高校生にもおすすめ!SFと物理が交差する『ファウンデーション』の魅力

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

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電車の行き帰りで、アイザック・アシモフの『ファウンデーション』を読んでいます。これは1984年にハヤカワから発行されたSF作品ですが、古びることなく、むしろ今の時代だからこそ読みたくなる名作です。

物語は、壮大な銀河帝国の崩壊と、それを事前に予見した歴史心理学者による“未来設計”の試みを描いています。その筋書きももちろん面白いのですが、理科教師として読んでいて特に面白く感じたのは、ところどころに散りばめられた物理的な描写の巧妙さです。たとえば、こんな場面。

主人公ガールという数学者が、銀河帝国の中心地に田舎からやってきて、新型エレベーターに初めて乗るシーンが冒頭のP21にあります。

エレベーターは重力的斥力で働く新型のものだった。ガールは他の人たちの先頭に立ってそれに乗りこんだ。オペレーターがスイッチを入れた。重力がゼロになると、一瞬、ガールは宙に浮いたように感じた。それからエレベーターに上向きの加速がつくにつれて、少しずつ体重が戻ってきた。それから減速が始まると足が床から離れた。思わず悲鳴をあげると、オペレーターが叫んだ。「足を横棒の下にはさんでください。この注意書きが読めないんですか?」

この一節、物理を学んでいる高校生にとってはかなり楽しい読みどころです。「重力的斥力」という言い方もユニークですが、それはさておき、加速度と慣性力の関係が非常にわかりやすく描かれています。

エレベーターが上向きに加速すると、慣性力の影響で自分の体が下向きに引っぱられるように感じ、体重が増えたように思う。逆に減速が始まると、慣性によって体はそのまま上へ行こうとするので、足が床から浮いてしまう。だからこそ「足を固定しておいてね!」という注意が必要になるわけですね。

こうした描写に「なるほど!」と思えるのは、やはり物理を学んでいるからこそ。SF作品って、架空の技術や未来の社会を描いているだけじゃなく、現実の物理法則を前提にして成り立っている場面が意外と多くて、それを読み解くのがすごく楽しいです。

特にアシモフの作品は、科学的素養のある読者には“隠れた科学トリビア”が見つかる宝箱のよう。物理が好きな人には、まさにぴったりの読書体験になります。

ちなみに私は今、『ファウンデーション対帝国』まで読み進め、ついに三部作を読了しました。強敵ミュールとの戦い、第二ファウンデーションの謎、そして何度も翻る展開…まるで歴史小説とミステリーが融合したようなSFです。

「未来の歴史」を描くこの作品は、高校生にもぜひ読んでほしい一冊です。もし私が高校生のときに出会っていたら、もっと早く理科にハマっていたかもしれません。

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