【物理の裏ワザ】問題文を読まずに試験を解く!?「単位」が最強の武器になる話(高校物理)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験! 🧪

もしも、問題文をまったく読まずに物理の問題が解けるとしたら、信じられますか?

「そんな魔法みたいな方法があるわけない!」と思いますよね。でも、実はあるんです。その魔法の鍵こそ、物理の世界の共通言語である「単位」。今回は、この「単位」を操って、難しそうな試験問題の答えをズバリと見抜く、ちょっとした裏ワザをご紹介します!

問題文を読まずに解く!?魔法の道具「単位」

先日、物理の「単位」について書いた記事に、嬉しいことにたくさんの方から反響をいただき、メールでご質問をいただくこともありました。ありがとうございます!

そこで今日は、「単位」が持つ驚くべきパワーについて、さらに深掘りしてみたいと思います。
なんと、これからお話しする方法を使えば、

問題文章をまったく読まないで!

センター試験の問題を解くことだって可能になるんです。なんだかワクワクしてきませんか?

実践!センター試験で「単位」を使ってみよう

単位の力を知っていると、試験で答えの選択肢を劇的に絞り込める問題があります。例えば、2012年のセンター試験物理Ⅰの問題を見てみましょう。

問題文は…あえて読みません!この問題が聞いているのは、ただ一つ。「選択肢の中から速さを選びなさい」ということです。これだけで、なんと6つある選択肢のうち、不正解の選択肢を3つも消すことができるんです。正答率が1/6から1/3に倍増します!その秘密を解き明かすのが「次元」という考え方です。

「単位」の正体、それは物理量のレシピ

「次元」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、要は「その物理量が、どんな材料(基本単位)からできているか」を示す、いわば料理のレシピのようなものです。今回の問題で問われている「速さ」のレシピを見てみましょう。速さは、ご存知の通り「距離」を「時間」で割って求めますよね。

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だから、単位も「距離の単位(m)」を「時間の単位(s)」で割った、m/s(メートル毎秒)になるわけです。これは世界共通のルール(SI単位系)で、科学者たちが同じ言葉で話すための大切な約束事なんですよ。さて、問題の選択肢に戻りましょう。答えは「速さ」なのですから、単位が必ず [m/s] になるはずです。

まず、選択肢の前半の1〜3を見てみます。

これらはすべて「定数 ×gh」という形ですね。それぞれの単位を調べてみましょう。
重力加速度 g の単位は [m/s2]、高さ h の単位は [m] なので、この2つを掛け合わせると…

[m/s2]×[m]=[m2/s2]

となります。これは速さの単位 [m/s] ではありませんね。ということは、①〜③は絶対に答えになりえないことがわかります。

次に、後半の選択肢4〜6を見てみましょう。

こちらはすべて「定数 ×gh」の形です。先ほど計算したように、gh の単位は [m2/s2] でした。その平方根(ルート)をとると…

[m2/s2]=[m/s]

見事に速さの単位になりました!つまり、正解は④〜⑥のいずれかだということが、単位をチェックするだけでわかってしまうのです。

この方法は「次元解析」とよばれ、単なる試験テクニックではありません。研究者や技術者が計算ミスを防ぐために日常的に使う、とても重要でパワフルな科学的手法です。かつてNASAの火星探査機が、単位の換算ミスが原因で失われたという有名な話もあるほど、単位は科学の世界で絶対的な役割を担っているのです。

単位に慣れるためには、普段から計算式に単位を書き込む癖をつけるのがおすすめです。単位は、物理の世界を旅するための信頼できるコンパスになってくれますよ!

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