なぜ「緑色」なのに「茶色」と呼ぶの?教室と茶畑で挑む、お茶の科学大捜査線!
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「お茶」と聞いて、あなたは何色を思い浮かべますか?おそらく多くの人が鮮やかな「緑色」を想像するはずです。でも、ふと考えてみてください。なぜ「茶色」という言葉は、あの赤茶けた色を指すのでしょうか。実は、私たちが毎日何気なく飲んでいるお茶の中には、歴史・地理・そして驚きの科学がぎっしりと詰まっているのです。
8月30日、31日の2日間、夏休みの締めくくりとして、複数の教科が手を取り合った「教科融合型」の特別授業を行いました。テーマはずばり「お茶」。今回は、五感をフルに使って学んだこの熱い2日間の様子をレポートします。
1日目:教室が研究所に!「お茶」を多角的に解剖する
1日目は学校にこもり、社会・国語・理科の3つの視点からお茶にアプローチしました。
まず社会科の授業では、お茶の歴史と、おいしい茶葉が育つための気候条件について学びました。なぜ静岡や宇治でお茶作りが盛んなのか、そこには地形や霧が深く関係していることが判明しました。
続いて国語科の授業。ここで冒頭の謎が解けました!江戸時代以前、お茶といえば今のほうじ茶のような色が一般的でした。だからこそ文字通り「茶色」と呼ばれていたのですね。今の緑茶が普及したのは比較的新しい文化だという事実に、生徒たちからも驚きの声が上がりました。
そして、お待ちかねの理科の実験です! 「ペーパークロマトグラフィー」という手法を使い、お茶に含まれる色素を分析しました。これは、物質が紙に染み込んで移動する速度の違いを利用して成分を分ける魔法のような技術です。また、ペットボトルのお茶に含まれるビタミンCの「抗酸化作用」を確かめる実験も行いました。お茶が私たちの体を守ってくれる仕組みを、化学の力で実感することができました。
2日目:東京の茶畑へ!現場に眠る「知恵の結晶」
2日目は教室を飛び出し、東大和市にある「木下園」さんを訪ねました。東京にもこれほど立派な茶園(狭山茶)があることに、みんな興味津々です。
木下園さんは、栽培から加工、販売まで一貫して手がけています。工場に入ると、ふわりと香ばしいお茶の香りに包まれました。

茶畑の扇風機、その正体は?
茶畑を見上げると、高いポールに大きな扇風機がついているのを見たことはありませんか?実はこれ、理科の知識が詰まった装置なんです。 夜間に冷え込んだ空気が地表にたまって霜が降りないよう、上空の少し暖かい空気をかき混ぜて送り込んでいるのです。「放射冷却」から新芽を守るための現場の知恵に、生徒たちも納得の表情。気温や湿度のわずかな変化が味を左右するお茶作りの奥深さを肌で感じました。
旨味と渋味の「温度差」を科学する
場所を移して、次は「おいしいお茶の入れ方」講習会です。講師は新潟県長岡市からお呼びしたカクタ田中清助商店の田中洋介さんです。
お茶の味をコントロールするのは、実は「温度」です。 旨味成分(アミノ酸)は低温でもじわじわと溶け出しますが、渋味成分(カテキン)は高温になると一気に溶け出すという性質があります。

生徒たちは実際に急須を使い、お湯の温度を変えて味の変化を体験しました。「全然違う!」「ぬるいお湯だと出汁みたいに甘い!」と、化学反応を舌で確かめる貴重な時間となりました。最後には、日本茶インストラクターの安藤茂美さんからも狭山茶の誇りについてお話を伺いました。
学びは、教科の枠を超えた先にある
今回の授業を通して、1つの「お茶」というテーマでも、見る角度を変えれば全く違う世界が見えてくることを学びました。これこそが複眼的に物事を見るということの面白さです。
今回、私は裏方として講師の手配などに回りました。講師の田中さんは、実は私の大学院時代の先輩です。IT企業を経て、実家のお茶屋を継ぐというキャリアを歩んでいらっしゃいます。
田中さんの活躍はテレビ番組でも紹介されています。
生徒たちにとって、お茶の知識だけでなく、田中さんのような情熱的な大人の生き方に触れたことも、大きな「キャリア教育」になったはずです。
様々な専門家と連携して行うこの特別授業。実は、毎年私たち教師が一番「勉強になった!」と楽しんでいるかもしれません(笑)。さて、来年の夏はどんな科学の冒険に出かけましょうか?
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