道ばたの雑草「ヘラオオバコ」は双子葉類? 単子葉類? 教科書の”常識”がゆらぐ瞬間
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「ヘラオオバコの観察授業」— 双子葉類?単子葉類?分類の常識を超える植物を探る!
中学校の理科で「双子葉類」と「単子葉類」という言葉を習います。教科書では、「子葉が2枚で網目状の葉脈(網状脈)、根が主根と側根なら双子葉類」「子葉が1枚で平行な葉脈(平行脈)、根がひげ根なら単子葉類」と、スッキリ分類できるように学びます。でも、もし、その「常識」が、一歩外に出た瞬間にゆらぐとしたら…?
実際に野外で植物を観察すると、「あれ? これはどっちなの?」と首をかしげたくなる植物に出会うことがあります。そんな「分類の例外」とも言える存在こそ、生徒の知的好奇心に火をつける絶好の教材です。
その代表格が、今回ご紹介するヘラオオバコです。先日、フィールドワーク中に見つけたヘラオオバコをじっくり観察してみると、根っこは太い主根と側根からなる双子葉類の特徴を持っているのに、葉っぱの筋(葉脈)はスーッと伸びた単子葉類の特徴(平行脈)を持っていました。なぜ、こんなチグハグな特徴を併せ持っているのでしょうか?
このような「分類のルールブックからちょっとはみ出した植物」は、生徒たちに「なぜ?」と考えさせる最高のきっかけになります。今回は、ヘラオオバコを教材にした観察授業を紹介します。「暗記」で終わらせない、生徒が夢中になる授業準備のポイントや実践方法をまとめましたので、ぜひ活用してください!
授業準備と進め方
1. 事前準備
✅ 必要なもの
• ヘラオオバコの採取(事前に野外で準備 or 校庭で生徒と一緒に採取)

• ルーペ(葉脈や花の細部を観察するため)
• スケッチ用紙・筆記用具(観察記録を取るため)
• 根の構造を確認するための水(採取後に土を落とすバケツやトレイ)
ヘラオオバコが見つかる場所
• 校庭や道端、河川敷などの空き地 → ヘラオオバコは人や動物によく踏まれる場所でもたくましく生育します。その強さの秘密も、根や葉の形に隠されています。
• 春から秋にかけて開花(特に5~6月が観察に適している)

2. 授業の流れ
① 双子葉類と単子葉類の分類を復習
まずは、生徒に「植物を分類するための特徴」を整理させます。これは知識の確認です。
✅ 双子葉類の特徴
• 子葉が2枚 • 葉脈が網状脈 • 根が主根と側根
✅ 単子葉類の特徴
• 子葉が1枚 • 葉脈が平行脈 • 根がひげ根
ここで、「植物の分類は、このルールで全てきれいに分けられる」と思っている生徒も多いはず。そこで、「本当にそうかな? これから観察する植物が、このルールの“例外”かもしれないよ」と、探究へのワクワク感を高めます。
② ヘラオオバコの観察
いよいよ主役の登場です。実物のヘラオオバコを生徒に配布し、ルーペも使ってじっくり観察させます。以下の2点に注目させましょう。
根の構造 → 双子葉類の特徴(主根と側根)

「お、太い根があるぞ! これは双子葉類っぽい!」
葉脈の形 → 単子葉類の特徴(平行脈)

「あれ? でも葉っぱの筋はまっすぐだ。これは単子葉類だ…」双子葉類の特徴がありつつも、平行脈をもっているということです。ここで生徒たちは混乱します。「根は双子葉類なのに、葉は単子葉類? 先生、これどっちですか?」と。この「モヤモヤ」こそが、思考を深めるチャンスです。「なぜ、こんなことになっていると思う?」と問いかけ、生徒たちに自由に仮説を考えさせるのが最大のポイントです。
③ ヘラオオバコの分類と進化の視点
生徒たちの考えが出揃ったところで、種明かしをします。結論から言うと、ヘラオオバコは「双子葉類」に分類されます。しかし、なぜ単子葉類のような平行脈を持っているのでしょうか?ここには、壮大な「進化のストーリー」が隠されているのかもしれません。
• 分類は「絶対」ではない → このように、生物の分類は単純な線引きで分けられるものではなく、進化の過程で「中間的な特徴」や「後から獲得した特徴」を持つものがたくさん存在します。このように、「例外」の理由を「進化」という視点で解き明かすことで、理科の授業を「暗記」ではなく「探究」へと発展させることができます。
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・運営者・桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!


