1本が10本分!?「パスカル電線」で作る、200回巻きの超カンタン強力電磁石

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

見た目はただの1本の電線。でも、もしその電線が、こっそり10本分のパワーを隠し持っていたとしたら…ワクワクしませんか?先日ご紹介した「パスカル電線」は、まさにそんな魔法のようなアイテム。1本のチューブの中に10本の導線が束ねられており、電流を流すと通常の10倍もの力を発揮する、まさに「名前負けしない」スゴい電線なのです。

(パスカル電線作りに使える電線は富士電線工業 VCTF 0.3sq×10芯などでAmazonで買うことができます。)

パスカル電線で磁場を「見る」!電流が生み出す見えない力の正体

10倍パワーを「凝縮」する実験装置

さて、この「10倍パワー」を持つパスカル電線(1m)を使って、さらに強力な装置を作ってみました。やったことはとてもシンプル。この電線をぐるぐる巻いて「コイル」にしただけです。

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電磁石やモーターの原理を思い出してください。コイルは、巻けば巻くほど、そして流す電流が強いほど、強力な磁石になりますよね。今回はこのパスカル電線を20回くらい巻いて固定しました。見た目はたったの20回巻き。しかし、パスカル電線の正体は「10本の導線」の束です。つまり、その実力は…?

そう、20回 × 10本 = 合計200回巻き!

たったこれだけで、200回も細い銅線を必死に巻く手間をかけずに、強力なコイルが完成してしまいました。

「電気」と「磁気」の魔法を呼び起こす

この「200回巻き相当コイル」で、何ができるでしょうか? 理科の主役である「電気」と「磁気」の面白い関係が、これ一つで丸わかりです。

まず、電池をつながずに、コイルに磁石を出し入れしてみてください。これだけで「電磁誘導」の現象、つまり「発電」が観察できます。コイルの中の「磁気の変化」が「電気を生み出す」のです。自転車のライトや、大きな発電所もこの原理を使っています。

次に、このコイルに単1の乾電池を1本つないでみましょう。すると今度は、コイルが強力な「電磁石」に変身します!

この状態でコンパスを近づけてみると…?

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ご覧ください! コンパスの針がビクッと強く反応します。たった1本の乾電池でも、200回巻きのパワーが強力な磁界を生み出している証拠ですね。

安全に実験できる「賢い」ショート回路?

ここで「あれ?」と気づいた方は、理科のセンスが鋭いです。「電池に電線だけをつなぐのは『ショート回路』じゃないの?危険では?」その通り、普通なら危険です。しかし、この装置で電流を測ってみると、約0.6A(アンペア)。これなら乾電池でも安全に扱えます。なぜ大電流が流れないのでしょう?

秘密は「電線の長さ」にあります。電線には「電気抵抗」という、電流の流れにくさがあります。今回使ったパスカル電線は1mですが、内部には10本分の導線が使われています。さらにそれを20回巻いているので、電気が通る道は非常に長くなります。道が長ければ長いほど、抵抗は大きくなり、流れる電流は小さく(安全に)なるのです。

この装置は、電線が持つ「抵抗」をうまく利用して、ショート回路なのに大電流が流れるのを防いでいたのですね。だから、長くつないでいても電線は熱くなりません。これなら、学校の授業で班の数だけ用意して、生徒たちに「本物の電磁石」を安心して触ってもらうことも簡単にできますね。ご家庭でも「10倍パワー」のコイルを作って、「電気と磁気の不思議」を体験してみてはいかがでしょうか!

パスカル電線作りに使える電線 富士電線工業 VCTF 0.3sq×10芯

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