセンスは、単なる測定器以上の価値を実験にもたらしてくれます。その大きなメリットを3つにまとめてみましょう。
① 目には見えない物理量を可視化することができるリアルタイム測定を使えば、目の前で刻々と変化する電流や力の大きさを、グラフとしてスクリーンに映し出すことが可能です。「今、何が起きているのか」を直感的に理解できるのは、大きな感動を生みます。
② 極端に短い、あるいは長い現象を捉えられる人間の目では追えないほど一瞬で終わる現象(衝突の瞬間など)や、逆に数時間かかる温度変化なども正確に記録できます。「うなり」や「電気振動」といった、1000分の1秒単位の変化が重要な現象も、イージーセンスなら逃さずキャッチします。
③ 納得いくまで何度でも解析・実験ができる従来の実験、例えば記録テープを使った運動解析などは、データの処理に時間がかかり、一回の授業で一度実験するのが精一杯でした。しかしイージーセンスなら、授業時間内で20回以上でも測定を繰り返せます。納得がいくまで条件を変えたり、データを積み重ねて平均をとったりすることで、より本質的な科学の探究が可能になります。
こうした「データに基づいて考える」スタイルは非常に重要視されており、国際バカロレア(IB)の教科書などでも、センサーを使った実験が標準的に組み込まれています。
科学のレシピ:音の「うなり」を捕まえよう
「うなり」とは、振動数がわずかに異なる2つの音が重なったとき、音が周期的に大きくなったり小さくなったりして聞こえる現象です。準備するものナリカイージーセンス3リンク、音センサ、おんさ2台(またはトーンジェネレーターアプリを入れたiOS端末2台)
手順
① イージーセンスの設定で「グラフ」を選択します。
② 測定時間を2秒、測定間隔を500μs〜5msの間に設定します。波形を細かく捉えるためのポイントです。

設定例
③ 2つの音源で「うなり」を発生させます。今回は精度を高めるため、タブレットのアプリでデジタル音を発生させました。
④ 音センサを音源の間に置き、記録ボタンを押します。
⑤ しばらく待つと、画面に特徴的なうなりの波形が現れます。
⑥ グラフを操作して、隣り合う「音の山」の間の時間間隔(周期)を調べます。
⑦ 出している音の振動数の差から計算した理論値と、実測値を比較してみましょう。
実際にやってみると…
実際に測定した結果を例としてご紹介します。音1:708.7 Hz / 音2:713.0 Hzこの2つの音の差は 713.0 – 708.7 = 4.3 回です。つまり、1秒間に4.3回うなりが聞こえる計算になります。では、イージーセンスのグラフはどうなったでしょうか。
拡大してみると…
グラフから読み取った1つのうなりの間隔(周期)は、
242.500 ms = 0.242 s
今回はデジタル音源を使用したため、おんさの場合とは波形の細部が少し異なります。ここから、1秒間に聞こえるうなりの回数を計算すると、理論値の4.3回とほぼ一致していることがわかります。
高校物理の教科書では「うなりの式」を習いますが、実際にこうして波形を目で見て時間を測る経験をすると、学びの深度がまったく変わります。実験で生徒たちの興味を引きつけた後に、発展としてうなりの導出方法を紹介すると、みんな目を輝かせてついてきてくれます。センサー機材は確かに高価ですが、教師が1つ持っているだけで、授業の幅はぐーっと広がります。センサーは、いわば実験における「科学の目」です。この「目」を使って、次はどんな不思議を解き明かせるか、考えるだけで楽しくなりますね。みなさんはイージーセンスをどのような実験に使っていますか?「こんな面白い使い道があるよ!」というアイデアがあれば、ぜひ教えてください!
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