DNAを100円玉にたとえたら、生命の奇跡(体細胞分裂と減数分裂)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

あなたがこの世に生まれてくる確率は、いったいどれくらいだと思いますか。実は計算してみると、天文学的な数字になることがわかります。今回は、そんな「奇跡の確率」の正体を、身近な100円玉のたとえ話でひも解いていきます。

細胞分裂を「お金」で考えてみる

ある先生から細胞分裂の例え話を教えてもらいました。お金をつかったたとえですがわかりやすいですね。

体の中では日々たくさんの細胞分裂が起こっていますが、実は分裂には大きく分けて2種類あります。体を作るための「体細胞分裂」と、子どもを作るための「減数分裂」です。この2つの違いを、DNAを100円玉に見立てて比べてみましょう。

こちらの図を見ながらついてきてください。なおこちらの図は、JT生命誌研究館 減数分裂 多様さを生み出す厳格なしくみ 渡邊嘉典 東京大学 分子細胞生物学研究所 から引用させていただきました。

引用;JT生命誌研究館 減数分裂 多様さを生み出す厳格なしくみ 渡邊嘉典 東京大学 分子細胞生物学研究所

https://www.brh.co.jp/publication/journal/060/research_21

普通の体細胞分裂の場合

DNA全部を100円とすると、100円を持っている、それが200円になる(DNAの複製)。そして、100円ずつに分ける(100円×2)。

→ 100円 が 100円×2(200円) になる

これは、皮膚や筋肉が新しく生まれ変わるときなどに起こる分裂です。まず持っているDNA(100円分)をまるごとコピーして200円にし、それを100円ずつ2つの細胞に配ります。つまり、できあがった細胞はどちらも元とまったく同じ100円分の情報を持っているわけです。これなら、体のどの細胞も同じ設計図を持ち続けられますね。

減数分裂の場合

一方、卵子や精子を作るときに起こるのが減数分裂です。

DNA全部を100円とすると、100円を持っている、それが200円になる(DNAの複製)。それが100円と100円に分かれる(第一分裂)。(なお実際はここで組み替えが起こりますのでさらに複雑です)

さらに2つに分かれて50円ずつになる(第二分裂)。

→ 100円 が 50円×2 ×2セット(200円) になる。

同じように100円を200円にコピーするところまでは同じですが、そのあとにもう一段階、分裂が入ります。その結果、できあがる細胞はそれぞれ半分の50円分の情報しか持っていません。

なぜ半分にする必要があるのでしょうか。それは、卵子(50円)と精子(50円)が受精で合体したときに、ちょうど100円、つまり元通りの情報量に戻るようにするためです。もし半分にせず100円のまま受精してしまったら、子どもの世代では200円、孫の世代では400円と、DNAの量がどんどん倍々に増えてしまいます。減数分裂は、世代を重ねてもDNAの量を一定に保つための、とても合理的な仕組みなのです。

50円の中身は毎回ちがう

ここで面白いのが、同じ「50円」でも、その中身(組み合わせ)は毎回まったく同じにはならないという点です。

あなたは70兆分の1の奇跡

人間の細胞には46本の染色体があり、これは23本ずつのペアでできています。

卵子や精子を作るとき、それぞれのペアからどちらか一方を選んで50円分(23本)を作るのですが、この「選び方」だけでもすでに約840万通りもの組み合わせが生まれます(2の23乗=8388608通り)。

さらに両親それぞれでこの組み合わせが起こるため、掛け合わせるとおよそ70兆通りにまで膨れ上がります(8388608^2)。しかも実際には「組み換え」と呼ばれる、染色体の一部が入れ替わる現象まで起こるため、本当の組み合わせの数はこれよりもさらに桁違いに大きくなるのです。

つまり、もしご両親がもう一度同じように子どもを授かったとしても、生まれてくる子は今のあなたとまったく同じ組み合わせのDNAを持つ確率は、ほぼゼロに等しいということになります。兄弟姉妹の顔や性格がそれぞれ違うのは、まさにこの減数分裂の「組み合わせのくじ引き」の結果なのですね。

たった100円が半分の50円になるというシンプルな仕組みの裏側に、これほど壮大な確率のドラマが隠されているとは、驚きですよね。次に鏡を見るときは、その顔が70兆分の1、いやそれ以上の確率を勝ち抜いてきた「奇跡の組み合わせ」だということを、少し思い出してみてください。

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