脳が勝手に片付けたくなる?プラダン1枚で作る「最強の引き出し」
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「あれ? さっきまで使っていた赤ペンがない……」
気がつくと机の上は散らかり放題。ぼくは本来とても忘れっぽい性格で、放っておくとすぐに自分の文具を見失ったり、逆にいろんな人のペンを無意識に集めてしまったりします。
物理学には「エントロピー増大の法則」というものがあります。物事は放っておくと、自然と「乱雑」な状態へ向かうという宇宙の法則ですが、ぼくの机の上はまさに、この法則を証明する実験場のようでした。
しかし、探し物をしている時間は、限られた人生の時間の中で非常にもったいないですよね。 「どうしたら、意識せずに整理整頓ができるだろうか?」と悩んでいたとき、ふと、ある光景を思い出しました。
発明家の父が教えてくれた「定位置管理」
ぼくの父はDIYの天才で、なんでも手作りをしてしまう人でした。 そんな父の背中を見て育ったせいか、ぼくも踏み台や本棚の工作などが大好きになりました。父の趣味の部屋は、冒頭の写真のように、壁一面に様々な工具がぶら下げられていました。まるで工場のようです。

そして面白いのは、工具を取ると、その背面に「工具の影(シルエット)」が描かれていることです。 これにより、一目で「何がなくなっているのか」がわかります。

メジャーをとると、メジャーの影が描かれています。
これは、生産管理の現場では「定位置管理」や「形跡管理」と呼ばれる手法です。 この方式だと、紛失にすぐ気づけるのはもちろんですが、ものを持ち過ぎないという大きなメリットがあります。場所が決まっていれば、それ以上増やしようがないからです。
教師の仕事道具といえば、文具ですよね。 「そうだ、机の引き出しを父の壁面収納のようにしてしまえばいいんだ!」 そう思い立ち、もう3年間ほどこの「工具収納方式」で文具を整理整頓しています。
科学的?引き出し収納の作り方
ぼくの机の引き出しの中は、現在このようになっています。
土台として、下に「プラスチックダンボール(プラダン)」を敷きました。 プラダンを選んだのには理由があります。断面を見るとわかりますが、トラス構造(三角形の組み合わせ)やハニカム構造に似た中空構造になっており、「軽くて加工しやすいのに、丈夫である」という素晴らしい特性があるからです。カッターナイフ一本で簡単に加工できます。
このプラダンを引き出しのサイズに合わせてカットし、パズルのように道具をあてはめる穴をくり抜いていきます。 例えば、修正液を取り出したとしましょう。
すると、底には修正液の形をした穴が空いています。 使い終わった後、どうなると思いますか?
まるで磁石に吸い寄せられるように、元の場所に自然に戻ります。これが本当に大切です。意識することなく、ものが帰ってくるのです。場所がひとつしかないので、2つ以上の修正液を溜めこむこともなくなります。同様に、電卓であれば、
「ここは、、、電卓だな」
自分が使っている電卓とピッタリのサイズにカットしているので、基本的に他のものは入りません。
「アフォーダンス」を利用する
認知心理学に「アフォーダンス」という考え方があります。 「物は、その形によって人間に『どう扱うか』というメッセージを発している」という考え方です。
人間はおかしなもので、ピッタリ合う穴が開いていると、そこにその物体をはめ込みたくなるという本能的な性質があるように思います。 この収納法は、そんな人間の心理をうまく利用しているのです。
なんとなく、「あれ、これがないな」と思ったら、すぐに机の上を探して収納するようになりました。一目で「空席」がわかる感覚がポイントです。
ぼくの「1軍」文具たち
その結果、モノが増えたり、なくなったりすることが極端に減りました。 はじめに困ったのは、どの文具を「1軍」としてこの場所に迎えるか、という選抜会議です。ぼくの場合は、以下のような配置になりました。
左から:カッター、接着剤、消しゴム、判子、ホチキス替芯、ダーマトグラフィー(色鉛筆)、 小銭、クリップ(下にマグネットシートをしいて張り付くようにしました)、 万年筆、油性ペン、ペーパーナイフ、シャーペンの芯、USBメモリ、定規、 修正テープ、蛍光ペン、名刺、ホチキス、ボールペン(青、赤、黒)、 シャーペン、付箋(大、小)、スタンプ台、タイマー
写真には写っていませんが、
マスキングテープ(白)、電卓、各種スタンプ、シール、とりあえずボックス
です。
製作時間は1時間ほど。カッターとプラダンがあれば誰でも作ることができます。 もし同じように「探し物の時間」にお困りの方がいれば、ぜひ試してみてください。 たった1時間の工作で、この先の人生の数時間を節約できると考えれば、十分に投資する価値がある科学的な解決法だと思います。
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