身近な材料で大発見!「浮力」を楽しく学ぶアルミホイルボート実験のすすめ

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

皆さんは「浮力」の授業でどのような実験をされていますか?アルキメデスの原理を解説したり、天秤を使って浮力を測定したり…様々なアプローチがありますよね。

今回は、特別な道具は一切不要、生徒たちの好奇心をくすぐりながら「浮力」の概念を体験的に学べる、とてもシンプルで面白い実験をご紹介します。その名も「アルミホイルボートチャレンジ」です!身近な材料で、生徒たちが試行錯誤しながら、浮力の秘密に迫る授業を一緒に作ってみませんか?

この実験は、アルミホイルを加工してボートを作り、どれだけたくさんのおはじきを乗せられるかを競うというものです。一見すると簡単な工作遊びのようですが、ここには深く、そして面白い理科の原理が隠されています。生徒たちは「どうすればもっと浮かぶんだろう?」と自ら問いを立て、予想し、実験することで、座学だけでは得られない確かな学びを手に入れることができます。授業の導入にも、まとめにも使える万能な実験です。

⛵授業の準備はたったこれだけ!「アルミホイルボートチャレンジ」

・物体が水に浮くのは、物体に働く「浮力」が、物体の重さと釣り合っているためであることを理解する。

・浮力の大きさが、水に沈んでいる部分の体積(水を押しのけた体積)によって決まることを、実験を通して体感的に理解する。

【用意するもの】

・アルミホイル(幅25cm程度が扱いやすいです。生徒1人あたり12.5cm×12.5cmの正方形に切って配ります。)

・おはじき(30個程度。おもりとして使います。生徒1人あたり30個程度用意しておきましょう。)

こちらはセリアで買ったものです。

・水槽(縦200mm、横315mm、深さ130mm程度が理想的。家庭用のタッパーなどでも代用可能です。)

・水

・雑巾、タオル

授業の進め方の例

「一番たくさんおはじきを乗せられるボートはどんな形かな?」と生徒に問いかけ、予想を立てさせます。

アルミホイルを配り、12.5cm×12.5cmの正方形に切り取らせます。ハサミやアルミホイルの刃で怪我をしないよう、注意喚起を忘れずに。切り取ったアルミホイルを使い、各自でボートを制作させます。形は自由!生徒たちの創意工夫を促しましょう。

水槽に水を半分ほど入れ、制作したボートを水面に浮かべます。

ボートにおはじきを1つずつ慎重に乗せていき、何個目で沈むかを記録させます。

最も多くおはじきを乗せられたボートはどんな形だったか、生徒同士で共有し、議論させます。

なぜその形が多くのせられたのか、「水を押しのけた体積」や「浮力」というキーワードを使ってグループで話し合わせます。

🧐理科教師の視点!実験から引き出す深い学びのポイント

この実験の面白いところは、最終的に最も多くのおはじきを乗せられるボートの形が、「できるだけ平たく、水に接する面積を大きくした形」になる点です。なぜでしょうか?

生徒たちの議論の深堀りポイントとして、以下の2点を投げかけてみましょう。

①浮力の正体は「押しのけた水の重さ」である

ボートが水に浮かぶのは、ボートに働く上向きの力、つまり浮力が、ボートとおはじきの合計の重さと釣り合っているからです。そして、この浮力の大きさは、水の中に沈んでいる部分の体積、つまり「水を押しのけた体積」と等しい体積の水の重さと同じになります。

つまり、より多くの水を押し出すことができれば、それだけ大きな浮力が働くわけです。

加えて、バランスをとることも大事で、平たい面の船の方がうまく行きそうなことが予備実験をしてわかりました。

生徒たちは、はじめに「深さのある形」や「船のような形」を思い浮かべるかもしれません。しかし、同じアルミホイルという限られた材料で作る場合、平たい形にすることで、底面積が広くなり、水面に広く接することができます。これにより、水に沈む深さは浅くても、より大きな体積の水を押し出すことができ、結果として大きな浮力が得られるのです。

この実験を通して、生徒たちは「浮力は、水に沈んだ体積に比例する」という原理を、頭だけでなく身体で理解することができます。ぜひ、次の理科の授業で、生徒たちの「なんで?」という探求心を引き出してみてください!

参考資料

トライサイエンス「アルミのボート」

http://www.kagakunosaiten.jp/convention/pdf/2019/062.pdf

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