水族館で「首なし生物」を発見!?その正体と、水面に広がる物理の不思議
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
突然ですが、クイズです。こちらの動画を見てください。黒い物体が動いているのですが、これは一体何でしょう。
え!え!!なんだこりゃ

首のない動物が動いています。
わかりましたか?実はこれ、ペンギンなんです!東京スカイツリーのそばにある「すみだ水族館」のペンギン水槽を、真下から見上げるように撮影した映像です。水の中からペンギンを見ているような視点になっているんですね。この角度から見ると、なぜか首が見えなくなってしまうのが不思議です。
すみだ水族館で物理学
先日、すみだ水族館に行ってきました。ここの目玉は、屋内に広がる大きなペンギン水槽です。2階から水槽を覗き込んだり、

2階からだと水槽の底の青がよく見えます
1階に降りると、水槽を下から見上げてペンギンを”水中目線”で観察できます。そのときの映像が冒頭の動画でした。
ところで、水槽を下から見上げたとき、こんな不思議な景色が見えます。

水槽越しに空を見上げると、外の世界が見えている部分と、青く染まって外が見えない部分がくっきり分かれているんです。まるで水の中に「窓」が開いているかのようです。箱根園の水族館でも同じ現象が見られました。次の動画もあわせてどうぞ。
青く見えている部分は、実は水槽の底のコンクリートに塗られた青色です。
では、なぜ外の世界が「丸く切り抜かれたように」見えるのでしょうか?この境界線の正体は何なのでしょう?
その理由は「全反射」にあった!
この現象には、光の屈折と全反射が深く関わっています。少し目線を上げて水槽を斜めに見上げると、天井の光が見えます。光には「逆進性」があり、目に入る光の道筋を逆にたどることで、どこから来た光かがわかります。
そこから少しずつ目線を下げていくと、あるところで「外の世界が見える」から「水底の青しか見えない」へと急に切り替わる瞬間があります。この切り替わりの角度を臨界角といいます。高校物理で学ぶスネルの法則(屈折の法則)を使って計算してみましょう。空気の屈折率を約1、水の屈折率を約1.33とすると、臨界角はおよそ48°になります。(高校生はぜひ関数電卓でarcsinを使って確かめてみてください!)
つまり、水中から48°より浅い角度(水面に近い方向)を見ると外の景色が見え、それより深い角度(真上に近い方向)を見ると全反射が起きて外は見えず、水底の色だけが見えるのです。なお、実際の水族館では水槽のガラスと空気の間でも屈折が起きるため、厳密には48°より少し大きくなります。

この境界線は360°どの方向にも同じ角度で現れるため、丸い「窓」のような形になって見えるんです。

ペンギンも「窓」から私たちを見ている?
もう一度、2階から見下ろした写真を見てください。

上から見ると水底の青が全面に見えますよね。ところが水の中からは、丸い窓の外しか外の世界が見えません。実はペンギンたちも、水中の「窓」を通してこちらをのぞいているかもしれないんです。なんだか、ちょっと目が合いそうな気がしてきませんか?水族館に行ったとき、ぜひ下から水槽を見上げてみてください。そこには、教科書の中の「光の屈折」が、本物の景色として広がっています。
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