落差16mの恐怖、理科で解明!スプラッシュマウンテンを数式でのぞく【ディズニーランド物理学】

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

あのスプラッシュマウンテン、実は理科で速度が求められるって知ってた?

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「スプラッシュマウンテンに乗ったことがある人?」と聞くと、教室のほぼ全員が手を挙げる。生徒にとって東京ディズニーランドは、まさに“体験済みの物理ワールド”です。一方、「FUJIYAMAに乗ったことある人?」には、ぽつぽつと10%ほど。どうやら“絶叫”のハードルは高いようです。

でもちょっと待ってください。ディズニーランドで最も速い乗り物、それがスプラッシュマウンテンだということをご存じでしょうか? あの、丸太ボートで滝壺にダイブする、例のアトラクションです。

実はこのスプラッシュマウンテン、中学・高校の物理基礎の知識で、そのスピードを予測・計算することができるんです!もはや“遊び”ではなく“教材”――そんな目で、改めてスプラッシュマウンテンを見てみませんか?

実際どのくらいの高さ?――まずは基本データ

スプラッシュマウンテンの特徴的な落下シーン。あのクライマックス、どれくらいの高さから落ちているかというと…公式ガイドブックによれば、最大落差は16m。

つまり、校舎の3階分ほどの高さから水しぶきを上げて落ちていくわけです。スプラッシュマウンテンについて乗ったことがない方がもしいたら、こちらの動画の7分ころの様子をご覧ください。これが落差16メートルの滝です。

https://youtu.be/AmPPm3O-mWA?si=eMhjVsOJircz1b1V&t=420

さらに調べてみると、以下のような公式データも得られました:

全長:850m
• 水量:毎分110トン
• 最大傾斜:45度
• 最高速度:62km/h

これらの数値は、物理好きにはたまらない“計算したくなる”数字ばかり。

実測データを取りに行ってみた

実際に自分で検証してみたくなり、修学旅行引率中の自由時間を使って、スプラッシュマウンテンに乗ってきました(乗り物が苦手なのでほぼ命懸けでした…)。

高度計と加速度センサーを忍ばせて、データ収集。結果として、落差はしっかり16m前後であることが確認できました。


※生データや他アトラクション(スペースマウンテン・ビッグサンダーマウンテン)の比較については、別記事で公開中です。

スプラッシュマウンテンの高度・加速度の一部始終を測って見た【ディズニーランド物理学】

動画でも確認してみよう

もしスプラッシュマウンテンに乗ったことがない方は、下の動画で7分頃からの様子をチェックしてみてください。映像で見ると「それほどでも…?」と思うかもしれませんが、実際に乗ると迫力が違います!

じゃあ、計算してみよう!物理の出番です

さて、ここからが理科の本領発揮です。スプラッシュマウンテンにはエンジンがついているわけではなく、最高点から重力の力だけで一気に落ちていきます。このような場合、エネルギー保存の法則を使って「落差から速度を予測する」ことができます。

■ 使用する物理公式

位置エネルギー(mgh)=運動エネルギー(½mv²)
→ よって
\[v = \sqrt{2gh}\]

ここで、
g = 9.8 m/s²(重力加速度)
h = 16 m(高さ)

計算すると、
\[v = \sqrt{2 \times 9.8 \times 16} \approx \sqrt{313.6} \approx 17.7 \, \text{m/s}\]

→ km/hに直すと
\[17.7 \times 3.6 \approx 63.7 \, \text{km/h}\]

✅ 結果:約64km/h!

なんと、公式データの「最高速度62km/h」とほぼ一致しているのです。
物理の計算、スゴい。

授業で使うならここがポイント!

• 実際に乗った経験のある生徒が多いので、導入が非常にスムーズ
• エネルギー保存の法則の応用例として最適
• 「感覚と理論の一致」を体験でき、学習意欲アップにつながる

同様に、富士急ハイランドにあるFUJIYAMAも同じ方法で求めることができます。

FUJIYAMAの公式HPを見ると、最大落差70m、最高速度130km/hと記載されています。

富士急ハイランドのFUJIYAMAの公式HPの情報

それでは力学的エネルギーの保存則をつかって計算をしてみよう。先程のhの部分に70を入れて計算すると、

v=√(2×9.8×70)

v=37m/s、時速にすると、133.2km/hとなり近い値となりますね。面白い!でも、なぜかスプラッシュマウンテンもFUJIYAMAも理論値より、実際の最高速度はわずかに小さな数字になっています。なぜでしょうか。

外力がはたらいているけれど…

このようにジェットコースターまたは振り子などでは「力学的エネルギー(運動+位置+弾性エネルギー)」は、ほぼほぼ保存します。でもちょっと考えてみてください。ジェットコースター(または振り子)には垂直効力(または張力)などの「外力」がはたらいています。外力がはたらくと力学的エネルギーは保存しないはずです。

これはいったいどういうことなのでしょうか?実は、垂直効力や張力が常に物体の運動方向と垂直にはたらいているからです。運動方向に対して垂直な力のする仕事は0なので、力学的エネルギーのみを考えてよいのです。

ジェットコースターの場合

振り子の場合

 垂直効力や張力は実際にその大きさを求めるのが大変ですが、このように仕事をしません。よってどのような経路をたどったとしても力学的エネルギーは保存をするのです(では垂直抗力や張力はこの運動にとってどのような影響を及ぼしているのでしょうか?)

これらのことから、アルプスの少女ハイジの乗っているブランコのスピードを求めたりすることができます。オープニングのはじめにでてくる大きなブランコのことです。

例えばですが、ブランコのヒモの長さが30m(ブランコの周期からだいたいの長さがわかります)、角度が60°とすると、最下点での速度はどうなるのでしょうか。ハイジはニコニコわらっていますが、結構な絶叫マシーンだということがわかります。

ぜひ自分で計算をしてみましょう。

まとめ

身近な遊園地のアトラクションが、実は教科書の知識で解き明かせる――そんな「日常と科学のつながり」を実感できるのが、この授業の一番の価値です。学びは教室の中だけじゃない。遊園地も、教材になるんです。

オンライン授業はこちらからどうぞ

#力学的エネルギーの保存 #力学的エネルギー #仕事 #ディズニーランド物理学

力学的エネルギーの保存(ジェットコースター)

力学的エネルギーの保存(ブランコ)

力学的エネルギーの保存を用いて、ジェットコースターの速度を計算してみましょう!

Formビックサンダーマウンテン問題

Formハイジブランコ問題

Slide力学的エネルギー保存

プリント(ジェットコースター)

プリント(ブランコ)

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