チョークとデジタルの融合。丸の内で開催した「未来の理科実験室」レポート

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

黒板にチョークの粉が舞う、懐かしい教室の風景。もし、その黒板がボタン一つで宇宙の映像や複雑な心臓の断面図をパッと映し出し、先生がその上からいつも通りチョークで書き込み、説明を始めたら…?

まるでSFのような授業ですが、これが現実になりました。平成27年11月29日(日)、東京・丸の内のGOOD DESIGN Marunouchiにて、そんな「未来の授業」を体験するイベント、「Kocri(コクリ)」を使った模擬授業を行いました。

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当日の熱気あふれる様子は、こちらの動画でもご覧いただけます。

12289646_528435853987382_5889773551455411088_nイベントの詳細はこちらをご覧ください

なんと、この模擬授業の様子を記者の寺島さんがハフィントンポストの記事にしてくださいました! 「黒板の板書がなくなる?」という刺激的なタイトルで、当日の様子とKocriの可能性が、私の説明よりよっぽど分かりやすく(笑)まとめられています。ぜひご覧ください!

黒板の板書がなくなる? ライブ授業アプリで、教育の未来は変わるか

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魔法の黒板「Kocri」の正体とは?

そもそも「Kocri」とは何でしょうか? これは、黒板メーカーのサカワさんと、ユニークなコンテンツを生み出し続けるカヤックさんが共同開発した、画期的なiPhoneアプリです。

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使い方はシンプル。プロジェクターを使って、あらかじめ用意しておいた画像(例えば、植物の細胞の図や、歴史的な地図など)を黒板に瞬時に映し出します。そして先生は、その上からいつも通りチョークで線を引いたり、文字を書き加えたりして説明を進めていくのです。

「機械」ではなく「最高の道具」になるテクノロジー

Kocriの本当に素晴らしい点は、「使っていることすら忘れてしまう」ほど、授業に自然に溶け込むことです。

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これは生徒にとっても同じです。ピカピカの電子黒板のように身構える必要はありません。また、先生がiPadなどのタブレット端末の操作に集中してしまうと、どうしても生徒との目線が途切れてしまいます。

Kocriは違います。先生はあくまで「黒板」と「生徒」に向き合い続ける。テクノロジーが主役になるのではなく、先生のチョークさばきや説明を助ける「最高の道具」に徹してくれるのです。この「目線が途切れない」ことは、授業の集中力や一体感を保つ上で、非常に大きなメリットとなります。

この素晴らしさは、文字ではなかなか伝わりません。そこで「ぜひ体験を通して伝えてほしい」と開発者の方からご依頼を受け、今回の模擬授業が実現しました。(その結果、東京新聞にその取組がのりました!)

教育への熱い視線! 不安が吹き飛んだ当日

定員は20名程度。当初は「集まるのは学校の先生ばかりかな」「もし1人か2人だったらどうしよう!」と、内心ヒヤヒヤしていました。

しかし、フタを開けてみるとビックリ! 定員を超える多くの方が集まってくださったのです。

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しかも、参加者の顔ぶれを見ると、老若男女さまざま。後でわかったのですが、教師の方は意外と少なく、その多くは一般の方(中にはライターの方なども!)でした。会場は道に面していたため、窓越しに中の様子を熱心に見ている方も多くいらっしゃいました。

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「未来の見通しが悪い教育界だ…」なんて思っていましたが、とんでもない! 世間からはこんなにも熱い関心と期待という「光」が当たっているのだと、胸が熱くなりました。

アナログ(実験)とデジタル(ICT)の最強ハイブリッド

教育に興味のある方がこんなに多いとは! そこで、普段私が生徒の前で行っている「実験」の様子も体験してほしいと思い、3つの事例を紹介させていただきました。

始まる前は、「大人の皆さんを前にして、本当に楽しんで帰ってもらえるだろうか…」という心配もありましたが、それも杞憂でした。

私の授業の強みは、「実験」というリアルな体験(アナログ)です。そして、その説明の効率とわかりやすさをKocri(デジタル)が劇的に向上させる。この「ハイブリッド授業」が功を奏したのか、皆さんがとても楽しそうに、最後まで熱心に聞いてくださったのです。

高校生が面白いものは、大人も面白い!

これまでは、「毎日の授業がうまく回っているのは、目の前の高校生が相手だからじゃないか?」という一抹の不安が常にありました。しかし、今回の模擬授業を通して、大きな発見がありました。 「高校生が『面白い!』と思うものは、一般の方でも『面白い!』と感じてもらえるんだ!」ということです。

結局、理科の最大のコンテンツは「自然そのもの」の不思議さです。それをいかにうまく発見できるような組み立て(授業デザイン)ができるか。この確信は、私にとって大きな自信となりました。無償での活動でしたが、「来たものはとりあえずやれ!」「必要とされているのならば」という思いで飛び込んでみた結果、お金では買えない、本当に大きなものを得ることができました。

素晴らしい機会を与えてくださった、サカワの坂和さん、カヤックの深津さん、そしてGood Design Marunouchiのスタッフの皆様、本当にありがとうございました!

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