脳がダマされる快感!プロ直伝「マジック×科学」の特別授業レポート(特別教養講座)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「科学とマジックは、実は紙一重である」。 そんな言葉を聞いたことはありませんか?今日は、本校で特別教養講座『マジック講座』を開催しました。特別教養講座とは、教科の枠を超え、本校の教員と外部の専門家がタッグを組んで行う、本校独自の探究型プログラムです。 今回は、テレビやイベントで活躍するプロマジシャン集団ROUTE13から、テツオさんとシンゴさんをお招きし、プロの技と理論を学ぶ企画を立てました。
プロデューサーの能登さんとの綿密な打ち合わせを経て、いよいよ実現したこの企画。集まったのは中1から高2までの18名の生徒たちです。教室が不思議な実験室へと変わる瞬間の始まりです。
驚きのメカニズム:脳が追いつかない「つかみ」のマジック
まずはご挨拶代わりのパフォーマンス。空っぽのはずのコップの中から、なんと本物のレモンが出てくるというマジックを見せていただきました。一つ、二つとゴロゴロ転がり出るレモン。その瞬間、生徒たちは驚きのあまり、口をポカーンと開けてフリーズしてしまいました。
実は、人は本当に驚いた時、悲鳴を上げるのではなく、声も出なくなるようです。これは生物学的にいうと、想定外の事態に対して脳の処理が追いつかず、身体が一時停止する反応に似ています。タネ明かしをしていただくと、最初の何気ないお喋り(フリ)の段階から、すでにマジックが始まっていることや、磁石の物理的な性質を利用するなど、緻密に計算されたテクニックが隠されていました。
特に興味深かったのは、「ミスディレクション」と呼ばれる、目線をうまく別の所に誘導するテクニックです。科学用語では「非注意性盲目」とも関連しますが、人は「見ているようで、見ていない」生き物。注意を逸らされると、目の前で起きている変化にも気づけないのです。何度見ても信じられないほど鮮やかでした。
仕掛ける側へ:観察力と演技力の特訓
続いて4つのグループに分かれ、それぞれのグループで異なるマジックを伝授していただきました。

初心者の生徒たちのために、技術的には比較的簡単なものを選んでくれたようですが、後ろから見ていてもタネが全くわかりません。 教えていただくと「なーんだ!そんなことか!」というシンプルな原理ばかり。
しかし、そこに「ちょっとした動作」や「言葉の間」を積み重ねることで、人の注意をコントロールし、魔法に変えてしまうのです。「事実はシンプルだが、見せ方で世界が変わる」というのは、科学の実験演示にも通じる奥深さがあり、私自身も感激しました。
20分程度の練習のあと、各班の代表生徒によるマジックショーの開演です。 短い練習時間にもかかわらず、目覚ましい上達ぶり。後ろから観察していましたが、タネがわからないものが多数ありました。仮説(タネ)を知っていても騙される、素晴らしい出来栄えです。
言葉と科学のマジック:心理学と物理現象の融合
次に、本校の国語科・金井先生による「マジシャンズリード」の実演です。これは心理学を応用し、言葉巧みに相手の選択を誘導するテクニック。

言葉のマジックは、ボキャブラリーと相手の心理を読む力がものをいいます。一生懸命シナリオを作ってきた生徒の姿が印象的でした。また、私の方からは理科教員として、科学マジックを紹介しました。

空のコップから、突然イチゴが出現するマジックです。これは地盤などで起こる「液状化現象」の原理や、粉粒体の物理的な挙動と絡めたトリックだったのですが、生徒たちは目を丸くして驚いてくれました(^ ^) 物理現象も、文脈を変えれば魔法に見えるのです。
プロの真髄:不可能を可能にする技
最後に質疑応答が行われました。 「マジシャンになろうと思ったきっかけは?」「マジシャンはモテるのか?」「どのくらい練習をしているのか?」など、生徒たちの素朴な疑問に、ユーモアを交えて真摯に答えていただきました。そしてフィナーレには、タネ明かし無しの「本気のマジック」を見せていただいたのですが、これがまさにプロの技。「えっ!?」という驚きの連発でした。

一瞬にしてトランプがアクリル板という「固体」に変化したり、

ご覧ください!未開封のペットボトルの中に、サインしたトランプが入ってしまったり! 物質の透過など、物理法則を無視したかのような現象に脳がパニックを起こします。

さらには、おきまりのスプーン曲げならぬ、フォーク曲げ。 硬い金属が飴細工のように曲がる様子を目の前で目撃し、たくさんの不思議を体験しました。

もちろん、これらのタネは企業秘密。教えていただけませんでした。 「なぜ?」「どうして?」と問い続けることこそが、科学の入り口です。盛りだくさんの講座を終え、生徒たちは時間があっという間だった様子。サインを貰って大満足の2時間となりました。この体験が、物事を多角的に見る目を養うきっかけになれば嬉しいです。
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